2002/04/04
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魔法の書/エンリケ・アンデルソン=インベル/鼓直・西川喬 訳
 ボルヘスがカフカについて語っている言葉にこういうものがある。

「わたしの間違いでなければ、わたしがとりあげた異質のテクストは、どれもカフカの作品に似ている。わたしの間違いでなければ、テクストどうしは必ずしも似ていないが、これは重要な事実である。程度の違いこそあれ、カフカの特徴はこれらすべての著作に歴然と現れているが、カフカが作品を書いていなかったら、われわれはその事実に気づかないだろう。すなわち、この事実は存在しないことになる」

 そのボルヘスと同国人、同時代人のインベルの短編集。ボルヘスの言葉を思い出すまでもなく、「魔法の書」はボルヘス「砂の本」に、「事例」のいくつかは稲垣足穂「一千一秒物語」に、「身軽なペドロ」は野坂昭如「凧になったお母さん」に、と思ったがこれは最後の 空に落ちていく/飛んでいく の違いがはっきりあるのでパス、「道」は坂口安吾「風博士」に、「ニューヨークの黄昏」は安部公房「夢の逃亡」に、似ているように見える。ボルヘスの場合はインベルを読んでいるのは間違いないので「砂の本」は彼なりの「魔法の書」であるからこれを別とすれば、他のは、「身軽なペドロ」をのぞけば94年に初翻訳(多分)されたこれらの話を、他の日本人作者が読んでいる可能性は限りなく0に近く、それは単に、インベル自身が語る「芸術にとって重要なものは主題ではなくて、それぞれの作者が普遍的な主題にたいして添えることのできる独創的な、驚きに満ちた手法である」と言い切れる程度の主題に対する人間の想像力の限界を示すものか、ただの偶然かは私には分からない。彼等はお互いに先駆者を知らなかったから、同じモティーフを使い傑作を残せたのかもしれないが、既に知ってしまった者にとっては、そのようなものがあるという事実は、新しいものを書く理由をなくしてしまうまでになってしまうのではないか。内田百





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Last updated  2002/04/04 10:02:07 PM
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