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2023.12.21
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カテゴリ: 報徳記を読む
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報徳記

巻之八【1】先生眞岡縣令某の屬吏となる

令(れい)色(いろ)を變(へん)じて曰く、
我が言上(ごんじやう)せんとするは二宮の道を廢(はい)せんとするにはあらず、公料(こうれう)に行はれずして日を送らば、從來(じゆうらい)丹誠施行(しかう)の私領までも共に廢(はい)せんことを憂ひ、小田原に歸(かへ)りて十分行ふことを得ば、二宮心中安くして有益(いうえき)少なからず。
是(これ)を以て此の事を建言(けんげん)せんとする而已(のみ)。
然るに子(し)仕法の道我が一言(げん)に依(よつ)て廢(はい)せんと云ふは何ぞや。
曰く、
君一度(たび)言上せば直ちに道の廢(はい)せんこと疑ひなし。
如何(なん)となれば二宮幼年より萬苦(ばんく)を盡(つく)し行ふ所の仕法良法なるが故に、幕府之を召して臣下となし玉ふにあらずや。

他の才藝(さいげい)あるにあらず。
仕法を外(そと)にして召し玉ふとならば何を以て召し玉ひしや。
果たして仕法の道良善(りやうぜん)なるが爲(ため)なり。
私領遠近皆以て登用し玉ふを悦び、公料(こうれう)に廣行(くわうぎやう)有らんを望むこと久し。
是(こ)れ公料(こうれう)に行はるゝの餘光(よくわう)を仰ぎ、再復の宿志を達せんが爲(ため)なり。
然るに今公料(こうれう)に行ふ可らざるの道也(なり)として舊主(きうしゆ)小田原へ戻し玉はゞ、天下の諸侯誰(たれ)か公料(こうれう)に行はれ難き仕法を行はんや。
假令(たとひ)禁止し玉ふにあらずといへども、公(こう)に倣(なら)ふものは私領の常なり。
必ず忌憚(きたん)する所ありて行ひ得ざるも亦(また)人情の常にあらずや。
加之(しかのみならず)小田原に於ては既に仕法を廢(はい)し、二宮の往返(おうへん)をも絶(ぜつ)せり。
是(こ)の如き小田原に歸(かへ)り、何(いづ)れの處(ところ)に仕法を施すことを得ん。
是れ君(きみ)の明(あきらか)に知る所なり。
假令(たとひ)諸侯公料(こうれう)に行われざるを憂へずして自國(じこく)を興復(こうふく)せんと欲すといへども、二宮何ぞ其(そ)の求めに應(おう)じ以前の如くに仕法を行はんや。
一日も幕府の禄を食(は)み、君臣の義を守るもの、其の道を以て公料(こうれう)の民を安んずることあたはず、身退きて私領に道を行ひ、何(いづ)れの君(きみ)に報ぜんとするや。
是(こ)れ常人だも猶(なほ)爲(なさ)ざる所なり、
況(いは)んや二宮の誠心に於てをや。

是(こ)れ君の一言(ごん)に由(よ)つて、仕法の道永く廢棄(はいき)せんといふ所以(ゆゑん)なり。
非(ひ)邪(か)。
君何ぞ一度(ど)此の道を試み、彌々(いよいよ)其の不可なることを知りて、然る後此の事に及ばざるや。
今一言(ごん)に由つて、私領億萬(おくまん)の人民安堵(あんど)の道を失はんこと某等(それがしら)の見るに忍びざる所なり。
君夫れ之を慮(おもんぱか)れ。
令(れい)曰く、
我之を思はざるに非ず。
屡々(しばしば)仕法の事を以て官府(くわんぷ)に指揮を請ふといへども更に其の沙汰(さた)に至らず、是(これ)を以て發(はつ)することを得ざるなり。

或(あるひと)曰く、
是(これ)も亦(また)我等(われら)の解(げ)せざる所なり。
幕府元より二宮の良法果たして可なるや否やを了(れう)し玉はず。
是を以て君に命じて其の事業を試み玉ふに非ずや。
然るに君之を試みずして其(そ)の指揮を官府(くわんぷ)に請ふ。
官府(くわんぷ)何を以て一々開業の指揮あらんや。
夫(そ)れ試みなるものは何ぞや。
先(ま)づ發(はつ)して試みずんば何を以て其の可(か)不可(ふか)を知らん。
願はくは君の速やかに獨斷(どくだん)發業(はつげふ)して之を試みん事を何を憂ひて未だ試(こゝろ)みざるや。
令(れい)曰く、
官の事獨斷(どくだん)すべからず。
若し事を斷(だん)じて過(あやまち)あらば免(まぬが)るべからず。
我身分(みぶん)をも恐るゝなり。
是(これ)を以て獨斷(どくだん)に出(い)でざる也と。
或(あるひと)一言(げん)を聞き歎じて曰く、
某(それがし)數刻(すうこく)の愚言を呈(てい)するもの他(ほか)なし。
使君(しくん)公(おほやけ)の爲(ため)に身を奉ぜりとするが故なり。
請(こ)ふ辭(じ)せんと云ひ退(しりぞ)きたり。
先生何事をか談(だん)ぜしやと問ふ。
或(あるひと)告(つ)ぐるに此の事を以てす。
先生大いに怒りて曰く、

然して敢(あ)へて争はず論ぜず、從容(しようよう)として空しく日を送るもの豈(あに)我が心ならんや。
已(や)むを得ざるが故なり。
道の興廢(こうはい)元(もと)より令(れい)にあるにあらず。
是を以て我が氣(き)を下して以て其の時を待つ。
然るに汝一度(たび)令(れい)に至つて談論し、剰(あまつさ)へ身分を憂(うれ)ふるの一言(ごん)を發(はつ)するに至るまで詰問(きつもん)せるは何ぞや。
我が心を盡(つく)して困苦するを知らず、一面(めん)の間に是の如きの談論を爲(な)す、何ぞ愚(ぐ)の甚だしきや。
是れ道を開かんとして却(かへ)つて道を塞(ふさ)ぐ者に非ずや 
と大いに之を誡(いま)しむ。
門下皆驚伏(きやうふく)して仰(あほ)ぎ見るものなし。
此の時に當(あた)つては誠に仕法の窮(きゆう)極まれりといふべし。
先生の大量(たいりやう)にあらざれば何を以て此の間(かん)に處(しよ)し再び道を開くことを得んや。
人々其の大量(たいりやう)深慮を感歎せり。
是(これ)より後、縣令(けんれい)も亦(また)省みる所あるか。
又敢(あへ)て此の言を發(はつ)せずと云ふ。





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最終更新日  2023.12.21 00:07:54


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