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ムスカ大佐@ Re:柚木麻子さん『ランチのアッコちゃん』(11/24) 古事記こそ究極の文学とは思わんのかね。
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曽根スウプ

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2014.11.24
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カテゴリ: 読書感想
買って大外れだったら哀しいので、「新刊出されたら必ず買う!」と決めている作家様の作品以外は、とりあえず図書館で借りてその後買うかどうか決めることにしています。

『ランチのアッコちゃん』は人気作品だったので図書館で順番が回ってくるのにとても時間がかかり「そういや予約してたな・・・」と思ってしまいましたが・・・買い、かもしれないな。


ランチ.jpg


収録作は、表題作の他に、その続編の『夜食のアッコちゃん』、続編ではなくまったくの別の話だけれどチラッと「アッコちゃん」が顔を出す『夜の大捜査先生』『ゆとりのビアガーデン』の四編です。
「四編全部アッコちゃんの話が良かった」という声が多いですが、私もそれを期待していたので少しがっかりしました。『ゆとりのビアガーデン』は良い話でしたが。

広告には確か、仕事もプライベートも上手くいかなくて落ち込んでいたOLが女性上司(アッコちゃん)に「一週間ランチを取り替えない?」と言われて、わけのわからないまま指示に従っている内に元気を取り戻す話とか何とか書いてあった気がします。ほっこり温かくなる話、とも。

そんな文を読んでまず想像したのは、美しく聡明で女らしい気遣いが出来て仕事もバッチリこなす上司のアッコちゃん(20代後半か30歳くらい)が後輩を美味しいランチで優しく元気づける話。

ところが出て来たアッコ女史こと黒川敦子部長は、がっしりとした肩幅に身長173cm、つやつやの黒いおかっぱ頭が某大物女性歌手を思わせる45歳独身で、バリバリ仕事をこなし、話す時はにこりともせず、無駄話は嫌い、といった御仁。
格好いいけど、「アッコちゃん」と呼びたくなるようなふんわりしたイメージは皆無。
そうか、「アッコちゃん」は「ひみつの」ではなく「おまかせ!」の方だったのね^_^;


仕事が出来るわけでも社交的なわけでもなく、とりたてて美人でもなく、四年間付き合った恋人に、お弁当を作っては「重い」と言われ、「お前ってNOと言えないというよりはYESしか言えないんじゃねぇの?」とも言われてフラれてしまい、「なんで生きてるんだろう、私って」と落ち込んでいたOL三智子さんは、お弁当を作って持ってきたものの食欲も無く食べずに持って帰ろうとしていたところ、ランチを食べ損ねた上司のアッコ女史から「(食べずに持って帰る)なら、私が食べてもいい?」と言われ驚きますが、それを食べたアッコ女史から「こんなに美味しいお弁当食べたことない」「来週一週間、私のお弁当を作ってくれない?」「もちろん御礼はするわよ。私の一週間のランチと取り替えっこするの」と持ちかけられて度肝を抜かれます。

「NOが云えない」三智子さんは、云われた通りせっせとお弁当を作ってアッコ女史に渡しますが、上司が食すのだからと張り切って作った凝った弁当をアッコ女史は喜びません。
「最初に貰ったような素朴な和食がいいの」と仏頂面で受け取るアッコ女史にまたイメージが狂います。
「こんなに張り切って貰っちゃってなんか悪いわ。でもありがとう」と優しく微笑む女性上司を思い浮かべるのはやめた方が良いようで・・・う~~ん、どうなるんだろう、とページをめくります。

どちらかといえば鈍くさい三智子さん(共感を覚えます)、アッコ女史の優しいとは云い難い態度におろおろしながら、とりあえず渡された千円の入ったポチ袋と店の地図を手に、アッコ女史が月曜日に行くという行きつけの店に向かいます。
そこはカレーの専門店でした。
アッコ女史から言われていたらしく、三智子さんはそこのマスターに歓迎されます。
外食なんてお金の無駄、カレーくらい作れるし・・・と思いつつ、勧められるままにカレーを口にした三智子さんは、その美味しさに驚き、マスターに聞かされる仕事中とはまるでイメージの違うアッコ女史の素顔に驚き、常連客の中にはアッコ女史のファンまでいるらしいことに驚きます。

翌日、昨日のカレーの御礼を言う三智子さんにアッコ女史は、やはりにこりともせず毒舌を浴びせ、肩を落とす三智子さんにジョギングウェアを渡して、火曜日の行きつけの店(遠い)に向かってさっさと走れと云い放ちます。
失恋したばかりで何もしたくないのに、なんでこんなことしてるんだろうと思いながら息を切らして走る三智子さん(素直)が見つけたのはワゴン車の移動販売店。
陽気な黒人女性店主から「話は聞いている」とスムージーを提供された三智子さんは、ランニングで疲れた躰に沁み入る味に救われた思いがしました。

水曜日はランチのついでにお使いも頼まれ、思いがけない素敵な出逢いがあり。

木曜日、だんだんワクワクしてきて「今日はどんなお店なんですか?」と話しかける三智子さんにアッコ女史は露骨に迷惑そうな顔をします。やはりここで「うふふ、今日はとっておきよ」などとは言いません。
愛想なく「今日は屋上に行きなさい。お金は必要ないから」と云われて、行ってみると・・・

金曜日には月曜日に行ったカレー店の店番をする破目になり。
アッコ女史に振り回されたりお店の人達や社長と交流する内、いつしか三智子さんは生きる力を取り戻して、仕事にも意欲を燃やし始めたのでした。


読み進めるうちに、アッコ女史の仏頂面に隠された優しさ可愛らしさ強さ、女らしい細やかな気配り、飾り立てていないだけで美人なこと、あとモテモテなことが見えてきて、どんどん彼女が好きになっていきます。
擦り寄る三智子さんをしっしっと追い払うところもアッコさんだよなーと好ましく思えたり。

アッコ女史は私の好きな「漢前な女性」です。
媚びないし群れないし悪い意味の女らしさは微塵も持っていないし男勝りだけど、いい意味での女らしさはしっかり持っている女傑。
ちょっとタイプは違うけど、他に思い浮かぶ「漢前でかついい意味で女らしい女傑」キャラといえば、北村薫さんの『ベッキーさんとお嬢様シリーズ』の、ベッキーさんこと別宮女史でしょうか。
お嬢様のピンチにさっと現れ「お嬢様、別宮がついております」なんて痺れるじゃないか。惚れそう。
あとは、ひぐちアサさんの漫画『おおきく振りかぶって』のモモカンこと百枝まりあ監督かな。
漢前な女傑って決して男っぽいとかがさつとかじゃなくて、女らしさも兼ね備えてるんだよなー。憧れる。

アッコ女史を慕う三智子さんも、辛いことがあって落ち込んでも誰かのせいにしないし素直で一所懸命で見ていて気持ちのいい女性です。
ただ三智子さんの元彼はどうかと思わないでもない。心が離れるのは仕方ないけど、それを「重い」だの「お前って・・・」だの、相手のせいみたいに文句云って終わりにするのは頂けない。一時期は好き合った仲なんだし、そこは黙っておくか自分のせいにするか、どちらも悪かった的なこと言って気持ち良く別れようよ。
・・・と思うのは所詮きれいごとなのかな。でも三智子さんはフラれて落ち込みはしても元彼のことは一切責めてないのに。


「いい人しか出てこない」「トントン拍子に上手くいき、最後はみんな幸せな大団円」な話は、いくらフィクションとはいえ、わざとらしい。
そう思ってその手の話は敬遠してきましたが・・・書き方が絶妙なのか、作者様のお人柄なのか、読んでいて気持ちがいいし、登場人物の幸せを祈らずにはいられなくなります。読後感もいい。
ちょっと「上手くいき過ぎじゃないのかな」と思わないでもないけど、それもいいんじゃないかと思えてきます。
押し付けがましさが無いからかなー。「優しさの押し売り」的なところが一切無いし。
(最近の漫画もそう思えるのが増えてきたしなー。『ハイキュー!』とか『この音とまれ!』とか)


そして料理の描写が素敵に美味しそう!
「食べることは生きること」アッコ女史の台詞になるほどと思わされます。この場合の「食べること」とは勿論「きっちりちゃんとした食事をすること」。
「食べたくなる」、そして「作りたくなる」「食べさせたくなる」話です。



この続編や収録作についても書きたかったのですが、力尽きたんでこの辺で。
作品の良さを上手く紹介しきれないなー。







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最終更新日  2014.11.26 00:13:01
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Re:柚木麻子さん『ランチのアッコちゃん』(11/24)  
ムスカ大佐 さん

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