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2023.11.11
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カテゴリ: 報徳記を読む
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報徳記

巻之六【9】草野正辰先生の良法を聞き國民を安撫せんとす

その文意の略(りやく)に曰く、
國家(こくか)の大業を爲(な)すこと衆人の意見に從(したが)ふ時は必ず之を遂(と)ぐることあたはず。
何となれば庸人(ようじん)の見る所は千里の遠きに及ばず、且(かつ)人を計(はか)るに己の心を以て度(ど)とせり。
何ぞ賢者の心(こゝろ)公(おほやけ)に在りて一毫(がう)の私(し)を生ぜず、百姓を安んぜんとして我が身を忘るゝの至誠を察することを得んや。
然らば則ち今二宮の事を聞き、疑惑を生ずるもの亦(また)宜(うべ)ならずや。
元より其の賢なることを知らずんば、何ぞ猥(みだ)りに可否を論ずることを得ん。
然して疑惑の故を以て、身を退くと雖も同意せずと云ふものは、是れ自己の見(けん)を立て國家(こくか)永安(えいあん)の道を拒(ふせぐ)ものにあらずや。
國(くに)の中興を拒(ふせ)がば、僻令(たとひ)積年の忠勤ありとも今は之を不忠の臣といふべし。
不忠の者を退け、賢を用ゐざれば何を以て六十年餘(よ)の衰國(こく)を擧(あ)ぐることを得ん。
諸臣の進退君(きみ)より曾(かつ)て貴兄(きけい)に任じ玉ふ。
速かに事を決し君家(くんか)の大幸(たいこう)を開くこと當時(たうじ)の急務なり。
若し衆議に倚(よ)りて猶豫(いふよ)を懐かば大事斯(こゝ)に廢(はい)せんか。
國家(こくか)再復の道は群臣にあらずして貴兄の一心にあり 
と云々(うんぬん)。

此の如く書を贈り、猶(なほ)屡々(しばしば)先生に至りて國(くに)の衰廢(すゐはい)百姓の困苦する事情を述べて、之を再盛せんことを問ふ。
先生元より衆人に逢(あ)わず。
容易に交わりを許さず。
大夫(たいふ)之を知り勘定奉行(かんぢやうぶぎやう)以下を僻(かり)に從者(じゆうしや)となして、先生に至り別坐(べつざ)にあらしめて其の高論名説を聞かしむ。
是(これ)に依(よ)つて江都(かうと)にあるものやゝ感動するもの多し。
人々大夫(たいふ)の誠忠なることを歎美(たんび)せり。
然して草野大夫(たいふ)の書翰(しよかん)中村に達し、池田大夫(たいふ)之を閲(けみ)し意中に悦び、役所に至り諸(しょ)有司(いうし)に謂(い)ひて曰く、
各々政務を二宮に委(ゐ)せんこと然るべからずとの異見(いけん)具(つぶ)さに江都(かうと)に達せり、即ち返書來(きた)れり。
各々之を一見(けん)して再び異見(いけん)を述ぶべしと轉見(てんけん)せしむ。
有司(いうし)之を閲(けみ)し色を變(へん)じて一言を發(はつ)せず。
大夫(たいふ)曰く、
今君(きみ)將(まさ)に二宮の道を行(おこな)はんとし草野之が爲(ため)に力を盡(つく)すこと此の如し。
某(それがし)も亦元より同感也。
然れども國家(こくか)の再復は大業(たいげふ)也。
豈(あに)一二人(にん)の力に及ばんや。
衆皆心力(しんりよく)を同じくするに非ざれば成るべからず。
草野已(すで)に老年に及べり。
一日の後(おく)れんことを憂ふるは忠誠の致す所なり。
然れども衆議(しゆうぎ)決せざる時は永久(えいきう)の道は行はるべからず。
各々異見有らば遠慮なく發言(はつげん)すべしと。

是(こゝ)に於(おい)て有司再び其の不可を論じて未だ決せず。
君公くんこう)中村の衆議決せざるを聞き玉ひ、草野を召して曰く、
凡(およ)そ目前の事だも猶(なほ)疑惑を生ずるは凡情(ぼんじやう)の常(つね)也。
今百里を隔てて以て二宮深遠の道理を聞き、安(いずく)んぞ能(よ)く解することを得んや。
國政(こくせい)元より汝と池田に任ぜり。
速やかに池田を呼び二宮に面會(めんくわい)せしめ、然る後事を決せよ
 と命じ玉ふ。
大夫謹(つゝし)みて命を受け直ちに君命を達す。
池田大夫(たいふ)不日(ふじつ)に中村を發(はつ)して江都(かうと)に至る。
君召(め)して曰く、
汝を呼ぶこと別事にあらず。
二宮なるもの人となり古賢に耻(は)ぢず。
衰國(すゐこく)を興(おこ)し百姓を撫恤(ぶじゅつ)すること至れりと謂(い)ふべし。
我が國(くに)の再興を以て之に倚(い)せんとす。
汝草野と共に力を盡(つく)し此の事を成就せよ 
と命じ玉ふ。
大夫(たいふ)謹(つゝし)みて命を受け、是より兩(りやう)大夫(たいふ)同心協力先生の良法を聞き君意を安(やす)んぜんとして心思(しんし)を盡(つく)せりと云ふ。




高慶曰く、
君に事ふるに忠を以てし民を懐るに徳を以てし國家をして常に久安の地に在らしめる者は大夫の任に非ずや。
今池田草野二大夫の國に勤るを観るに鞠躬盡瘁數十年を累ね、尚ほ以て足らずと爲す。
而して益を求むるの志老に至て益々厚し。
群有司紛々争議の際に當て、寛以て之を導き温以て之を諭し、誠を積て以て群疑を釋く。
曾て一人を斥罰するに及ばず。
而して協心勠力衰を振ひ廢を擧るの業成れり。
識量超絶にして能く大任に堪る者に非ずや。
然りと雖も明主之を信じ厚く之に任ずるの專を有するに非る自りは、二大夫の賢と雖も豈能く此に至るを得んや。



著者(富田高慶)が思うに、
忠をもって君に仕え、徳をもって民をなつけ、国家を常に永安の態勢に置くのが、家老の任務ではあるまいか。
いま池田・草野二家老の国家に勤める態度を見るに、身命をなげうち粉骨の労をつくして数十年を重ね、なお忠勤がたりないとしておった。
そして国益を求める志は、老いてますます厚かった。
諸役人の紛々たる争論に際して、寛大にこれを導き、温和にこれをさとし、至誠を積んで彼らの疑惑を解き、ついに一人も退け罰するに及ばなかった。
そして心をあわせ力をそろえて、衰廃振興の大業を成就した。
まことに、その卓抜な見識と度量によって、よく家老たるの大任に堪えたものと言えよう。
しかしながら、明君がこれを信じ、厚くこれに委任して変わらなかったことがなかったらば、二家老がいくら賢臣でも、到底その成果を見るに至らなかったであろう。


1人、スローロリス、ダッフルコート、テキストの画像のようです


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最終更新日  2023.11.11 00:00:19


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