本年は文豪・夏目漱石の生誕150周年。彼の作品を愛読した一人に、中国の文豪・魯迅がいる。
魯迅は青年時代、日本へ留学。その間、次々と漱石の著作を買いそろえた。新作の小説が新聞に連載されると、わざわざ新聞を購読。含蓄に富んだ漱石の文章は、青年・魯迅の心に、少なからず影響を与えたことだろう。
後に魯迅は、学んでいた医学を捨て、文学の道を志す。「日本に留学していたころ、私たちはある漠然とした希望を持っていた――文学によって人間性を変革し、社会を改革できると思ったのである」(蘆田肇・藤井省三・小谷一郎訳「域外小説集・序」、『魯迅全集』12巻所収、学習研究社)――この言葉の通り、魯迅は人民の精神を変革するための作品を書き続けた。舌鋒鋭く社会悪をえぐり出し、青年に希望の光を送った。
古典や名著といわれる書物は、限りない英知の宝庫だ。そして、その宝を見いだすのは、今を生きる読み手の「境涯」にほかならない。書き手と読み手の時空を超えた「共鳴」であり「共同作業」である。
本をどこまで深く読めるかは、読み手が周囲の世界や自身の人生にどこまで深く向き合っているかで決まるともいえる。絶えざる挑戦と向上の日々でこそ、英知の言葉は生き生きと胸に響いてくる。
~~~~~~~~~聖教新聞名字の言より~~~~~~~~~
【今日は何の日】