2003/10/10
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カテゴリ: 詩集感想
『芽むしり仔撃ち』を読んだついでに、と、大江の長編を発表順に読み返していこうとしたら、『われらの時代』の初め10ページで延々と中年女との性交が描かれていて嫌になって止した。壊れた下水管を修理するところで主人公がこれまでに流された精液について思いをはせる。そこで女が「なにを考えてるの、わたしの天使」と呼びかける。印刷の不具合で文字の上辺が薄れ「わたしの大便」と読んだ。そう読んでもいいところだと思えた。もう一度大便と読んでみた。意味が通じる気がしてきた。


「歌」

お前は歌うな
お前は赤ままの花やとんぼの羽根を歌うな
風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな
すべてのひよわなもの
すべてのうそうそしたもの
すべての物憂げなものを撥き去れ
すべての風情を擯斥せよ
もつぱら正直のところを
腹の足しになるところを
胸先きを突き上げて来るぎりぎりのところを歌え
恥辱の底から勇気をくみ来る歌を
それらの歌々を
咽喉をふくらまして厳しい韻律に歌い上げよ
それらの歌々を
行く行く人々の胸廓にたたきこめ


 中野重治は1902年に生まれ、1979年に死んだ。生きている間詩を書いた。説明終わり。

「豪傑」

むかし豪傑というものがいた
彼は書物をよみ
嘘をつかず
みなりを気にせず
わざを磨くために飯を食わなかつた
後指をさされると腹を切つた
恥しい心が生じると腹を切つた
かいしやくは友達にして貰つた
彼は銭をためる代りに溜めなかつた
つらいという代りに敵を殺した
恩を感じると腹のなかにたたんで置いて
あとでその人のために敵を殺した
いくらでも殺した
それからおのれも死んだ
生きのびたものはみな白髪になつた
白髪はまつ白であつた
しわが深く眉毛がながく
そして声がまだ遠くまで聞えた
彼は心を鍛えるために自分の心臓をふいごにした
そして種族の思いひき臼をしずかにまわした
重いひき臼をしずかにまわし
そしてやがて死んだ
そして人は 死んだ豪傑を 天の星から見分けることが出来なかつた


 検索して見つけた パロディ詩
「どうしておれにはこんな事がいつもいつも悲しいんだろうかなあ/おれやひよつとしてどうかなつて了うんじやあるまいかなあ」『女西洋人』より。「誰が人の足を踏みたいか/だがおれ達はぎりぎりと踏んだ」『汽車 一』より。「それで お前らが 秋の来るのを止められると思うているのかよ/秋の来るのを 秋の来るのを」『夜刈りの思い出』より。
 詩について語るとつまらなくなる。以下十行削除。


旧版新潮文庫





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Last updated  2004/10/29 01:23:35 AM
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