山行・水行・書筺 (小野寺秀也)

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小野寺秀也

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2013.04.25
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テーマ: 山歩き(382)
カテゴリ: 山歩き

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        権現森から眺める蕃山の山並み。 (2012/9/7 10:36)

 山歩きにはとてもいい季節になった。なんとか今日になって今年初めての山入りである。じつは、昨日は仙台市立図書館へ行って本を借り、今日はのんびりと読書の予定、山歩きは金曜のはずだった。朝の散歩の途中、スマホで天気予報を確認したら、天気の崩れが早まって金曜の昼は雨という予報に変わっていた。予定変更である。慌てて自宅に引き返し、簡単に朝食をかき込み、助手席に連れのイオを乗せて出発した。

  シーズンはじめは、体力確認が第1である。低い山、短い歩きから始めなければならない。年々、初めて歩く山の標高は低くなっていく。そうした準備のため、昨年は意識的に里山を歩いて、いくつかの候補を探してもいたのである。
  加えて、相棒のイオは12才となって立派な老犬である。どれほど歩けるのか、こちらも慎重に調べて無理をさせないようにしなければならない。老老の連れの山歩きはなかなかに手続きが難しい。
  さて、今年の初めての山は、近くの蕃山である。自宅から青葉山トンネルをくぐれば、すぐそこに蕃山がある。ずいぶん昔に1度歩いたことがあるが、ほとんど記憶がない。たぶん、シュンラン探しで歩いて何の収穫もなかったのだと思う。それに、以前は里山をわざわざ山歩きの対象と考えることはほとんどなかったということもある。

  広瀬通からまっすぐ西へ、2階構造の仲の瀬橋の下の橋から青葉山トンネルをくぐって高速入口を過ぎ、すぐに「生出、川崎」方向に折れれば大梅寺である。大梅寺参道の途中から蕃山に入るコースである。

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        Photo A  「蕃山へ登る口」。 (2013/4/25 7:49)

 古い石積みの階段を上がっていくと、「山道を登りながら、こう考えた」と始まる漱石の「草枕」の有名な冒頭の1節を刻んだ石碑が現われる。続いて「山路来て何やらゆかしすみれ草 芭蕉」の石碑である。あまりにもふさわしすぎて、気恥ずかしいくらいである。
  右手に「蕃山ハイキングコース入口 仙台市」の石標があらわれ、大梅寺の参道と分かれる(登山コースではなくてハイキングコースというのが今日の私たちには大切である)。杉林を少し登ると小さな十字路になっていて、右に大梅寺、左に墓地への道と交わっている。何となく、ここまでは寺域で、ここから本当のハイキングコースが始まるという雰囲気である。「蕃山へ登る口あり冬の寺」というぴったりの阿倍みどり女の句碑が建っている。

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     Photo B (左) 急な階段道。 (2013/4/25 7:49)
     Photo C (右) 明るい雑木林。 (2013/4/25 8:06)

  道の真ん中に太いロープの手摺のある立派な階段道(Photo B )を登るのだが、イオが右に左に行くたびにザックに繋いであるリードを外さなければならないという面倒な道でもある。
  急な階段を登りきれば、あとはゆったりした起伏の尾根道(Photo C )である。地図で見ても東西に長い山稜の東端から西端へ歩くようなコースになっている。

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               左:マキノスミレ。右:ナガハシスミレ。

  山道を歩きながら春の花を探すのだが、思っていたよりはるかに少ない。ポツポツと小さなスミレがある。最初に見つけたのはマキノスミレ、つぎにナガハシスミレが現われた。じつのところ、スミレの種類はなかなか同定しにくい。写真に撮って、家に帰って図鑑を見て、それでも決められないこともある。まぁ、たぶん「マキノスミレ」と「ナガハシスミレ」だろう、という程度である。

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             ハイキングコースの石仏(地蔵菩薩)。

  ハイキングコースには、所々に地蔵菩薩が安置されている。この道は蕃山頂上にある大梅寺の奥の院、開山堂への参道でもあるということだろう。なかには頭部のかけたものもあったが、5体の石仏を見かけた。これですべてかどうか分からないが、Mapにその位置を示してある。

冬枯れのこずえに うっすらと緑が走り
樹木がそのすべてを
少しのためらいもなく
春にゆだねようとしているのを見ると
そのすばらしさに胸をうたれる
そして気付く。ぼくらの季節が
あまりにも樹木の季節と違うことに。
        吉野弘「名付けようのない季節」部分 [1]

  葉がまだ萌えだしていない雑木林を透かしてみると、遠くに青葉山丘陵が見え、その尾根筋に宮城教育大学や東北大学の建物群が霞んでいる。このあたりになると、足下にカタクリの花が点在しはじめる。この時期の低山歩きでは、カタクリの群生を見るのは珍しくないので、なんとなくこの山の花の少なさが気になる。

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     Photo D (左) 岩の道。 (2013/4/25 8:26)
     Photo E (右) 電波反射板。 (2013/4/25 8:34)

  道が少し急になると、岩の道である。切れ目のない大岩を剔って進む道である(Photo D )。岩道を過ぎて5分ほどのところに地蔵尊があって、その背後に、白い長方形の板状の建造物が見える。「建設省東北地方建設局」設置の「反射板」という説明があった(Photo E )。電波の反射板である。電波を反射させて通信用に使うというのは、電波の中継基地などと比べればなんとなく原始的な手法にも思えるが、途中で中継増幅されずに小さな反射板から反射された(つまり、極端に減衰した)電波を受信するのはそれなりに難しいことだろう、などと余計なことを考えながら、折立団地へ下る分岐を過ぎると南が開けた狭い展望所が現われる。

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      Photo F  展望所から南、太白山が見える。(2013/4/25 8:44)

  展望所からは太白山とその山に広がる団地(人来田、ひより台、山田自由が丘など)が見える。太白山はどこから見ても三角形でよく目立つ印象的な山である。太白山以外の遠くの景色は春霞でぼんやりとしている。「すみれ草」の句も悪くはないが、こんな日は次のような句が似合っている。

春なれや名もなき山の薄霞 (うすがすみ)    松尾芭蕉 [2]

(以下、続く) 






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Last updated  2013.05.01 12:29:10
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