億万長者の幸福論 観念をふっとばせ!

チープ革命


●チープ革命

 この「チープ革命」という概念には、「ムーアの法則」によって下落し続けるハードウェア価格、リナックス(Linux)に代表されるオープンソース・ソフトウェア登場によるソフトウェア無料化、ブロードバンド普及による回線コストの大幅下落、検索エンジンのような無償サービスの充実といったことがすべて含まれる。

 そして、この方向がさらに極められていく「次の10年」は、ITに関する「必要十分」な機能のすべてを、誰もがほとんどコストを意識することなく手に入れる時代になる。

 2005年の日本は、フジテレビ・ライブドア問題、TBS・楽天問題で大騒ぎだったが、事の本質はこの「チープ革命」と深く関係している。

 テレビ局は「映像コンテンツを製作して、それを日本にあまねく配信する」ために存在しており、そのためには、編集機材から放送設備まで莫大な投資が必要だった。

 しかし今や「チープ革命」によって、映像コンテンツの製作・配信能力は、皆が持っているパソコンやその周辺機器やインターネットの基本機能の中に組み入れられ、テレビ局だけの特権ではなく誰にも開かれた可能性となった。

 「ムーアの法則」の恐ろしさとは、そういう可能性がいったん開かれると、それを実現するための道具の価格性能比が年々ものすごい勢いで向上していくことが、誰にも予感できることなのである。

 「映像編集ツールが与えられたからといって誰もが素晴らしい映像を作ることはできない」
 「音楽編集ツールがあるからといって誰もがミュージシャンになれるわけがない」
 「ワープロソフトが普及したって誰もがいい文章を書けるとは限らない」というのは確かに真実なのであるが、道具の普及が私たちの能力をぐっと高めていくことも、一方で真実である。

 特に子供の頃からこうした新しい道具を与えられた世代からは、明らかに旧世代とは違うリテラシー(表現能力)を持った人たちが数多く育っていくに違いない。

 (後略)


                      梅田望夫


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