2005/03/25
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カテゴリ: 国内小説感想
 表題作は元横綱の名前を付けられた兜虫の話、第27回川端康成文学賞受賞作。他5編。「『書くことは、私には悲しみであり、恐れである』という著者の、業曝しの精神史としての私小説」と文庫の裏にある。私小説、私小説言うてからに、その中の虚点をそろそろ見極められるようになってきたぞ、と嫌みたらしく思ってみる。むしょうに漱石を読みたい。けれど車谷長吉も大体読み終えておきたい。足を早める。
 初夏に生まれ秋に死ぬ兜虫との、数ヶ月の共同生活を描いた表題作もまあまあだけれど、少年時代のことを冷徹な眼で描いた『白痴群』の方がずっと良い。単行本出版当時はこちらが本の題名であった。これが書かれた当時は、まだくだらぬ言葉狩りなど流行ってなかったか、と初出を見てみると(改題の理由はそれよりも、『武蔵丸』が川端康成文学賞を獲ったことが大きいだろうけれど)、『白痴群』だけ昭和50年の作、あとは平成11~12年の作、と20年以上の開きがある。『白痴群』のような秀作を書いておきながら作者は放浪生活を送っていたのである。東京時代の知り合いがわざわざ探し出そうとするのも頷ける(もっとも、それは『赤目四十八瀧心中未遂』の中で書かれたことであり、虚実どちらかは判断つかない)。
 それでも少し小粒か。


新潮文庫  2004年





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Last updated  2005/03/26 01:18:05 AM
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