メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Nov 4, 2005
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サービスの業務に関する「練習問題」です。

問題; お食事を済まされたお客様。いざ、お帰りになろうとしたお客様が誤って、卓上のグラスを倒し、破損させてしまいました。お客様は大変恐縮され破損したグラスの代金を支払うとおっしゃられています。さて、このような場合、お客様からグラスのお代金は頂くものでしょうか?頂くとすればそれはいくらくらいに設定すれば良いのでしょう?

皆さんならどう答えられますか?

 さて、上記の設問は、実は私があるところでサービスの講習を行った際に参加者の方から提起された質問でした。実際にはかなり具体的な内容でしたので、質問をされた本人の方が実際に経験されたことでは無かったのでしょうか。

 その時は…私は失礼ながら満足な答えを出来ませんでした。帰り際?お食事代は支払われるし?グラスの代金?べらぼうに高価なものでもありません。

「やはりお客様ですから、お代金は頂けませんよね、、、モゴモゴ、、、」

というような調子でその場の解答はどうにかやり過ごしたのですが、どうも後味が悪い。
 後々に渡っていろいろな方から意見を伺いました。先輩のひとり、仮に名前をムッシュ・アナナとしておきますが、この方の解答はなるほどなぁ、と思わせるものでした。

 「まず、お客様が割れたグラスで怪我をされたりしていないか確認する。またお召し物に汚れが着いていないかも確認する。そしてできるだけ何事も無かったかのようにお勘定を済ませて頂き、またのご来店を心から望みながらお見送りしましょう。」

 と、いうこと、、、、???答えになっていないように思います。

 質問は「お客様からグラスの代金を頂くのかどうか」ということではなかったのでしょうか。

 ところが、、、接客業とはお客さまが100人いれば100通りの方法があるともいわれます。「問題」そのものが常に正しいとは限りません。

「人生いろいろ。会社もいろいろ。お客さんもいろいろ。by小泉純一郎」

 質問された方も含めて、我々サーヴィスマンが本当に導き出したい答えは

「それでもいかにお客様に満足頂いて、このお客様がリピーターとなるか」
です。

レストランも商売ですから、お客様が満足していた上で、お店にも利益が戻るようにする事、が目的です。あくまでも「お客様の満足」が条件としては先に来るのですが。

 「レストランは味であれ、サービスであれ気分がよくなる場所を提供するために存在します。グラスが割れたのはお客様の過失であったとしても、一刻も早く忘れていただいて、それまでの充分満足した気分に浸って頂きましょう。
 グラスそのものの代金というのは、本来、消耗や破損も踏まえて料理やワインの値段に含まれています。料理・ドリンクの値段がいくらいくらあるうちの何パーセントかは将来的に破損するであろうグラス、食器の分も含まれているのです。そのため、たまたま誤って倒したのがそのお客さまであるだけで、一個人のお客様にお代金を請求するということはするべきでは無いと考えられます。

 それよりも先にお客様の安全を気遣う必要があります。
「怪我をされていませんか?」「お召しものは汚れていませんか?」お客様に少々オーバーアクションととらえられるくらいの方が、割れたグラスの事から気を逸らされます。もし、怪我をされていたり、衣服に汚れが着いたようなときは逆にこちらから怪我の治療費やクリーニング代を負担させていただく事を申し出てもよいかもしれません。ひとつの「セールストーク」としての心づもりでも構いません。お客様が万が一受け取られたとしてもそれは将来への「投資」ととらえるべきです。
 また、こういったケースの場合、お客様にもともと悪意がない限りは、ほとんどのお客様は受け取られることはありません。ここに「サービスをセールスする」瞬間があるということです。

 さて、お客様が謝られたりしたとしても、いつまでも謝りの言葉を発して頂くのもいけません。
 謝られたり謝ったりした人間関係は後々まで心に引っかかるものです、この気持ちを持ったまま退店して頂いては、次回のご来店の際に「申し分けないことをしたから顔を出さねば。」あるいは「悪いことしたから、利用しにくいなぁ」とネガティブな来店動機になってしまいます。

 極力、その場では早く忘れていただいて、グラスが倒れる前の満足感を思いだしていただく。そうすることによって次回の来店の動機が「美味しかったから」「サービスがよかったから」という方向へ転換できるのです。」

 ネガティブな部分をポジティブに転化させる。で、本来の目的を達する。これはいわゆるレトリック(詭弁)です。
 しかし、レトリックを上手に使うこともサーヴィスのテクニックなのです。







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Last updated  Nov 5, 2005 01:23:52 AM
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Comments

背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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