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サンガンピュールの物語(成長編)8話

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 土曜日。Kと共に市長の元に向かったサンガンピュールは、まず先日の暴言について
 「言い過ぎました。市長である方にあんな暴言を吐いた自分が恥ずかしいです」
 と、謝罪した。次に自分の現況について説明した。
 「私は土浦の町を守るスーパーヒロインとはいえ、おのずと自分の力にも限界があります。空を飛ぶことができませんし、他にもできないことはいろいろあります。そのことのサポートの強化について考えてもらえませんか」

 これに対して市長は、
 「私もあなたの立場を考えずに発言したことを謝ります。申し訳ありません。はて、空を飛べないとは…弱りましたねえ、Kさん」
 とサンガンピュールに謝罪した後にKに問いかけた。唐突に言われたKも困惑していて、
 「市長さん、私にそんなことを言われても困りますよ。私はロボットや、超能力者の研究者じゃありません。私は理系出身でも、それ以前に彼女の実の親でもありません。僕に科学技術に強い友達っていたっけなあ…」
 と答えるしかなかった。

 結局、三者会談はぎこちなく終わった。ただ、市長から、自分の人脈を使って彼女の能力を高めてみよう、という提案があった。サンガンピュールとKは、まさかそんなことはないと思うけど…と半信半疑のまま、市長の提案を受け入れることにした。もし見つかって実際にスーパーパワーを増幅させることができるのならば、それに越したことはない。しかし超能力に精通している科学者が本当に見つかるのだろうか。それが最大の疑問であった。

 三者会談から何週間か経ったある日のこと。サンガンピュールは学校から帰ってきた直後だった。
 「ふう、今日も終わったなあ。でもあの数学の先生は厳しすぎるよ、難しい問題出すしさあ。ああ、イヤんなっちゃうよ!宿題もしなくちゃいけないし!」
 スーパーヒロインとはいえ、普通の人と同じく、いろんな悩みを抱えているものである。学校はもうすぐ期末テストで、彼女もそれに向けての勉強に奔走していた。学校の制服から着替えた後、しばらくは家でゆっくりしていた。そんな中、市長からの留守電連絡が来ていることに気づいたサンガンピュール。留守電を聞いてみると、学校から帰ってきたらすぐ市長に連絡してほしいという旨のメッセージだった。帰宅からやや時間が経っていたものの、早速、市長に電話をかけてみた。
 「はい、こちらは市長室です」
 出てきたのは担当者だった。サンガンピュールはすぐに市長に出てもらうよう申し出た。
 「あっ、すみません。市長さんをお願いできませんか」
 「はい、ただいま」
 しばらくして市長が出てきた。
 「はい、お待たせいたしました。ご用件は?」
 「あっ、あたしです。サンガンピュールです!学校から帰ったらすぐ連絡しろと留守電で言ってましたよね!」
 「おお、あなたですか。はい、大切な連絡があります」
 「大切な連絡と言いますと…」
 「喜んで下さい、遂に見つかったんです!あなたの自由が高まり、そして能力をパワーアップできる道具が開発されたんですよ!」
 「そ、そうですか!やったあーーっ!!」
 と思わず喜ぶサンガンピュール。自分がパワーアップできるのだから喜ぶのも無理はない。これに対して市長は、
 「ううっ、ちょっとうるさいよ。落ち着いてくれ…」
 と冷静になるよう言った。
 「すみません、市長」
 「いえいえ。実はですね、私の友人である大学のエンジニアが協力してくれてですね、君が空を飛べる機械を開発することに成功したんですよ」
 「そうなの!これであたしも助かります!」
 「今度の土曜日に一緒に行きますか」
 「行きます、行きます!」
 「それはよかった。では次の土曜日の午前中に一旦市役所に来て下さい。それとKさんにも伝えておいて下さい」
 「分かりました、おじさんにも伝えておきます。ありがとうございます」
 サンガンピュールはそう言って電話を切った。


 「遂に願ってもみないことが現実のものとなる。町を守るスーパーヒロインなのにずっと飛べないことが悔しかった。でもあたしは遂に空を飛べる。そしてよりいっそう頑張ることができるわ!」
 サンガンピュールはワクワクして、土曜日が待ちきれない気分になった。まるでクリスマスプレゼントが待ちきれない子どものように。その日の夜、彼女は電話での出来事を仕事から帰宅したKに話をした。Kも大変に驚き、そして喜んでくれた。

 ( 第9話 に続く)


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