隣家から聞こえる笛の音は「over the rainbow」に変わっている。今度は間違いなく吹き進めているが、リズムが悪い。 誤訳が多くて改訂版を出したそうだ。それでも、「お前の姉ちゃんのオッパイは、ケツからぶら下がってて、クソをたれると便器の水につかっちまう」など、滑らかに罵倒しそうな場面で言葉がぎこちなく、迫力が出ていない。 ブコウスキーの短編集はたいてい、どうでもいい話や、酔っ払いが暴れたり、酒飲んでセックスしたり、アパートの大家に追い出されたり、つらい仕事に就いて辞めたり、弱小野球チームに空飛ぶ男が加入したり、詩の朗読に行ったら気に入らないことが起こったり、など、大体そういう話が多いのだが、この本はその中でも特にどうでもいい話が多く、つまりいつもとあまり変わらない。だから、翻訳者があとがきで「どっかで読んだ話」「焼き直しが多い」だなどと言い訳をする必要もなく、こちらも斬新なブコウスキーを期待して読み始めているわけでもない。わけがない。