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2023.12.19
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カテゴリ: 報徳記を読む
鷲山恭平著「報徳開拓者 安居院義道」の現代語訳復刻版クラウドファンディング

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報徳記

巻之八【1】先生眞岡縣令某の屬吏となる

縣令(けんれい)意中(いちゆう)甚だ怒ると雖も、理の當然(たうぜん)なるを以て憤怒(ふんど)を忍び答へて曰く、
子(し)今是事を告げずといへども、我能く之を知れり。
陣屋の内(うち)別に居家(きよか)あらず。
新たに作らんか二宮を空寺(くうじ)に居(を)らしむるもの暫時而已(のみ)。
我が意(い)を計りて二宮此の寺を補(おぎな)はざるものは過ちなり。
我何ぞ彼自ら此を補ふことを禁ぜんやと云ふ。

先生許さず。
然るに縣令(けんれい)俄然(がぜん)先生を呼ぶ。
先生至る。
令大いに怒りて曰く、
過刻(くわこく)衣笠來(きた)り子(し)を破壊の寺に居らしむること、我が處置(しよち)を失ひたりと云ふ。
彼は元より陪臣(ばいしん)なり。
何ぞ天下の事に與(あづか)るを得んや。
今此の如き言を我に述ぶる者は身分を知らざるに非ずや。
我が處置(しよち)は我が思ふ所あり。
何ぞ陪臣(ばいしん)の指揮を待たん。
以後此の如(ごと)き失言を發(はつ)すること勿(なか)れと子より之を諭(さと)し置くべし。
我直ちに此の言を以て衣笠を誡(いま)しむる時は、彼一身の立つべからざることを憐み、子(し)をして言はしむるなりと。
其の意先生衣笠をして艱苦を言はしめたりと疑ひ、怒言(どげん)を以て先生に加ふ。
先生從容(しようよう)として答へて曰く、
某(それがし)空寺(くうじ)に居(を)る何ぞ艱難の事あらん。
夫(そ)れ貧民の世に處(を)るや居(きょ)雨露(うろ)を障(さゝ)ふることあたはず。
糟粕(さうはく)口に飽(あ)くことあたはず。
衣(い)身(み)を蔽(おほ)ふことあたはず。
飢寒に困(くるし)み生(せい)を聊(やす)んぜざるもの其の數(すう)を知るべからず。
之を救助せんとし、其の道を盡(つく)すことあたはざるを以て憂(うれひ)とせり。
然るに某(それがし)は扶助の米粟(べいぞく)を賜(たまは)り飽食暖衣せり。
破寺(はじ)といへども大破(たいは)といふにあらず。
何ぞ雨露(うろ)の凌ぎなからんや。
若し風雨を障(さゝ)ふることあたはずんば、何ぞ縣令(けんれい)を勞(らう)せん。
自ら之を補ふに於(おい)て何の難きことかあらん。
衣笠なるもの性(せい)善柔にして思慮淺(あさ)し。
偶然(ぐうぜん)破寺(はじ)を見て子細(しさい)を問はず。
使君(しくん)に告ぐるに失言を以てするか、退きて再び失言なからしめん。
使君(しくん)勞(らう)し玉ふことなかれ 
と。
縣令(けんれい)曰く、
我(われ)上下の爲(ため)に子(し)の方法を開き、此の國(くに)の荒地を開墾し困民(こんみん)を撫育(ぶいく)せんと欲すること年あり。
然るに私領と異にして公料(こうれう)の制度法則微細に備はる。
其の規矩(きく)にあらずして新法なるが故に行ふことあたはず。
強(し)て之を行はんとすれば屬吏(ぞくり)皆從(したが)はず。
江都(かうと)に達して其の指揮を請(こ)ふと雖も復(また)何の沙汰(さた)もあらず。
子(し)此の間(かん)に立つて手を空(むな)しくせんよりは、寧(むし)ろ退いて以前の如く私領(しりやう)の民を安ずるに如(しか)ず。
我官府(くわんふ)に言上せんとす。
二宮の道良法なりといへども私領に行はるべくして公領に行ふべからず。
小田原故主(こしゆ)に戻し玉はゞ私領の幸にして、幕府無用の人を扶持(ふち)し玉ふことなく、兩全(りやうぜん)ならんと、是より他の策あるべからず。
子(し)の意(い)如何(いかん)。
先生曰く、
一身の進退微臣(びしん)に於(おい)て更に意(い)なし。
唯(たゞ)縣令(けんれい)の指揮に從(したが)はん 
と云ひ退いて詳(つまびらか)に衣笠に告ぐ。
衣笠大いに怒りて曰く、
令(れい)は書を讀(よ)みて少しく道を知るものと思へり。
我が先に言ふ所は我が爲(ため)を言ふにあらず。
實(じつ)に令(れい)の爲(ため)を一言せり、
然るに陪臣(ばいしん)の失言なりとして之を怒(いか)り、先生を呼びて此の妄言(もうげん)を發(はつ)す。
我再び此の如き者を見ずと直(たゞち)に下館に歸(かへ)れり。
先生歎じて曰く、
縣令(けんれい)過て此の道を以て行ふ可(べ)らざるの道と訴ふる時は斯(こゝ)に止(や)まん。
又何をか論じ何をか憂へんや。
豈(あに)命にあらずや。





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最終更新日  2023.12.19 00:00:17


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