あるパーティーダンサーの独り言

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2007.03.19

お母さん

(16)

カテゴリ：社交ダンス

その狭いダンスパブに入るとギョッとするほど人があふれていました
普段の倍ははいっているでしょう
どうやらサークル流れの団体さんが入ったようです
「こっちこっち」と呼ばれた隅のカウンター席には常連さんたちが、ひしめきあって座りきれずに立っている人もいました

常連客の中に遠方からお嬢さん２人と一緒にいらっしゃってるかなり年配のご婦人がいます
昔は結構踊られた方のようですが、去年階段で転倒されて長いことお休みした後からめっきり体が動かなくなり年齢相応の踊りしかできなくなってきました
その女性がもう来るのは嫌だと言い出したとお嬢さんから聞いたのは今年の初め頃でした
以前に較べると動きがぎこちなくなってきたせいで男性からのお誘いが減って席を暖めることが多くなったのです
お母さんの付き添いで付いてきていたお嬢さんは、随分と上達して常連客の中では一番若いということもあって引っ張りだこです
それもお母さんは面白くないようです
お嬢さん達にしてみれば日頃運動不足のお母さんが折角体を動かすチャンスということで、どうしてもお母さんを引っ張り出したいのです
そんな訳でお嬢さんたちから頼まれたこともあり、私は極力そのお母さんと踊るようにしています

ところが今日は先に店内を占領した団体組が積極的で休み無く私を誘いにきます
お母さんはしょんぼりカウンタの高い椅子の上にのっています
ようやく団体さんの要望に一渡り応じた後そのお母さんの元に駆けつけました
手を差し伸べると嬉しそうに椅子からおりてきました
「今日ね貴方の夢を見たのよ」とおっしゃいます
歩幅が狭いので後ろから他のカップルにどんどん追い越されます
ぶつからないようにかばいながら１曲踊り終わりました
その後もなるべくたくさん踊るようにしましたし、常連の男性のお客さんも声をかけて踊っていました

いずれは私も行く道です
私の道しるべでもあります、まだまだ踊っていてもらいたいのです

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