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おはなしのトンネル
04/秋冬≪2≫
2004/秋 ・冬 絵本&おはなし覚え書き≪2≫
『
ピーボディ先生のりんご
』
マドンナ作 ローレン・ロング絵 集英社
何気なく言った一言が取り返しのつかないことに・・・。
言葉の持つ力ゆえ、ふとした瞬間、人をきづつけてしまうかもしれない。
ピーボディー先生は、地元の小学校の先生。野球が大好き。
毎週土曜日、リトルリーグの世話をしています。
そんな先生はいつも帰りにフルーツマーケットでりんごを1つ選んで帰るのです。
ある時トミーは、先生がりんごを1つ手に取ると、ぽんとかばんにの中にほうりこんで
そのまま行ってしまうのを見かけます。
「おかしいな。りんごのお金を誰にも払わなかったぞ」
「先生は泥棒だ」と言う、うわさは、すぐ町中に広がりました。
次の土曜日先生は、ひとりぽつんと野球場に立っていました。
でも真実は、違ったのです。
真実を知ったトミーは、先生のところへ・・。
先生の話した言葉が胸に響きます。
「大切なのは、どう見えたかじゃなく、本当はどうか、なんだよ」
「この次からは、そんなにあわてて人を判断してはいけないよ。
それと、よーく覚えておくんだ。
自分の口から出る言葉に宿る、ものすごく大きな力のことをね」と・・・。
色鮮やかなとてもキレイな絵です。見返しのところも、素敵です。
一度口にした言葉を、元に戻す事はできない。
自分の一言で相手を傷つけたり、予想以上に大きく膨らんでしまう。
何気なくしゃべっている言葉をあらためて、考えさせてくれる絵本です。
よみきかせには、高学年ぐらいかな?
『
ゆめのおはなし
』
クリス・ヴァン・オールズバーグ 徳間書店
眠りについたはずのウォルターがベットごと未来の世界へとんだ。
ハイテクのカッコイイ未来を想像していたウォルター。
でもそこは、何でも便利に出来る快適な世界じゃなかった。
文のない絵だけのページが何回も繰り返し出てきて、未来の世界を映し出す。
悲しい世界ばかりだ。こんな未来には、住みたくないよ。
今、生きている私たちへの警告。
良くも悪くも、未来を変えるのは、私たち自身なんだ。(約15分)
この本は、「反応がわかれるだろうな」と思ったけれど、あえて読んでみました。
テーマは環境問題。
朝からちょっと重かったかな?
少し長めなので、早口になってしまって反省。
ボソボソしゃべる子はいなかったけど、真剣に聞いてくれる子とボーっとしている子がいたみたい。
(文字が多い本は、一生懸命読んじゃって、子どもたちの反応を見る余裕がないです)
結局全部は読めなかったので、
「続きが知りたい子は、呼んでみてね」と言って本を置いてきました。
前で一生懸命聞いてた子が、本を手にとって見ていたので「読んでね」といったら、
「読むのはちょっと・・・」って答えが返ってきて、
「そうか・・・。一生懸命聞いていたからと言って、自分で読むとは限らないのか・・・。」
「じゃぁ、次回は続きを読んであげたほうがいいのかな?」
「でも、聞いてんだかよくわかんない子が、自分では読むって事もアリ?」
よく分からないけれど、一人でも興味を持って読んでくれる子がいたらうれしいな。
そんなことを思いながら、この日は教室を後にしました。
後で「読んだよ」って言ってくれた子がいてうれしかったです。
『b>あらまっ!』
文・ケイト・ラム/絵・エイドリアン・ジョンソン/訳・石津ちひろ (小学館)
パドリックという男の子がおばあちゃんちへお泊りに行きます。
「さっさとねなさい」とおばあちゃんは言うんだけど・・・。
パドリックとおばあちゃんの攻防が、楽しい。
一言多いおばあちゃん、でも「あらまっ!と言って何でもやってのけちゃう
スーパーおばあちゃんなのです。
パドリックを寝かすために大奮闘・・・。
せかっく、頑張ったのに・・・
最後にオチまでついている、楽しい絵本です。
『
六にんの男たち―なぜ戦争をするのか?
』
マッキー作 中村こうぞう訳 (偕成社)
なぜ人間は、戦争をするのか・・・?
六人の男たちは、最初は戦争なんてするつもりはなかったのに・・・。
ただ、平和に働いて暮らすことの出来る土地を求めていたはずなのに・・。
シンプルな線画。
色はありません。白地に黒の線で描かれた世界。
よく肥えた土地を見つけた六人は、せっせと働いた。
畑を耕し、家を建て、次第に金持ちになっていった。
富を持った時から、何かが少しづつ変わり始めていく・・・。
平和を求めていたはずなのに、戦いの道を進む男たち。
一体なぜなんだろう・・・?
『ネギをうえた人朝鮮民話選』
金素雲(キムソウン)編 (岩波書店)
古い昔から口づたえで伝わった朝鮮民話が三十三集められています。
自然のはなし、動物のはなし、人々のはなしなど・・・・。
中でも表題作の「ネギをうえた人」は、印象に残るお話です。
* * * * * * * * * *
人間がまだネギを食べなかった頃、よく人間が人間を食べていた。
(いきなり、スゴイでしょ・・?)
それは、お互い牛に見えるから。
うっかりすると、自分の親や兄弟を牛と間違えて食べてしまう事がある。
本当の牛と人間の見境がないから、とても物騒。
「何て浅ましい。こんな所に暮らすのはもうイヤだ」
と、その人は旅に出ました。
旅先で、ネギを食べるようになってから、
人間が人間を食べる間違いがなくなったという話を聞いたその人は
ネギの作り方や食べ方を教えてもらいます。
その人は、早速自分の故郷へ帰り、ネギの種をまきました。
安心したその人は、なつかしい知り合いや友達を訪ねたが、
牛に見られて食べられてしまう。
それから、しばらくたってから、畑に青い草が生えてきた。
ちょっとばかり食べてみたら、良いにおいがした。
ネギだとは誰の知らないが、食べた人だけは、人間がちゃんと人間に見えた。
それから、みんなネギを食べ、牛と人間を間違える事はなくなった。
ネギをうえた人は、誰からも礼も言われず、食べられてしまったけど、
その人の真心は、いつまでも生きていて、大勢の人を幸せにしました。
* * * * * * * * * *
なんか不思議なおはなし。
なんでネギだったのかなぁ・・・なんて思ったりしてね。
そのほかにも「山と川」「地震のわけ」「三人のバカよめ」「おくやみ」などなど・・・。
どのお話も、短いので気軽に読めますよ。
日本の昔話とは、やっぱりちょっと違ったにおいがします。
『
あかてぬぐいのおくさんとと7にんのなかま
』
神谷 丹路 / 李 〓庚 (福音館書店)
とってもかわいいお話。
お針の得意なあかてぬぐいのおくさんが、うたた寝をしている時、お針の道具たちが「私が一番」と
自慢比べを始めます。
道具たちの名前がまたいい。
「ものさし婦人」に「はさみお嬢さん」「はり娘」に「いと姉さん」
「ゆびぬき婆ちゃん」に「のしごて乙女」そして「ひのしねえや」
それぞれの特徴がでていて、とってもかわいいのです。
でも結局目の覚めた赤てぬぐいのおくさんに、「えらいのは、この私だよ。
私のうでがいいからお前たちも自分の役目を果たせるんじゃないか。」と怒られて、
みんなしょんぼり・・・。
でも、「ひとりひとりが大切、誰かひとりでも欠けたら、お針は出来ないのに」と
気がついたおくさんが、みんなに謝ります。
そしてみんないっそう仲良くなって、お針に励むようになると言うお話です。
子どもたちの様子ですが、結構おもしろおかしそうに聞いてくれました。
韓国の絵本なんで、家の中の家具とか、色彩とかがアジアンなんです。
道具さんたちは、民族衣装着てるし・・・。
世界のいろんな絵を見るのも楽しいです。
お国の暮らしぶりを少し覗けますしね。
道具たちが自慢比べしている時、何ページかに渡って、
奥さんが寝ている顔が出てくるんだけど、
少しづつ変化しているのに気づいた子もいました。
あまりアジアの本は、知らなかったんだけど、
コレを機会に、敬遠せず読んでみようかな。
子どもたちにも、いろんな国の絵本が紹介できたらいいなぁと思いました。
『
ぶたくんと100ぴきのおおかみ
』
宮西達也/作・絵 (すずき出版)
森を歩いている一匹のぶたくんを見つけた100匹のおおかみたち。
さぁ・・いったいどうなるか。
とにかくすごい。登場動物は、いったい何匹だぁー。
あっちへ、こっちへの大移動。
表情が、楽しい・・・。
「ホントに100ぴき?」と指差して数えてしまった私です。
『
きょうはなんてうんがいいんだろう
』
こちらも、やっぱり宮西達也さんの絵本。
こっちの方は、森をあるいていたおおかみが、お昼ね中のぶたを見つけます。
それも、数えきれない数のぶたたちです。
さぁ、おおかみくん、どうするの・・・?
2冊とも、おおかみのとぼけた人柄(?)に、
くすっとさせられてしまいます。
ほのぼの、楽しい絵本です。
『
ヨセフのだいじなコート
』
シムズ・タバック (フレーベル館)
ヨセフは大事なコートを持っていました。
でも、着ていくうちにコートはだんだん古くなり、つぎはぎだらけ・・・。
でも、それで捨ててしまうなんて、とんでもない。
このコートを今度はジャケットに作り変えます。
でも、ジャケットもだんだん擦り切れ、つぎはぎだらけに・・・。
でもまだまだ・・・。
大事なコートですから。
次は、チョッキに・・・。
次は、マフラーに・・・。
ヨセフの大事なコートが次々変身していきます。
最後は、何になると思いますか?
それは、読んでのお楽しみ。
≪おまけ≫
シムズ・タバックさんの絵本をもう一冊ご紹介。
奇想天外なお話に、去年読んだクラスは、結構盛り上がりました。
『
ハエをのみこんだおばあさん
』
最初はハエなんだけど、次々いろんなものを飲み込んじゃうおばあさん。
え~っ、そんなものまで・・・。
大丈夫? おばあさん。
楽しい絵本です。
最後に、ためになる教訓つき!!
『
いのちのまつり―「ヌチヌグスージ」
』
作:草場一嘉 絵:平安座資尚 サンマーク出版
あまり、衝動買いというものはしないのですが、
タイトルと、とぼけた感じのかわいい表紙の絵にひかれてしまった。
子どもに「ど~してお墓参りしなくちゃぁ、いけないの?」ときかれる事があります。
なんか上手に答えられてないないなぁと思ってました。
この絵本には、どうして今、自分がこうして生きているのか、
ご先祖様ってなんなのかが、小さな子でも分かるようにかかれています。
途中のページに、ちょっとした仕掛けがあってすごいの!
なんか、それ見て、ジーンとしちゃいました。
わたしのいのちってすごいんだなぁって・・・。
みんなのいのちもすごいんだなぁ・・・。
子どもたちにも、生きているすごさを感じて欲しいな。
それから、この絵本と同じような意味の言葉が、
相田みつをさんの本にあったので、あわせて紹介しました。
あかいひかり みどりのひかり
あまつぶぽとり すぷらっしゅ
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