趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

April 29, 2017
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カテゴリ: 学習・教育

第百六段

【本文】

 むかし、男、親王たちの逍遥し給ふ所にまうでて、龍田河のほとりにて、

 ちはやぶる 神代も聞かず 龍田河 からくれなゐに 水くくるとは

〇親王=皇族であることを天皇から認められた皇子。

〇逍遥=景色を楽しみに川や海などの水辺に出かける。川遊び。

〇まうづ=うかがう。参上する。身分の高いかたのところへ「行く」ことをへりくだっていう。

〇ちはやぶる=勢いが強く逸る。荒々しい。「神」にかかる枕詞。

〇神代=神々の時代。『古事記』『日本書紀』では、開闢から神武天皇以前に至るまでの時代を指し、神々は高天原に住んでいたとされる。

〇龍田河=奈良県生駒郡を流れる川。生駒山から流れ出て、大和川に注ぐ。紅葉の名所として著名。

〇からくれなゐ=あざやかな紅の色。

〇くくる=くくり染めにする。定家をはじめ、中世では「潜る」意に解されていた。現在でも一部(たとえば落語の演題「ちはやふる」)では、その意で用いられている。『例解古語辞典』(三省堂)に「古代中国の蜀の地では、錦江の流れにさらしてつくる錦が、精巧な品として名高かったが、くくり染めという着想は、その蜀江の錦を意識してのものだろう。とすれば、上の句には、あの有名な蜀江の錦でも、これほどではあるまい、という含みもある」。

【訳】

むかし、ある男が、親王たちが川遊びをなさる所に参上して、龍田河のほとりで作った歌。






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Last updated  April 29, 2017 09:45:00 PM
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