2002/09/28
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 体調に何も問題のない時、腹の調子が悪かった時、一度寝たが目が覚めて目が冴えて眠れなくなった時。一冊の本を読んでいる間体調が三段階変わった。そうすると感じ方も変わっていった、気がする。本の内容が違っていっただけかもしれない。
 まだ腹がゴロゴロいってる。
「やはり深沢七郎の文体は好きだなあ、不器用だけど誠実さが滲み出ていて」「少しその誠実なところが嫌味に見えてきて、本人にその気はなかったとしてもなんだか皮肉に読めるな」「いくら何でも素直に肯んじることが難しい、なんだかおじいちゃんの繰り言みたいになってきたな」と変化。発表時期が載っていないが、大体発表順なのではないだろうか。最後の章「世の中はつまらないことについて」にまとめられている文章が時事問題や少年の非行などを扱っているからそう見えるだけかもしれないが。
 ショウペンハウエルの言う通り、他人の文体を模倣して書かれた文章はあまり面白くない。それが巧くても、巧いからこそ、かえって魅力を無くしているように見える。それはその人にとっては本当の文章ではないと思えるから。しかしどうしても、濃い文体を持っている人、個性の強い人、つまり模倣しやすい人の文章を読んだ後はその影響を受けやすい。露骨にその人風の文章を書きがちである。そうして書かれたものは自分でも良いと思えない。だからと言って、何者にも影響を受けていない状態、一度まっさらな状態に自分を置いてから書く文章も、あまりいいものは出来上がらない。私には自分の文体というものがない。見えない。
 深沢七郎が深沢七郎の文体である理由は、よく分かる気がする。まさに彼の生き方から湧き出ている文章である。それはとても自然で、書いてある内容がどうであれ、淀みがない。途中で放り出した野坂昭如「オペレーション・ノア」は、資料を駆使し過ぎているせいか、野坂独特の文体が削られ、文体と強烈な経験を下敷きにしているのが魅力の野坂昭如という作家の美点をことごとく潰しているように見えた。大江健三郎の新作「憂い顔の童子」を楽しみにしているのも、「取り替え子」の続編ならば「大いなる緑の木」や「宙返り」のようなものではないだろうというのが一つ、あの文体で作られた文章の森に入り込んで行きたいのが一つ。物語は二の次としているふしがある。
 いわゆるミステリー系の作品に私が魅力をあまり感じないのも、そちら系の作家は文体に重きを置いていないように思えるから。SFもそう。そんなことを気にさせない力を持っている作品ならいいが、そうでない場合にはどうしても物足りなさを感じてしまう。不快感を感じるところまで行き過ぎてしまったものでも、やはり個性的な文体というのは魅力的である。笙野頼子など、好きな作品は少ないのにもかかわらず、時々無性に読みたくなる。逆に多和田葉子は好きな作品が多いのに、気分によっては全く受け付けない時期があるので、まだまだ読んでいない作品は多いのに急いで手に取りたいとは思わない。
 眠れないからダラダラと書いてきて何も見えない。

深沢七郎「人間滅亡の唄」(新潮文庫 この本は現在お取り扱いできません)

 読んだのは徳間書店発行の単行本。





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Last updated  2002/09/28 03:25:54 AM
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