「のり2・クラシカ」鑑賞日記

「のり2・クラシカ」鑑賞日記

2004年 特選コンサート 一覧


まずは上期から(1月~6月)
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ヴェルディ 
   歌劇「リゴレット」 メト・マチネ公演(13時30分開演)



 M・アルミリャート指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団
演出:O・シェンク
リゴレット:J・ポンズ 
ジルダ:A・ロスト 
マッダレーナ:M・ドマシェンコ
マントヴァ公爵:F・ロバルド 
スパラフチーレ:J・コンスタンチノフ他

2004.02.07 メトロポリタン歌劇場  1階PRIME ORCH Q 111

全編をとうして締まりのあるドラマチックな熱演であった。ポンズのタイトルロールはまさにはまり役で安心して見ていられた。ジルダ役アンドレア・ロストも高音が良く出ていて声量も充分で小柄でジルダ役にぴったり!
マッダレーナ役のドマシェンコも好印象だが四重唱ではMsのせいか他の3人に声をかき消された。F・ロバルドは声量もあり演技も堂々としており美声でもある。今夜の舞台は全体に良い緊張感の漲った素晴らしい出来映え!
O・シェンクの演出や舞台美術も各場面でのセットのリアルな装置の配置など大掛かりで金がかかってそう!good!
アルミリャートの指揮も適切なテンポの運びで観客からも拍手喝采であった。
ブラヴォーの声援の大きい順からJ・ポンズ F・ロバルド A・ロスト コンスタンチノフ ドマシェンコの順 今晩はほぼ全員の(1階の席では)スタンディング・オベーションつきの大声援。205$のチケット代は安かったと思う!
今宵は★★★★☆
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ハイドン 
   オラトリオ「天地創造」

ロリン・マゼール指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団

ソプラノ:B・ボニー
テノール:B・フォード(NYフィル・デヴュー)
バス・バリトン:T・クヴァストホフ
コーラス:ニューヨーク合唱連盟?(New York Choral Artists)

  2004.02.07 エイヴリー・フィッシャーホール 20時開演
1階 PRIME ORCH ROW/BOX R SEAT 8

今回のNYフィルの演奏会は去年より更にステージに近い右寄りの席(サントリー・ホールで云うと1階15列30番あたり)でマゼールの指揮振りもよく見えた。驚きはクヴァストホフで特別に山台の上に置かれた椅子に坐りながらの歌唱で体のハンデをものともせず時おり体を揺らしながらの熱演!よくあれだけの幅のひろーい声がでるのか、なんとも感心する。ボニー 安定した歌いぶり 彼女の実演は初めてですが写真で見るよりずっとチャーミング! NYフィル初登場のフォードは端正な印象。合唱は文句なしの名手揃い、最後のアーメン!まで息切れせず立派の一言。曲の終了とともにものすごいブラヴォーの嵐!そして次第にステージの前の席からスタンディングオベーションがホール全体に拡がる。なるほど、われらのN・Yフィルハーモニックに対する大声援という感じか。
幾たびかのカーテンコールのあと最後にマゼール氏 天地創造のスコアを自分の頭上に高く掲げてEND!勿論オケの技量も素晴らしかったのは云うまでもない。
今宵は★★★★☆
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大友直人指揮
東京交響楽団
ソプラノ:大倉由紀枝
アルト:キャサリン・ウィン=ロジャーズ
テノール:福井 敬
バリトン:福島明也
バス・バリトン:大久保光哉
バス:鹿野由之
合唱:東響コーラス(合唱指揮:辻 裕久)

1・エルガー 
   オラトリオ「使徒たち」日本初演

  2004.03.06 東京芸術劇場大ホール 18時開演  2階C列35番

2時間にわたる長大な曲を見事に聴かせた。オケの技量は勿論だが特筆すべきは東響コーラスだ。この長大な日本初演の曲を何と暗譜で歌い通したばかりではなく見事な説得力でこの合唱団の力量を示したのではないか!
独唱陣も全員、立派な歌唱でそれぞれの役割を見事に果たした。
エルガー使徒たち 早速CDを探してみよう。みなさんにもお奨めです。近、現代のマタイ(ヨハネ)受難曲と云ったらいいか。
今宵は★★★★☆
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サー・コリン・デイヴィス指揮
ロンドン交響楽団


1・ブリテン
   歌劇「ピーター・グライムズ」より4つの海の間奏曲
2・モーツァルト
   ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」
    (Pf)内田光子

3・シベリウス
   交響曲第5番変ホ長調

2004.03.17 サントリー・ホール 19時開演  2階RD4列12番

内田光子のモーツァルト 流れるような自然なタッチ、リズム感 全く無理がない。オケも自然な感じで寄り添う。
アンコールはモーツァルト ソナタK330から第2楽章 完全に内田の世界!
熱い拍手のなか最後はコンマスを引き連れてステージの袖へ消える。内田さんスキップしながらステージを行ったり来たりその様子の何と可愛らしいこと!

さてメインのシベ5ロンドン響の弦楽器群の細やかな旋律の響きが特筆もの!1番から5番までのホルンたちも均一な響きを醸し出してレヴェルが高い。終楽章のコーダでのティンパニのダブル・トレモロも効果的で見事なエンディングで締めた。
とりわけ今夜の聴衆は素晴らしくデーヴィスの棒が振り終わり静止、ゆっくりと棒が下に降りしばしの静寂のあとに拍手が沸き起こると言った具合。そのgood!な雰囲気のままアンコールが2曲、1曲目エルガー「エニグマ」からニムレットこれがまた重厚でしかも気品に満ち溢れた痺れる演奏!2曲目は前回のアンコールと同じチャイコのポロネーズで締める。楽員が引き上げた後マエストロ、デイヴィスだけが鳴り止まぬ拍手に応え再び舞台へ!きょうの聴衆のみなさんロンドン響のいまの実力をご存知のようで客席、ほぼ満員で当日売りもS席のみ若干枚の発売だったらしい。
今宵は★★★★★で文句なし!
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ワーグナー「神々の黄昏」(序幕付全3幕)
     ~楽劇「ニーベルングの指環」第3日



演出:キース・ウオーナー
ジークフリート:クリスチャン・フランツ
ブリュンヒルデ:ガブリエーレ・シュナウト
アルベリヒ:オスカー・ビッレブラント
グンター:ローマン・トレーケル
ハーゲン:長谷川 顕
グートルーネ:蔵野蘭子
ヴァルトラウテ:藤村実穂子
  その他
合唱:新国立劇場合唱団・二期会合唱団

準・メルクル指揮
NHK交響楽団

  2004.03.26 新国立劇場 16時開演  3階3列36番

四年がかりのトーキョー・リングの最終演目です。キース・ウォナーのメルヘン的な演出は相変わらず目を惹いたが特出すべきはメルクル指揮のN響でした。地の底から湧きあがるような低弦群、N響の定期でも聴いたことのないTb,Tubaの力強い咆哮など6時間に及ぶ長大な時間をオケのみなさん飽きさせずに立派に弾ききりました。驚嘆ものです。歌手陣ではCフランツ、Gシュナウトはもちろんのことハーゲン役の長谷川顕、グートルーネ役の蔵野蘭子さんが盛んな拍手を浴びていました。さすがにN響はお疲れからかオケピットから楽員のみなさん即行いなくなりました・・・。本当にみなさん素晴らしかったです。とともに観客も含めてお互いにお疲れさんの一夜でした。
ps:休憩時ロビーで演出のウォーナーさんのサイン会がありましたけど長蛇の列、40分の休憩時間で後ろの人はサインもらえたのかしら?そのくらいの人の列でした。
★★★★☆
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沼尻竜典指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

1・モーツァルト
   交響曲第35番「ハフナー」



2・ツェムリンスキー
   歌劇「フィレンツェの悲劇」
     演奏会形式 字幕付

ビアンカ:(メゾ・ソプラノ)栗林朋子
グイード:(テノール)吉田浩之
シモーネ:(バス・バリトン)ラルフ・ルーカス

 2004.04.16 サントリー・ホール 19時開演 1階17列8番

今晩の演奏会は演奏会形式で上演、勿論、ドイツ語原語、字幕付です。(オスカー・ワイルド原作)1時間にも満たない曲ですが実に物語と音楽がしっかり絡み合い凝縮されてドラマティックな世界を味わった。ストーリーは3人の登場人物のみで商人シモーネとその妻ビアンカ、貴族の息子グイードとの三角関係が心理的に展開され決闘の末、グイードを死にいたらしめ、さー次は妻のビアンカの死だと言う場面でビアンカが「どうしてあなたがそんなに強いと私に話してくれなかったの?」とうっとり表情でシモーネに問うと「なぜおまえがそんなに美しいと俺に話してくれなかったのだ?」とビアンカに答え二人はグイードの遺体を足元にして熱い口づけを交わして幕!(プログラム・ノートから引用)
R・ルーカス 全編の2/3を熱唱、実に張りがあり声がよく透るタフな歌手。栗林朋子 地味なひとと云う感じだが今夜の主役の一人、があまり出番はなく終幕近くでのアリアは存在感を示す。 吉田浩之 前半はオケに声をさえぎられる場面もあったが徐々に安定相変わらずの美声を発揮! 沼尻・日フィルは曲冒頭のファンファーレ風の開始音から始まり物語の不吉感をあらわす8名のホルン、4名のトランペット、そしてテユーバが不安感を増強する。ここのブラス・セクションはいつ聴いてもブリリアント!好きです。交響詩的なメロディが展開してフィナーレの最強音からディミヌエンドしていき曲の終わりを迎え指揮者のタクトがゆっくり下りていき静止、2秒、3秒・・・そして拍手! 今夜の聴衆のみなさんにも感激!雑音も無く音楽に充分浸ることが出来た。こんどは舞台を伴ったステージで観てみたい作品。開演前に沼尻氏のピアノを交えたプレトークがありとてもこ曲の鑑賞の助けになりました。
今宵は★★★★です。
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飯森範親指揮
東京交響楽団

1・モーツァルト
   ピアノ協奏曲第23番
    (ピアノ)ファジル・サイ



2・マーラー
   交響曲第5番嬰ハ短調(最終校訂2002年版)


 2004.04.24 サントリー・ホール 18時開演 1階18列28番

ファジル・サイのモーツァルト まさに彼の本領発揮でファジル・サイ編曲の23番を聴かされた感じでした。実に新鮮でダイナミック・レンジの広い自在なテンポで飯森さんも合わせるのに大変のようでした。盛大なブラヴォーに応えアンコールを2曲
1・モーツァルト キラキラ星変奏曲
2・ファジル・サイ ブラック・アース 
特に自作の曲はピアノの弦を手で抑えてアフリカの原住民が奏する打楽器のような音色を表現、不思議な魅力を感じました。
さてメインのマーラー第5番 今回は2002年改訂版ということでしたが大きな変化はないようでやや音の強弱の変化が際立っていたような感じでした。飯森さんの解釈はオーソドックスな王道を行くような堂々としたもの、オケも隙のない演奏で3楽章ではホルンの主席ハミル氏がコンマスの前まで出てきてのソロ、美音でした。しかし今夜の主役はトランペット主席のマルテイ氏で1楽章の開始主題から朗々と艶のある音色を奏で素晴らしかったです。今夜のオケの配置は対向配置で4楽章でのアダージェットでメロディの対比において最高の効果がでていました。
今宵は★★★★☆
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ベルナルト・ハイティンク指揮
ドレスデン国立歌劇場管弦楽団



1・ブルックナー
   交響曲第8番(ハース版)




 2004.05.21 サントリー・ホール 19時開演 2階C6列19番


まさに一球入魂の演奏でした。
ハイティンクさんの指揮は細かいニュアンスまできっちり指示してオケ全員が必死に応えて曲が進行していきます。1楽章の導入部から2楽章のスケルッオまではエネルギーをしっかりためていき後半の3楽章のアダージョでは弦楽群が実に統一された響きを奏でます。曲が高揚していきシンバルの一発、これが重くなく響くのがまた合ってます。そして最終楽章、金管楽器群をおもいっきり開放してコーダに突進、それぞれの楽器が溶け合って素晴らしい爆発!でした。
ハイティンクさんの最近口にする音の同一性や響きの調和がまさにこの日のコンサートで実感させられました。
ドレスデン管、ハイティンクさん双方ともまさに底力の発揮と「いぶし銀」の響きの存在を示した今夜の演奏会でした。 テンポのずれとかはあったけどさほどの問題ではありません。

割れるような拍手!ハイティンクさん楽員が去っても鳴り止まぬ拍手に応えて舞台に、2度目の登場後はスコアーを掲げてサヨナラを云うように舞台の袖へ去っていった。
(ホルンは9人、うちワーグナーチューバの持ち替え4人)

今夜は文句無しの★★★★★
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ベルナルト・ハイティンク指揮
ドレスデン国立歌劇場管弦楽団


1・ウェーベルン
   「パッサカリア」

2・ハイドン
   交響曲第86番ニ長調



3・ブラームス
   交響曲第1番ハ短調


 2004.05.22 サントリー・ホール 14時開演 1階21列27番


 満員の聴衆を迎えて日本での最終公演、昨夜と同様に盛大な拍手の中、楽員たちが舞台に現れチューニングが始まりそしてハイティンクさん熱い拍手に迎えられての登場 まずパッサカリア 休符を挟んだ8つの音による主題、23の変奏とコーダからなる曲ですが実に鮮明にこの曲の技法を表現、弦楽群も最後尾のプルトまでしっかり弾いているのが伝わってきます。音量のバランスも絶妙。
2曲目のハイドンは初めて聴きましたが一連のパリ交響曲の一つで金管はTp2本のみ、ソナタ形式ですが各楽章ともなかなか手がこんだものでテンポの変化や旋律が変奏されて現れたりと終楽章の力強いフィナーレまで適度な緊張感を保ちつつ終わりました。さっそくブラボーの声がかかります。ここまででもドレスデン管のいぶし銀の響きが遺憾なく発揮され後半のブラ1への期待が嫌が上でも高まります。

さて休憩をはさんでのブラ1 昨日のブル8を超える名演でした。弦も金管、木管楽器もまさにハイティンクさん言われるドレスデン管の各楽器の同一性への修練の過程が発揮された演奏で特にホルンの渋くそれでいて暖かみのある音色が出色でした。
テンポは揺るぎなく変な小細工もない王道を行く堂々のブラ1でした。過去コンサートでかなりのブラ1を聴きましたが今回ほど感動したブラ1は他に知りません。

盛大な拍手に応えてアンコールはブラームス ハンガリー舞曲第一番
昨日同様オケの楽員が去ってもハイティンクさん舞台へ呼ばれ聴衆にスタンディングオベーションの熱い熱い拍手で迎えられた。
きょうも感動の★★★★★!          
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秋山和慶指揮
東京交響楽団


1・ヘンツェ
   楽劇「裏切られた海」午後の曳航から
      (ドイツ語オリジナル版、演奏会形式、字幕付き)




演出:実相寺昭雄    スクリーン絵:中山尚子

黒田房子(ブティックを経営する未亡人):ピア=マリー・ニルソン(ソプラノ)
黒田登(房子の息子、少年グループの三号):ピーター・マーシュ(テノール)
塚崎竜二(大型貨物船「洛陽丸」航海士):クラウディオ・オテッリ(バリトン)
少年グループ(登の仲間たち)
 一号(首領):大久保光哉(バリトン)
 二号:ダニエル・ブベック(C,テナー)
 四号:星野 聡(バリトン)
 五号:黒木 純(バス)
船員仲間:土崎 譲(テノール)

 2004.06.19 サントリー・ホール 18時開演 1階18列28番

 三島由紀夫原作の小説「午後の曳航」をもとにH・W・ヘンツェが台本をドイツ文学のトライヒェルに依頼し作曲、主な登場人物は13歳の少年"登”とその母"房子”彼女の夫となる船員の”竜二”そして首領率いる少年グループ(一号から登を含む五号)
 プロットの軸にあるのは少年”登”にとって海の、男の世界での英雄であったはずの船員”竜二”の母”房子”との結婚と言う”裏切り”と”英雄への幻滅”がある。
 登の母であり女である房子と陸へ上がり房子との安寧な幸せを選ぶ竜二、海の英雄であった竜二を「海を裏切った」罪で仲間たちと処刑しようとする登。

それぞれのモチーフが房子(弦楽器)登と少年たち(ピアノ、打楽器)竜二(木管楽器)と色分けされ更に複数の登場人物のモノローグの重唱ありとめまぐるしく五感を働かさないと就いていけないハードな作品でした。予習の甲斐あってストーリーも理解していたので制約のある狭いスペースの字幕でも充分でした。
又、東京響での演奏会形式での演出では常連の実相寺さんのスクリーンと登場人物へ向けた照明の変化が舞台での転換や人物の心理描写を上手く表現、スクリーンへ投射された中山さんの絵も象徴的で素敵でした。

 さすがにニルソン、マーシュ、オテッリともフランクフルト歌劇場での再演の歌い手であり安定した歌唱でした。日本人では首領役の大久保光哉が伸びのある素晴らしい歌唱を聴かせました。
 秋山さんの精巧なバトンの下、東京響も重厚でエキサイティングな音楽を奏し特に打楽器奏者たちはそれこそ打楽器のリサイタルかと思う程の様々な打楽器を見事に劇的に演奏し印象に残りました。今夜は特にこのオケの機能性の素晴らしさが際立ちました。
 アルブレヒト・読売日響での日本語歌詞よりも今晩のもともとのドイツ語歌詞のほうがやはり音楽に自然に溶け込み良かったとおもいます。
今宵は★★★★☆ ブラヴォーをつぶやきました。
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小林研一郎指揮
藝大フィルハーモニア(東京藝術大学管弦楽研究部)

1・ドヴォルザーク
   ピアノ協奏曲ト短調
    (ピアノ)植田克巳



2・チャイコフスキー
   交響曲第5番ホ短調



  2004.06.25 東京藝術大学奏楽堂 19時開演 1階18列25番


ドヴォルザーク ピアノ協奏曲50分にも及ぶ大曲ですがNAXS盤の演奏で2回ほど聴いただけの未知に近い曲で今回もこの曲は感動には至りませんでした。
ニ管編成で古典形式的な作風で、チェコの民謡メロディが流れたりと思えばピアノの技巧的な箇所ありと様々な様式が絡み合い独奏者にとってはかなりハードな演奏を強いられたのではないでしょうか。私としてはこの曲自体がどうも冗長に聞こえて仕方がなかったです。
芸大教授の植田克巳さんは札幌生まれで芸大院卒業、伊達純、松浦豊明さんに師事77年ロン・テイボーで第2位受賞するなどして内外のオケと共演しています。
植田さん破綻のないテクニックでこの長大な曲を見事に弾ききり流石でした。

後半のチャイコ5番は小林さんの手の内にはいった言わば十八番の曲でおおよその予測をして臨んだのですが見事に今回裏切られました。
1楽章の序奏からClの重苦しい響きをたっぷり込め曲が進行してゆきトウッティの場面ではTpが強烈な連打を奏しTrpが狂ったようにわめき散らす、しかも音程がずれながら・・・しかしHrn群が打ち消すように上手くそれにかぶさると言った感じで進み終結部では木管がVc,Cbの和音と不気味な調和を示す。
2楽章は1番ホルンがやや硬質の音ですが破綻のないクリアーな音色で見事なソロを聴かせました。未だ不気味な雰囲気が漂いながらの3楽章のワルツでほっと一息つくも嵐のような終楽章、
弦楽器群の軋むような旋律に金管群の咆哮、それに輪をかけるようなティンパニの強烈な連打、今度はTpも狂いながらも音程は外さない。小林先生、速めのテンポでぐいぐい行きながらも時おり大胆にテンポを揺らしながらの大団円でフィナーレ!
「運命のテーマ」は結局、人間の勝利ではなく運命の勝利となった今晩の演奏、
こんな面白い5番は初めてでした。今回の演奏は先生の実験的な面もあったのかも知れません。Trpの音程外れも意図的かも知れません(3箇所ほど)
いずれにしろ小林さんと藝大ファミリーだからこそ出来た熱演だったのでしょう。
ソロ・コンサートマスターの玉井菜採さんも良く楽員をひっぱって殊勲ものです。
小林先生「乾坤一擲の演奏でアンコールをやる力は残ってません」とステージで話されましたが、もう充分過ぎるほどでした。
いい意味での裏切られたコンサート、感動した一夜でした。
★★★★☆
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印象に残った下半期(7月~12月)の演奏会から・・・

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ワレリー・ゲルギエフ指揮
東京都交響楽団


1・ストラヴィンスキー
   「詩篇交響曲」

ピアノ:野平一郎、長尾洋史

2・ストラヴィンシキー
   バレエ音楽「結婚」

  ピアノ:野平一郎/木村かをり/児玉桃/長尾洋史

 ソプラノ:ナターリア・コルネーヴァ
 メゾ・ソプラノ:オリガ・サヴォーヴァ
 テノール:ウラジミール・フェレンチャーク
 バス:ゲンナジー・ベズズベンコフ

  東京混声合唱団/栗友会合唱団・大谷研二「合唱指揮」


3・ストラヴィンスキー
   バレエ音楽「春の祭典」


 2004.07.26 サントリー・ホール  19時開演 1階18列27番


 1曲目の詩篇 舞台下手にピアノ2台(野平、長尾)中央前列にチェロ群団
舞台上手にホルン、トランペット、トロンボーン、チューバと金管群が並び
中央の中に木管群、中央後列に混声の合唱団という配置。
 2曲目の結婚は舞台下手からグランド・ピアノ4台(野平、児玉、木村、長尾の順番)で並び壮観な眺め、舞台上手に打楽器群、舞台前列に独唱者が並び合唱団は舞台奥に位置した。
 前半2曲の最大の功労者は合唱団に尽きるでしょう、自信に満ち溢れた力強いハーモニー、見事でした。
「結婚」での4台のピアノと上手に陣取る都響スネア軍団も機敏なリズム感で非のうちどころ無い演奏を展開。
ロシアからの独唱者もそれぞれ気を吐いて熱演、ブラヴォーの声がかかる。
あまりナマでは聴く機会のない作品ですが今夜の2曲とも充分一級品に値する演奏。

さて、メインの「春の祭典」から弦楽器群など都響のフル・メンバーの登場です。
最後まで一瞬の気も抜けない空前絶後の超名演でした。
都響では2年前の夏に佐渡さんとの熱いハルサイもありましたし、ある程度の期待はしておりましたがよもやここまでの名演奏を繰り広げるとは、
いかにゲルギエフ氏の指揮の下とは言え脱帽です。
御大G・ベルティーニ氏指揮でもあまり感激するシーンのなかった都響ですがさすが底力を見せてくれました。
細かいことは抜きにして正にすべてが上手くいった演奏。
とりわけエンディングでの一瞬、大きなタメ(休止)の後の一糸乱れぬ最強奏の爆発、見事でした。N響との名演奏を超えたかも知れません。
”ゲルギエフと都響との見事なコラボレーションの勝利!”と言っておきましょう。 ★★★★★
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アンドレイ・ボレイコ指揮
東京交響楽団


1・ヒナステラ:バレエ組曲「エスタンシア(農場)」
    a開拓者たち b小麦の踊り c牧童 d終曲の踊り、マランボ


2・ロドリーゴ:アランフェス協奏曲
     村冶佳織(ギター)


3・ファリャ:バレエ音楽「恋は魔術師」
     小川明子(メゾ・ソプラノ)


4・ラヴェル:ラ・ヴァルス



2004.07.28  東京芸術劇場大ホール 19時開演 2階C列35番


 ラテン・アメリカ、スペイン、そしてフレンチニュアンスなウィンナワルツ風と
実に内容の濃い楽しいコンサートでした。

エスタンシアの冒頭からホルスト”惑星”風の心沸き立たせるリズムで始まりいきなり打楽器たち8人が大活躍、大谷さん率いる弦楽群も変化の激しいこの曲に見事に美しく合せますし管楽器もマルティさんハミルさん達の名手揃いが華麗にソロを奏でます。
圧巻は終曲のマランボで今の東響の実力を遺憾なく発揮、ただただその迫力に圧倒されました。

2曲目のアランフェスは2001年12月に東響サントリー定期で同じ村治佳織さんで聴いて以来で久しぶりです。今回は芸劇の2階の前列なのでギターの一音一音がくっきり届きました。技術的には大家の風格すら感じられ申し分なしの演奏でした。
舞台衣装も上着が白で下の民族風のスカートが黒と大人の雰囲気で素敵でした。
 アンコールのギター・ソロ、デ・ラ・マーサの「暁の鐘」がまた素晴らしく強く印象に残りました。

3曲目の恋は魔術師はボレイコ/東響のまさに独壇場! リズム感、キレ、曲間へのスムースな移行などノリノリの演奏 Msの小川さんもスペイン風の衣装で決めてました。終曲の時の鐘では舞台真上のパイプオルガンの下手からテューブラーベルが鳴り響き粋な演出でした。

さてお終いのラ・ヴァルスですが文句無しの快演、響きはまるでベルリン・フィルのそれ! 重厚でいて軽やかなニュアンスもきっちり表現 言葉がない!

盛大なブラヴォーと拍手に応えてアンコール
これが何と先ほどのエスタンシアから終曲の踊り、マランボ
曲が始まる前に出番のない楽員が大慌てで舞台の袖へ引っ込む 理由は(ワケは?)
打楽器群、先ほどより音量パワー・アップしてエネルギー全開、負けじと打楽器以外のメンバーもその音量に対抗するものだからスリリングで白熱した大迫力!!
それでもオケ全員、乱れず整然とこなすのだから凄いもんです。出番のない楽員が袖へ逃げた(?)のも納得、でないと聴覚障害になったでしょうね!?
今夜の聴衆は大喜び! 延々と惜しみない拍手が起きていました。
ボレイコさん リズム感が素晴らしくタクトも正確!只者ではなかった。
★★★★★
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飯守泰次郎指揮
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

1・ワーグナー
   歌劇「ローエングリン」
     ~ノーカット完全全曲上演

演出:鈴木敬介

配役
 ハインリヒ王:鹿野由之
 ローエングリン:成田勝美
 エルザ:緑川まり
 フリードリヒ:島村武男
 オルトルート:小山由美
 王の軍令使:成田博之

合唱:洗足学園音楽大学・学園創立80周年記念合唱団
  :二期会合唱団


 2004.09.11 東京文化会館大ホール 14時開演 2階R4列15番

 初めて「ローエングリン」全曲を聴きました。飯守さん、おおよその好演は予想していましたが期待に違わずと言おうか素晴らしいワーグナー”オペラ”を堪能しました。
ステージも薄い幕と照明を巧みに生かし、ローエングリンが登場する白鳥も天上から吊り下ろした白い布で白鳥らしく演出、オーケストラル・オペラと名づけた今回の公演ですが舞台での構成は全く普通のオペラの舞台美術として見ても遜色ない感じでした。去年10月NY「MET」で観たトリスタンのシンプルな舞台設定を思い出したほど鈴木さんの演出は奇を衒わないオーソドックスなもので今公演にふさわしい舞台演出でした。

まづは飯守さんの経験に裏づけされた堂々のワーグナー解釈、揺るぎのない指揮振りで今夜の一番の功労者です。東京シティフィルも見事についていきましたし特にHrnやオーボエ群がいい仕事をしました。

歌手陣ではエルザ役の緑川さん、オルトルート役の小山さんが出色の出来で素晴らしい、特に小山さん、バイロイトでの現役の強みか或いは既にオルトルートはアタリ役である自信か凄みさえ感じる歌唱と演技でした。

男性歌手陣はみなまずまずの出来映えで軍令使役の成田博之さんの張りのある声に注目を覚えました。

合唱陣も洗足学園、二期会のみなさん、抑制されたハーモニーを奏でていました。

会場も満員でみなさん熱心に聴いていたように感じました。
ローエングリンがエルザに別れを告げて舞台から去ってゆくフィナーレでのワーグナーの壮大な音楽が胸をしめつけました。ブラヴォー!です。
日本でも立派なワーグナーを上演できる、そして観客として参加できる喜びを幸せを感謝します。
 終演は18時50分(途中20分の休憩2回あり)でしたが長くは全然感じませんでした。
★★★★★
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小澤征爾指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団

 モーツァルト
   歌劇「フィガロの結婚」


演出美術:ジャン=ピエール・ポネル

アルマヴィーヴァ伯爵:サイモン・キーンリサイド
伯爵夫人:ソイレ・イソコスキ
スザンナ:タチアナ・リズニク→イルディコ・ライモンディに変更
フィガロ:フランツ・ハヴラタ→ヴォルフガング・バンクルに変更
ケルビーノ:アンゲリカ・キルヒシュラーガー
マルチェリーナ:ステラ・グリゴリアン
バジリオ:ミヒャエル・ロイダー
ドン・クルーツィオ:ペーター・イエロシッツ
バルトロ:マウリツィオ・ムラーロ
アントニオ:マルクス・ペルツ
バルバリーナ:ボリ・ケッサイ→イレアナ・トンカに変更
花の娘:エリザ・マリアン


 2004.10.13  NHKホール 18時30分開演 1階C5列6番


先に結論、素晴らしいモーツァルトの持つ天性のコミック・オペラを堪能いたしました。
メインのスザンナ、フィガロともに当初の発表されたメンバーに変更がありましたが流石にウィーン・シュターツオパー人材が豊富です。
ライモンディ、バンクルともに無難にどころか立派に役目を果たしました。

小澤さん登場後の序曲、途中リズムが合わないでアレッと思いましたが舞台の幕があがりフィガロ、スザンナのレチタチーボが始まるとぴったりオケと歌手たちの息が合ってきます。

舞台美術はカラヤン時代からおなじみの装置で違和感無く溶け込めました。
休憩は25分の一度のみで各幕(1と2の間と3と4の間)は舞台転換のみで幕を下ろした外側で演技が続きます。これもお馴染みですね。

歌手の皆さん、それぞれ素晴らしかったです、演技も全くわざとらしくなく、まさに手馴れたお家芸を見せてもらった感じです。かなり動きのあるオペラなので大声を張り上げることもなく自然でコミック・シアターに居るような気にもなります。

今夜の拍手の1番はケルビーノ役のキルヒシュラーガー次いでスザンナ、フィガロ役のお二人、伯爵役のキーンリサイドも2幕にはいって俄然存在感たっぷりのパフォーマンスを示しました。
バルバリーナ役のイレアナ・トンカは02年暮の東響「第九」でのソリストで目にしていましたので少し懐かしい気持ちで聴いていました。

オケ・ピットに近い席なので小澤さんの指揮も指の運びまで見渡せて最高でした。

この巨大なNHKホール何と満員大入りで、カーテンコール小澤さん盛大な拍手を受けて満面笑みを浮かべて満足そうな表情、1階席はスタンディング・オベーションになりました。
★★★★★
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サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


1・ハイドン
   交響曲第86番ニ長調


2・ワーグナー
   楽劇「トリスタンとイゾルデ」より
      前奏曲と愛の死



3・ブラームス
   交響曲第2番ニ長調




 2004.11.07 ミューザ川崎シンフォニーホール 18時開演 2階2LA1列37番


ハイドン、小気味よい響き、春に聴いたドレスデンとはまるで違う曲のように感じさせます。ドレスデンが赤ワインとすればベルリンのそれはキリリと冷やした白ワインのよう。パンチのあるスピーディな曲の運びで1曲目からラトル/BPOのコンビは快調です。

2曲目ワーグナー 素晴らしいです。
”前奏曲”弦が嵐のように襲ってきます。管も素晴らしいブレンドされた響きで調和します。
去年11月に聴いたティーレマン/VPOの官能的な感じをさらに突き抜けた云わばトリスタンの死を冷徹に見据えながらイゾルデのやがて自分にもやってくる死を深く見つめながら、そしてまもなく訪れるであろう死後の世界でトリスタンとの愛が成就されることを確信させるような”愛の死”
苦味の利いた絶妙な赤ワインです。

ブラ2もあっと言うまの快進撃!何回も演奏しているのでしょうね、ラトル氏ベルリン・フィルと随分と息のあったコンビネーションで壮大なフィナーレを築きました。要所のみに指示をだすBPOに全幅の信頼を置いた指揮振りです。
見事な赤ワインの味、ラトル氏、1回だけ飲んだことがあると言う”シャトー・マルゴー1982”の味ということにしておきましょう。
Obのマイアーさん、Hrnのバボラクさん名技を披露、盛んな拍手を受けていました。Tipのゼーガースさん、バチを使い分け絶妙のコントロールでした。

このBPO実に機能的なオケです。特に弦は世界最大の五重奏団と言えるでしょう!

今回の抽選での席はラトル氏の指揮振りが間近で見られベストでしたし、このホール、音が自然に飛び込んでくる柔らかいトーンに感じました。ただ人の流れの動線の設計に不満を感じます、入り口のスペースが狭すぎるし会場内の各ホアイエの広さも狭すぎです。移動するのに人ごみの中を縫うようで大変です。

ところで今回も札幌のハープの弦切れに続きハプニング!
Hrnのハボラクさんの楽譜が譜面台に無かったらしく彼もステージ袖へ行ったり来たりで5分ほど後半のブラ2の開始が遅れ、やっと譜面を持参でバボラク氏ラトル氏と一緒に舞台に登場、爆笑とともに迎えられました。
今日はアンコールはありません。
今宵のBPOも★★★★★
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サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


1・ドヴォルザーク
   交響詩「野ばと」




2・マーラー
   交響曲第5番嬰ハ短調





 2004.11.16 東京文化会館大ホール 19時開演 2階R4列1番


 今日のベルリン・フィルの編成は弦16型、Flx4、ClとObx2
Trpx4,Tbx3,Cbx1、Hrnx6(内ソロx1)の布陣。

 マーラー5番、冒頭のトラの出だしから素晴らしい音色で惹きつける。
弦では特にVla,Vc、Cbがくっきりと統一されたしかもズシーンと感じさせる低音が鳴り響くのが凄い。
これは1昨年にBSで実況されたDVDをもってしてもライブでなければ到底耳に出来ない素晴らしさです。

ラトル氏の解釈はDVD(つまり2年前の就任披露時のライブ)とあまり変化は無くエモーショナルに陥らず各パートの音を鮮やかに描き出します、それに見事に応えるベルリン・フィルのメンバーもすごい。

3楽章のホルン・ソロは2年前と同じでドールさんがステージ前に出てきて演奏、艶のある音色、流麗な技巧にただただ唖然とします。
2年前よりさらに素晴らしい今夜のソロと思いました。

4楽章のアダージョももうベルリンの弦楽器群のうまさに舌を巻きました。
まさにカルテットの拡大バージョンを聴くようです。後方プルトまで見事に奏でる音が飛び込んできます。 ラトル氏、感情に任せずこの楽章は響きを重視か、でも素晴らしいです。

終楽章はもう言う言葉もありません。あっというまにコーダまで行ってしまいました。(テンポが快速と言うことではありません)
今晩のメンバー全員の優れた技術と音楽性がラトル氏のもとで結実、昇華しました。最後のトッティのffffの凄い音、こんな音は聴いたことないです。
やはりベルリン・フィルは別格です。他のオケとの比較は意味がないです。
当分マーラー5番は他のオケではいらない気分です。

東京文化会館が一番BPOの音が合っているように感じました。(サントリーでは未聴) 
割れるような大拍手でした。アンコールはなし(無くて良かった、満腹)

★★★★★++
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マリス・ヤンソンス指揮
ロイヤル・コンセルトヘボー管弦楽団


1・ストラヴィンスキー
   バレエ音楽「ペトルーシカ」



2・チャイコフスキー
   交響曲第6番ロ短調「悲愴」



2004.11.11 NHKホール 19時開演 1階C15列17番

ヤンソンス、RCOとも初めて聴きます。両コンビともFM放送では馴染みですしアムステルダム・コンセルトヘボー時代にはベイヌム指揮のブラームス1番が永らく愛聴盤でした。

さて”ペトルーシュカ”ヤンソンスがこのオケのことをある雑誌で「メンバーがペトルーシュカの物語をよく語っている」と絶賛していますが
まさに今夜の演奏も見事にそれぞれの場面転換を鮮やかに描ききって素晴らしい。
木管、特にフルートのエミリー・バイノン女史が大活躍、またこのオケの打楽器陣がとりわけ素晴らしく、Tipの見事な連打と音色、シンバルの完璧な叩きに驚きました。

休憩後の”悲愴”前半はたんたんと進み2楽章はさすがにコンセルト・ヘボーの暖かみのある弦楽器が美しく、3楽章のコーダではオケが炸裂、思わず拍手をした人もちらほら。
4楽章はヤンソンス氏の考えかあまり深刻にならない解釈なのか、しかし濃淡のはっきりした見事な演奏でした。彼のタクトが静止状態のまましばらく無音の空間が続いた。その後はブラヴォーで盛大な拍手

アンコールは2曲
シベリウス/悲しいワルツ RCOの弦が素晴らしい。木管も極上の響き。
ワーグナ/ローエングリンから第3幕への前奏曲 とにかく巧い。

満足の一夜です。RCOにはVla主席の波木井さん(男性)始めVn,Vlaセクションに5名の日本人女性がおられます。やはり同胞をみとめると何故かうれしいです。

大好きなドレスデンと双璧になりそうなオケです、コンセルト・ヘボー!
★★★★★
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ワレリー・ゲルギエフ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


1・ワーグナー
   歌劇「タンホイザー」
       序曲

2・プフィッツナー
   ヴァイオリン協奏曲ロ短調
     (Vn)ライナー・キュッヒル



3・チャイコフスキー
   交響曲第6番ロ短調「悲愴」




 2004.11.17 サントリー・ホール 19時開演 1階9列28番


 前半の2曲は14型編成、休憩後の悲愴は16型で演奏された。
(前半2曲の感想は割愛します。)

「悲愴」いやはや慟哭とか悲嘆とかの生易しいものではなかった。

ウィーン・フィルの音はあくまで優美で美しい、1楽章から怒涛の行進の3楽章まではゲルギエフ氏の解釈、指揮に特別な仕掛けは感じられない、緩急や音の強弱もさりげなく程度。VPOの演奏も破綻はまったくなく迫力もあり唸らせる。シンバル、テンパニも絶妙の捌きと微妙な音量の変化に見事に対応して素晴らしい。3楽章は打楽器の勝利だ!
しかし、この座席(9列目)でのVPOの音量は凄まじく届いてくるのでうるさすぎる位の音圧を感じる。

4楽章、出だしからVPOの音がかなり変化、それまでの優美な音をかなぐり捨て終楽章のクライマックスまで一直線、ゲルギエフさん、ここへ来てオケをやっといつものせわしない動作でドライヴし始める。
間合いの後の切れ込みの鋭い音の出、高音弦がまるで怒っているように泣きます、やがてタムタムが終わりを告げ
トロンボーンのコラールを経て低弦でピリオド・・・・・。

30秒以上の空白の時間 やがてゲルギエフの手が下ろされ怒涛の拍手が押し寄せた。その空白の間非常な息苦しさを感じました。

目に見えない何か不条理なものへの怒り、或いは迫りくる死神をも蹴散らす恫喝すら感じさせる凄まじい演奏でした。
ヴァイオリン奏者たちの弓はボロボロでした。(少し誇張!?)

4楽章でやっと9列目座席の特典を感じました。恐ろしいまでの響きに満たされました。その時これは慟哭どころかむしろ恫喝というフレーズが聴いてる途中で脳裏に浮かびました。

ゲルギエフさん精魂尽き果てた表情、彼の立場としては鎮魂歌の想いがあったのかも知れませんが。

数多くの悲愴を聴いてきましたが今夜の演奏会、凄すぎです、私も正直疲れました。当然アンコールはありませんでした。
★★★★★+++
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小林研一郎指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団


スメタナ:連作交響詩
   「わが祖国」全曲



 2004.11.22 サントリー・ホール 19時開演 2階C8列36番

格調高い熱気のこもった素晴らしい今夜の演奏会でした。

特に6曲目のブラニークは感動のフィナーレを文字どうり飾りました。
先日もマカールさんの指揮でブラニークを聴きましたが何分NHKホールでの演奏なので響きの違いがありすぎました。

今夜のチェコ・フィル 瑞々しい弦の音色、精緻にブレンドされたブラスの響きがここサントリーでは充分満たされました。

熱狂的な拍手喝采のあと小林さん
”わが祖国の後はアンコールは禁止されてます、皆様お家へ帰ってこの余韻を楽しんでください。2年前のプラハの春での演奏よりも素晴らしい今夜の演奏、会場のみなさんの熱い声援に支えられて・・・・
のトークがあり続けてチェコ・フィルの楽員たちに今一度の拍手をのコメントに今夜の聴衆も盛大なスタンディング(珍しく1,2階さらにP席まで)
オーベーションで応えました。

惜しむらくは心無い聴衆の一人が5曲目終了時点でしつこい拍手を続けて感興を削いだ。
本来5曲目から6番目の終曲へはインターバルを措かず続けられます、
小林さんも両手で制止しながらブラニークへ入りましたが(怒!)

そうそう休憩時インテルメッツオでワイン飲んでたらチェコの首席指揮者のマカールさんがビールを飲んでました。小林さんもこのオケの常任客演指揮者なので彼の演奏は注目でしょうね。
ところでマカールさんサントリーモルツはお気に召したのか気にかかるところです、チェコは美味しいビールの産地ですから。
★★★★★
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パーヴォ・ヤルヴィ指揮
東京交響楽団


1・ベートーヴェン
   交響曲第8番ヘ長調


2・リスト
   ピアノ協奏曲第1番変ホ長調
     (ピアノ)ボリス・ベレゾフスキー



3・R・シュトラウス
   交響詩「英雄の生涯」(Vnソロ)大谷康子



 2004.11.27  サントリー・ホール 18時開演 1階18列28番


 ベートーヴェンの8番快速テンポで軽快なリズム感が心地よい。
ヤルヴィ/東響、最後まで弾けるばかりの躍動感と音の強弱の変化を見事に奏して素晴らしい演奏。

 ベレゾフスキーをピアノ独奏に迎えてのリストの1番 これもオケの見事なサポートに支えられ技巧の限りを尽くしての超名演でした。
アンコールは3楽章後半からを再び演奏、最速の猛スピードで駆け抜けフィナーレ 本当にびっくりのテクニックです。
前回の共演でもラフマニノフ2番、3楽章をアンコールで再び演奏拍手喝采でした。

休憩を挟んでの英雄の生涯 東響フルメンバーがステージに乗りました。
出だしの分厚い低弦そして木管金管が切れよく絡みます。
とても精度の高い演奏で見事と言うほかありません。
ヤルヴィさん、小柄な体を駆使してスケール豊かな解釈でした。
終曲は鳴り物入りの迫力に満ちたエンディングでフィナーレ。
コンミスの大谷さんのヴァイオリン・ソロが表情豊かで特筆もの。

アンコールにヨゼフ・シュトラウスのワルツ「うわごと」これも立派な演奏。このコンビに今後も大いに期待したいですが来シーズンは残念ながらN響定期に登場するだけで東響への登場はおあずけのようです。
★★★★★
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シャルル・デュトワ指揮
NHK交響楽団


1・リムスキー・コルサコフ
   序曲「ロシアの復活祭」作品36



2・ストラヴィンスキー
   交響曲ハ長



3・チャイコフスキー
   ピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23
     ピアノ:上原彩子



2004.12.4 NHKホール 15時開演 2階C15列24番


1曲目のロシア復活祭からN響、快調な出だしです。デュトワさんが振るとオケの音色が変わるような気がします。Tbの朗々たる響きなど流石です。

2曲目ハ長は正直、途中から聴くのが辛くなりました。がN響の演奏は特に弦は立派な演奏だったと思います。

さて本日のメインに置かれた上原さんをゲストに迎えたチャイコフスキー
予想をはるかに超えた名演でした。
ダイナミックさと繊細なリリシズムを見事に表現しました。
全体にかなり早めのテンポでしたが乱れも無くN響オケと真っ向勝負、デュトワさん さすがに見事なサポートです。

上原さん特に2楽章の陰影に富んだリズム・タッチなどまるで堂々とした弾きっぷり、そして終楽章のコーダに向けての超快速テンポは圧巻、すでに大家の片鱗をうかがわせる演奏。
★★★★★
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end









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