2005/03/24
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 一章あたり2~4編ずつ小説を取り上げ、それに纏わる諸々の話を書いている。どのようなことを書いてあるか、より、目次を抜き出してみた方が、作者がどのような本と関わってきたかが分かりやすい。どれも褒めちぎっているわけではないけれど。


三つの小説   明暗/流れる/楢山節考
青春小説    三四郎/青年
伝奇小説    遠い声/象徴の設計/火の虚舟
大衆小説の読者 小説 日本婦道記/断碑/坂の上の雲
二つの「金閣寺」 金閣寺/金閣炎上
愛の小説    愛の渇き/雨やどり/夏の栞
短編小説の魅力 伯父の墓地/青梅雨/人生の一日
世捨人の文学  雨瀟瀟/暢気眼鏡/男嫌い
意地の文学   業苦/異端者の悲しみ/阿部一族
恐怖小説    剃刀/片腕/出口
伝奇小説    山月記/魚服記/犬狼都市
文学における悪 沼津/怪物/渦巻ける烏の群
夢の小説    件/夢の中での日常/追跡の魔
新鮮な驚き   蝶/川/さまよい歩く二人
文士の魂    突貫紀行/保田與重郎ノート/白い屋形船/兄の左手


 各作品のタイトルを細かく記したのは、いずれ私が読む時の参考にする為である。作者を付記しなかったのは、面倒だったからである。紹介されたうち12編読んでいる。




<<私のみでなく、精神病になり、三十八歳の若さで死んだ兄嫁も、幼くして母親から引きはなされ、淋しい幼時を過ごさねばならなかった子供たちも、また、兄の文学の受難者であると言えよう。
 さらには、孫の面倒まで見、兄の病気で最後まで苦労しつづけて死んだ母も、そう言えるのではあるまいか。
「七度生れかわったとしても、文学をやりたい」
と兄は言った。
 私には、もう二度とお付き合いをする気力はない。>>
 これが文士の魂である。



 病に臥せ、妹に口述筆記をさせて小説を紡いだ上林暁の、妹の手記を引いての言葉、この本の末尾の文章である。これに尽きる、ということになる。いや、それまでにも、家族に、編集に、読者に、周囲全てに迷惑をかけて生きる不器用な文士たちの生を書いている。そのもっとも顕著なのが作者自身のことである。
 幸い私には、そのような文士に対する憧れはない。


新潮社  2001年





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Last updated  2005/03/25 01:23:58 AM
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