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2023.12.20
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カテゴリ: 報徳記を読む
鷲山恭平著「報徳開拓者 安居院義道」の現代語訳復刻版クラウドファンディング

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報徳記

巻之八【1】先生眞岡縣令某の屬吏となる

從者(じゆうしや)某(それ)なるもの之を聞き切齒(せつし)して直(たゞち)に縣令(けんれい)に至つて面謁(めんえつ)を請(こ)ふ。
令(れい)出でゝ之に逢ふ。
或(あるひと)言ひて曰く、
幕府二宮を以て君の屬吏(ぞくり)たらしむること豈(あに)唯(たゞ)ならんや。
此の道を以て此の民を救わんが爲(ため)なるべし。
然して數年(すうねん)を經(へ)たり。
未だ行ふべからざる歟(か)。
令(れい)曰く、
我素(もと)より二宮の道を信ぜり。
此の道を以て民間に施す時は、上下の有益少なからずとせり。
此の地に臨み之を施さんとするに至つて、古來(こらい)の法則確定せり。
聊(いさゝ)か規則に差(たが)ふ時は法を犯すの罪あり。
故に良法なりと雖も新法(しんほふ)なるを以て行ふこと能(あた)はざるなり。
二宮小田原の臣たりし時、諸候の邦内(はいだい)大小數(すう)ヶ所仕法を施して頗(すこぶ)る有益をなせり。
是れ私領に行ふ可(べ)くして公料(こうれう)には行れ難(かた)き仕法なり。
此の如くして歳月を送らば私領にも行ふこと能(あた)はず、空(むな)しく廢(はい)せんか。
某(それがし)今度(このたび)江都(かうと)に言上せんとす。

然らば公料(こうれう)に益なくして私領の益も亦廢(はい)せん。
願くは小田原故主(こしゆ)に返し私領の人民を撫育(ぶいく)せしめ玉はゞ、公(こう)に損なくして私領に益あり。
速かに戻し玉ふべしと言上(ごんじやう)せん。
然らば二宮無益の心勞(しんらう)も始めて安からん。
是れ我が已(や)むを得ずして慮(おもんぱか)る所なりと。
或(あるひと)曰く、
此の言(げん)我輩(わがはい)の知る所に非ず、
夫(そ)れ道は一のみ。
公料(こうれう)に行ふ可(べ)らざるの道ならば私領何ぞ行ふを得ん。
私領に大益あるの道ならば何ぞ獨(ひと)り公料(こうれう)而已(のみ)益なからんや。
今君(きみ)公料(こうれう)に規則あり。
是を以て新法(しんはふ)良なりといへども行はれずと。
某(それがし)公料(こうれう)の規則を知らず。
然して私領獨(ひと)り法度(はふど)なからんや。
私領といへども天下の土地なり。
何ぞ一日も政令法度(ほふど)規則なくして其の國(くに)を治(をさ)めることを得ん。
公料(こうれう)私領の規則同じからずと雖も大同小異、何ぞ雲泥(うんでい)の如く其の趣(おもむき)を異(こと)にせん。
夫(そ)れ國(くに)を治め民を安(やすん)ずるは政度(せいど)法令(ほふれい)の本にあらずや。
百千の私領皆以て天下の法度(ほふど)制令を本(もと)として之に傚(なら)ひ其の國(くに)を治む。
二宮仕法の規則に觸(ふ)れて行はれ難(がた)き時は、豈(あに)私領の規則而已(のみ)觸(ふ)れざるの道あらん。
從來(じゆらい)私領に行ふ所數(かぞ)ふるに暇(いとま)あらず。
未だ會(かつ)て私領の規則を變(へん)じ然る後此の道を施すものあらず。
舊來(きうらい)の法度(ほふど)制令依然として悉(ことごと)く缺(か)く所なく、方法其の間(かん)に流行(りうかう)し、荒地を開き米財(べいざい)を生じ善人を賞し貧困を救助し、國家(こくか)をして自然に豊富に歸(き)し、萬民(ばんみん)を安んじ永安の道を立て、是(これ)に於(おい)て始めて古來(こらい)の法度(ほふど)規則の缺点(けつてん)をも補(おぎな)ひ、遂(つひ)に國政(こくせい)をして仁政に歸(き)せしむる者仕法の良法たる所以(ゆゑん)なり。
其の國(くに)により萬一(まんいち)法度(ほふと)に聊(いささ)か觸(ふ)るゝ事あらば、法度(ほふと)を動かさずして仕法を折衷(せつちゆ)し、其の時處位(じしよい)に依(よ)つて其の宜(よろ)しきを制(せい)せり。
是れ仁術にして其の術盡(つく)る所なく諸國(こく)に行はれて成功ある所以(ゆゑん)なり。
君(きみ)此の地に至る以來(いらい)二宮に委(ゐ)して道を行はしめ、其の不可なるを見て然る後行はれ難(がた)しとせば吾等(われら)何ぞ一言(ごん)を發(はつ)せん。
未だ其の道を行はずして何を以てか果たして行はれざることを知る乎(か)。
令(れい)曰く、
東郷(とうがう)の開田桑野川(くわのがは)の新開(しんかい)之を試みたり。
是を以て行はれざるを知れり。
曰く、
開墾(かいこん)の一事(じ)何ぞ仕法の仁術とするに足らん。
夫(そ)れ仕法の道たるや惠(めぐ)むに恩澤(おんたく)を以てし、凡(およ)そ廢(すたれ)たるを擧(あ)げ絶(た)えたるを繼(つ)ぎ、禍(わざはひ)を福に轉(てん)じ貧弱を振起(しんき)して富強となし、民の疾苦(しつく)する所を除き其(そ)の安息する所を與(あた)へ、惰風(だふう)を革(あらた)め汚風を去り、教(をし)ふるに人道を以てし導くに勸農(くわんのう)を以てし、奢侈(しゃし)を戒め節儉(せつけん)を示し、五倫(ごりん)の道を正しくして君恩(くんおん)の無量なることを知らしめ、永(なが)く貧困離散の憂なからしむるを以て要(えう)とせり。
是等(これら)の道未だ二宮に於(おい)て施す所あらず。
何ぞ一片の開田を以(もつ)て道の行はるべからざるを知れりとするや。
且(かつ)君先年未だ此の地の命を蒙(かうむ)らざる時に當(あた)りて草野某(ぼう)と約して曰く、
我(われ)二宮の良法を以て國家(こくか)の有益を開き下(しも)百姓を安ぜんとす。
故に公料(こうれう)に此の道を開き、二宮の力を伸張せしめんこと我(われ)必ず之を盡力(じんりよく)せんと。
草野道の爲(ため)に悦び、誠に使君(しくん)の忠誠を感歎し、大道公行(こうかう)を以て君(きみ)を期し、其の開業を希望せり。
是(こ)れ君(きみ)自ら約(やく)するものにあらずや。
今は草野泉下(せんか)の客(きやく)となりしと雖(いへど)も、目前(もくぜん)今日(こんにち)の言を聞かば如何(いかに)とかするや。
君を以て故舊(こきう)を忘れざるの信(しん)とせんや否や。
我等(われら)の得(え)て知る所にあらず。
且(かる)此の道の公料(こうれう)に行ふべからざるを以て幕府に達(たつ)せば、君の一言(げん)を以て道の廢棄(はいき)斯(こゝ)に決せんこと疑ひなし。
何となれば先年君(きみ)二宮の道を試んと言上(ごんじやう)せり。
是(これ)を以て幕府仕法の試業(しげう)を命じ玉ふ。
其(そ)の實事(じつじ)未だ試業(しげう)に至らずといへども、幕府の試み玉ふこと君(きみ)の一身上にあり、
年を經(ふ)ること數年(すうねん)にして行ふ可(べ)らざるの道なりと言はば、誰(たれ)か未だ試(こゝろ)みずして言上(ごんじやう)せりと爲(な)さんや。
然らば則ち此の一言(げん)に依て行はれざるの確證(かくしやう)とならん。
君(きみ)其の道を試みずして行はれざるの道なりと定めんこと豈(あに)衆人の望む所ならんや。
若し二宮其の初めより縣令(けんれい)の屬吏(ぞくり)たらずして獨立(どくりつ)せば何ぞ畢世(ひつせい)艱難誠意を盡(つく)せし仕法徒(いたづ)らに廢棄(はいき)するに至らん。
初めは君の賢意に依つて道の開けんことを望み、今は君の一言(げん)に由て道の廢(はい)せんことを哀しめり。
何ぞ始終(しじゆう)の均(ひと)しからざること此(こ)の如きや。
是れ吾等(われら)の大いに君(きみ)に望みなきことを能(あた)はざる所以(ゆゑん)なり。
君少(すこ)しくこれを慮(おもんぱか)れ。





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最終更新日  2023.12.20 00:00:17


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