2002/09/26
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 昔、ショーン・ペンとジョー・ペシを混同していた時期があった。ショーン・ペンはマドンナの夫であると聞いて、あの、背が小さい、頭髪が薄い、少々ふくよかな、三拍子揃った名優とよくくっついたもんだ、と妙な感心をしていた。「カリートの道」での印象が強くて、というより、ショーン・ペンの出ている映画をあまり観てないと思うので、「カリートの道」での印象しかなく、モジャモジャサングラスしか浮かんでこないのが申し訳ない。
 しばらく映画から遠ざかっていた私がようやく観たいと思った映画が、このショーン・ペン監督、ジャック・ニコルソン主演の「プレッジ」だが、そういえばもう公開しているのか、と少し検索して調べるうちに、観る気が少し萎んできた。テレビの前で一時間じっとしているのが苦痛な今の私に映画館で二時間以上坐っていられるかどうか。ようするに、面倒だ。ビデオに録画した映画ばかり溜まっていく。映画を録画したビデオばかり増えていく。
「ショウペン」ハウエルで思い出しただけで。
 このおっさんはくどい。そもそも「意志と表象としての世界」の付録と補遺という意味を持つ題名を冠した「パレルガ・ウント・パラリーポメナ」の一部である本著にしてから、何度も飽きもせず同じようなことを繰り返し書いているのであるから、手にとる気はないが本編といえる「意志と~」については、それはもう、暑苦しいものであろう。
 しかしそのくどさゆえ、名前から浮かぶイメージとはほど遠く、分かりやすいことを分かりやすく言っているだけなので、おっさんとの距離は割と近く感じられる。
「現代の我々にとって驚くほど新鮮」(表紙解説文より)などではなく、おっさんは当たり前のことを書いているだけである。ドイツ人ではなく、当時に生きていたわけではないことを差し引いても、大部分はわざわざ指摘されるまでもなく、ほとんど自明のことばかりである。少なくとも私にとってはそうであった。この本を読んで「目を開かれた」と言う人には「既に自分の中にこれらの欠片も持っていなかったのですか?」と聞きたいほどだ。再発見ではなく、確かめるだけ。

 数量がいかに豊かでも、整理がついていなければ蔵書の効用はおぼつかなく、数量は乏しくても整理の完璧な蔵書であればすぐれた効果をおさめるが、知識のばあいも事情はまったく同様である。いかに多量にかき集めても、自分で考えぬいた知識でなければその価値は疑問で、量では断然見劣りしても、いくども考えぬいた知識であればその価値ははるかに高い。

「思索」1より


 文体は精神のもつ顔つきである。それは肉体に備わる顔つき以上に、間違いようのない確かなものである。他人の文体を模倣するのは、仮面をつけるに等しい。仮面はいかに美しくても、たちまちそのつまらなさにやりきれなくなる。生気が通じていないためである。だから醜悪この上ない顔でも、生きてさえいればその方がまだましということになる。
「著作と文体」11より


 読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。習字の練習をする生徒が、先生の鉛筆書きの線をペンでたどるようなものである。だから読書の際には、ものを考える苦労はほとんどない。自分で思索する仕事をやめて読書に移る時、ほっとした気持ちになるのも、そのためである。だが読書にいそしむかぎり、実は我々の頭は他人の思想の運動場にすぎない。そのため、時にはぼんやりと時間をつぶすことがあっても、ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く。つねに乗り物を使えば、ついには歩くことを忘れる。

「読書について」2より


 その他いろいろ。私がいつも感じていたこと──作家の作品や人生を論じた文章が作品以上に面白いことは、ほとんどあり得ない。だからいつまで経ってもそういう文章に魅力を感じないので、あまり読む気になれない──自分では拙劣な感想を書いておきながら常々思っていたことを、正当化してくれたように思えることも書いてあった。
 だが忘れてはいけないのは、おっさんの言うことを素直に受け取ってはいけない、同時代人のほとんどを貶し倒しているような文章は、「もっとましなもの、そして本当に素晴らしいものをいつか書いてくれ」と、鼓舞しているものであろうことを。どこにも書いてはいないが、そう感じた。
 この種の教唆的文章を真に受け続けていたら、それこそ本当に自分の頭でものを考えることをしなくなってしまう。

 良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。

「読書について」6より


 これはこのまま受け取ればいい。

ショウペンハウエル「読書について 他2篇」(岩波文庫 お取り寄せ)斎藤 忍随 訳





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Last updated  2002/09/26 02:43:25 AM
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