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<<第32章「子供達」
第33章 「教育 I 」
さて、子供達は当初は近所の公立の小学校に通っていたが、勉強内容を聞いてみるといかにもお粗末である。
ここで誤解のないように書いておくが、私は決して教育パパではない。
自分の子供の頃をよくわきまえているから、一度も自分の子供達に「勉強しろ」と言った事はない。
ただ、宿題だけは忘れずにやらせたが。

一方ワイフは幼稚園から大学まで私立であった。
彼女も決して教育ママではなかったが、NZの小学校の教育程度には不満を持っていたのは確かである。
事業もどうやら軌道に乗り、付き合いの幅も広がり段段とNZの学校教育の実態が判ってくる。

小学校に通い始めて間も無く、子供達は日本語補習校にも通い始める。
これは、日本語を忘れないようにとの親心からであったが、子供達には結構負担であった事が後で判る。
補習校は週二回午後から夜まで。
確かに小学生にとっては負担だが、日本で塾に通う同年代の子供の事を思えば楽なはずであったが、それは親の考えであって子供にとっては違っていた。


一方現地校では、何とか英語が判るようになってくると、俄然算数が良くできるようになったらしい。
特に長男は算数が好きでもあったし、補習校でも算数だけはそれなりに勉強していたらしく、現地校ではすっかり先生のお気に入りになってしまう。
これはNZの現地校だけなのかもしれないが、算数が良くできる子 イコール 頭の良い子 みたいな感覚がある。
笑ってしまうが、事実である。

しかし、補習校では一向に国語(日本語)の進歩がない。
日本から来られた先生も色々努力されてなんとか子供達の日本語の能力を引き上げようとしてくださるが、皆目駄目である。
この理由は後になって判明するのだが、ここは先へと話を進めよう。

当時の補習校には二つの学部が存在した。
一つは駐在員子弟の為の補習部。 
補習部は、「日本に帰国する事を前提とした」子弟が通う学部。

そしてもう一つが永住者及び国際結婚した親の子弟が通う国際部である。
国際部は、「日本語を忘れないようにするため」の学部。
当初補習校は一つであったが、ニーズの違いからこのように学部を二つ設けて別々のカリキュラムで子供達に勉強を教えていた。

実はこの補習校にまつわる話だけで本が一冊書けるくらいの出来事があるのだが、あえて此処ではそれには詳しく触れないで置こう。
後年私はこの補習校国際部の理事と理事長を2期2年務めた事により、海外での日本語教育の実態を目の当たりにし、また政府の無理解、無政策なども肌で実感する。
また同じ日本人同士の差別なども目の当たりにする。
全く醜い話ではあるが、海外移住の見えざる部分、暗闇の部分である。

海外生活における子供の日本語教育については改めて別の章で触れよう思っているので、此処では書かない。

色々と問題を抱えた日本語補習校であったが、通っている子供達は同年代の子供達と一緒に過ごせる時間が持てて非常に楽しかったようである。
二人とも「補習校に行くよ」と言っても「嫌だ」とは一度も言わなかった。

少し脱線してしまったが、話を元に戻そう。
そろそろNZに移住してから4年が経とうとしていた頃から、どうも私立の学校に入れた方がよさそうだという事が判ってくる。
勉強の面もさる事ながら、同級生間のネットワーク、或いは卒業後のネットワークなども私立の方が断然有利な事が判ってくる。
ワイフは元々ずっと私立で通してきたので、私立の良さも悪さも両面ともによく知っていたが、私は公立のみなので全くそういう面では素人である。

私立校の方が設備が良いのも事実だし、大学への進学率が高いのも事実である。
ただ学費の面では一人当たり年間1万ドル以上の出費となる。
我が家の場合は年子であるから2倍の2万ドル!
当時はそれくらいの余裕はあったが、果たしてそこまでする必要があるのかどうか?
そう疑問に思った事も事実である。

まあ、一回見学してみようと言う事になり、当時男子校(カレッジ)でKings Collegeと名声を二分するSt. Kentigern collegeを訪れてみる。
わかりやすい例えをすると、Kings が慶応、St .Kentigernは早稲田になるだろうか。
両校とも学費、教育内容、卒業後のネットワークなどそうそうたるものがある。
何よりもこの学校に入れる為に、子供が生まれた時から登録しておく必要があるといわれているのである。
本当かよ!?


見学してみれば確か素晴らしい環境である。
校舎も立派だし、設備も充実している。
グランド広さなど日本の大学のグランドよりはるかに広いのである。
土曜日はスポーツデーであるが、この学校のグランドでサッカーとラグビーの試合が同時に10試合以上出来る広さがあると言えばご理解いただけるだろうか?
それも全面芝である。

川沿いに広がるエリアでは、倉庫かと見間違うほどに大きなRowing Shedがあり、たくましい体つきをした生徒が肩にボートを乗せて運んでいる。
照明つきのテニスコートは勿論、ホッケーコートまで設備されている。
さすが私立、桁違いの設備である。

ワイフの強い勧めもあり、駄目元でとにかく順番待ちの登録だけをしておく事にする。
誕生と同時に登録するくらいなのだから「これはNo chanceだよ。」と話し合っていたのだが。


<<第32章「子供達」



第34章「教育II」>>






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Last updated  2007.06.16 14:21:19
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