名作落語大全集

名作落語大全集

2024.04.25
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カテゴリ: 落語

【粗筋】
 鍼に凝った若旦那、布団や猫で練習して、幇間の一八に打たせろと迫る。金に目がくらんだ一八の腹に打つが、一八が痛がって動くので鍼が折れてしまった。迎え鍼も折れて、とうとう若旦那は逃げ出してしまう。
「ちょいと一八さん、どうしたの。えっ、若旦那に鍼を……あぶないじゃないかねェ。でも、お前さんもこの土地では知られた幇間(太鼓)、いくらかになったんだろ」
「いいえ、皮が破れてなりませんでした」

【成立】
 明和9(1772) 年『楽牽頭』の「金銀の針」は、主人が自分の家の小僧に針を打って折れてしまい、「高価な針だが、お前にやるぞ」という落ち。安永2(1776 )年『年忘噺角力』の「鍼のけいこ」も、相手が幇間になるだけで『楽牽頭』と同じ落ちであるが、落ちに至る経緯はより落語に近い。
 安永9(1772)年『初登』の「針医」は、抜けなくなってお椀を被せて帯を締め、「さあ、お立ちなさい」「これで抜けるんですか」「さあ、俺の鍼の師匠の所へ行ってみよう」という落ち。
古くは「若旦那を逃がしちまって、一文にもならない。ああ、ならない訳だよ、破れだいこだから、もう鳴らない」という説明的な落ちであったという。「幇間鍼」とも。
 上方の演出は、最初は我慢しているが抜けなくなる。それからはのたうち回って……もう、いかにも痛々しくて見ていられなかった。武藤禎夫によれば、「痛みころげる姿態が噺の見どころ」らしいが、そこまでやらなくてもと思った。その人だけかも知れないが……「たいこ鍼」とも。

【一言】
 そもそも鍼術とは、金、銀、白金、鉄などの金属針を身体組織中に刺し、血管の収縮作用を起こさせ、筋肉をやわらげ、知覚神経の興奮をおさえて、反射的に内蔵の苦痛をやわらげようというもので、考えてみれば、ずいぶん手荒な刺激療法だが、これが、いま世界中に流行して、中国、香港、ギリシャ、オーストリア、オランダ、西ドイツ、イギリス、フランスなどでさかんに行われているそうだ。そのうちにアメリカにも渡って、そうしたら、この『幇間腹』という落語、一八をグラマーな女かなんかに仕立てて​
Prayboy 誌あたりに色っぽく紹介されるかもしれない。迎え鍼を“ Wlelcomeneedle" なんて、悪くない!(江國滋)

【蘊蓄】
 (天和2(1682)年、盲人杉山和一が幕府の命を受けて鍼の講習所を設置し、鍼術は盲人の職業となった。









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Last updated  2024.04.25 05:30:39
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