Profile

Hiro Maryam

Hiro Maryam

Archives

・2024年11月
・2024年10月
・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月
2017年08月15日
XML
テーマ: 短歌(1697)
カテゴリ: 2017年来日記





終電の日比谷線に乗って○個目のM駅に着いたのは月曜日の〇時前後だったように思う。M駅はとても不便な駅で上り列車にのる改札と、下り列車にのる改札が構内で繋がっていないで同じ名の駅が二箇所あるような特殊な駅だった。

しかも地上にでると二つの大通りが重なる立体交差点がM駅改札に通じる二つの入口の間に位置しているのだった。そんなことなど知る由もない私はエレベーターで地上にでたら、そこには大通りが二つあって、しかもその通りの名が夜の闇でさっぱりわからない。看板が遠くて暗くてみえなかったから。
K通りは地上にでたらすぐ目の前だからそこをまっすぐ行けばいいと夫からは極々簡単に説明をされていたけれど、まさか二つ大通りがあるとは!

どちらかの大通り沿いに十五分ぐらいまっすぐ歩いて左に曲がると宿泊先なのだが、大きなスーツケース二つ抱えて夜中に見知らぬ地を歩き回って、息子と一緒に迷子になる勇気はとてもとても私にはなかった。しかし携帯はネットもアンテナもなく宿泊先にも連絡できない。公衆電話もみあたらない・・・

タクシーに乗ろうにも日曜の夜中、月曜の〇時近く、過ぎ?だったからか駅前であるにもかかわらず、まったくタクシーの影はない。そして通りがかりの六十前後の女性に迷わず私は声をかけた。彼女は親切にもご自身の携帯のネットで私が告げた宿泊先の名前を検索してくれたのだけれども、出てこない。宿泊先のある大通りの名前を告げても彼女もこの土地のことはわからないらしかった・・・

途方にくれた私が駅へ通じる階段の方をふと振り返ってみると、偶然ギターを抱えた男性を降車させたばかりのタクシーを発見した。スーツケースも息子もおばさんのところに残したまま私はタクシーに向かって腕を挙げて駈け出した。

この天の助けを逃したらもう、夜明けまで宿泊先にはたどり着けないだろうという危機感が、なんとしてでもこのチャンスをものにしなければと疲れきった私の手足を動かしたのだろう。

ようやくタクシーを捕まえて、おばさんにも息子にも、そして私にも笑顔が浮かんだのだった。タクシーの運転手は宿泊先の名を言ってもわからなかったので、住所を告げてカーナビに導かれて私達は宿泊先へと向かった。


もうすぐ、本当にもうすぐに両足とこの身を思い切り伸ばしてよこたわる幸福を描きつゝ私はタクシーに揺られていたのだった。


・・・この先にもまだ災難が待ち受けていることなどまったく知ることもなく



【闇囲む知らぬ地潜る時の間に垂るゝ機運の綱を渡りつ】

やみかこむしらぬちくヾるときのまにたるゝきうんのつなをわたりつ



夜の闇が囲うように迫る見知らぬ地に身を投じた私は、時の狭間に垂れるチャンスの綱渡りをしながら宿を探していたのだった。











rblog-20170815184004-00.jpg


数日前の空










にほんブログ村 ポエムブログ ことばへ
にほんブログ村





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2017年08月16日 01時58分27秒
[2017年来日記] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Favorite Blog

カリニコフ交響曲 New! キイロマン☆彡さん

退院までのカウント… New! chiichan60さん

「錯視の表情」 New! lavien10さん

気候変動だと冬は突… New! かにゃかにゃバーバさん

久しぶりの逆(笑) ガボちゃん♪さん

ウォーターマークを… 猫に足を踏まれるさん

いつものあれ(`・ω… 天野北斗さん

15日は誕生日でした うめきんさん

いましばらくおまち… こうこ6324さん

あなたは映画を見て… shophunterさん


© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: