或る日の“ことのは”2

或る日の“ことのは”2

2015.11.30
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目下、可愛い孫に夢中な両親の話を聞きながら、

私(孫)にとっての祖母についての思い出を、つらつらと話した。

可愛いけど、孫の相手は疲れるよねー、

孫は、自分が大人の相手を「してあげている」つもりになってるからねー。





現在、私の姪っ子には「おじいちゃん」と「おばあちゃん」が、二人ずつ居るが、

物心付く頃の私には、母方の「おばあちゃん」が一人、だった。

唯一無二の「おばあちゃん」が大好きだった。

身内の事だが、孫から見ても品のある『おばあちゃんらしいおばあちゃん』で、

私の父などは、祖母が故人になった今でも

「あんな綺麗な『ご婦人』は見たことが無かった」と手放しで絶賛する。


遠くに住んでいたので、年に一度会うか会わないかだったが、

一度だけ、関西に遊びに来てくれたことがある。

食事の支度をしている母、ぽつんとちゃぶ台の前に座る祖母を見て、

子供心に気を遣い、退屈させてはならないという妙な責任感から、

私は、祖母に、遊ぼう遊ぼうと纏わり付いた。

おはじき等を教わったりして遊んでいたが、

暫くすると、祖母は子供の相手に疲れたのだろう、

「あっち行って遊んでらっしゃい」と突き放すように言い、当時の私を至極ガッカリさせた。


・・・


「他意は無いんだよ、あの人は思ったことをそのまま口にしただけだ」と父は言った。

「判ってるよ。 子供の相手が相当疲れるって事も解るしね」と私。

「お祖母ちゃんねえ、」母が何かを思い出したように言った。

「若い頃、その物言いから、周囲に『辻斬り』って呼ばれていたらしいわ」


はーーーーーーッ!?


仰天した。 ・・・つ、辻斬りって、あの、出会い頭にがちょーんというあの、・・・

「若い頃よ? 奉公先でそう呼ばれたんだって。」

初耳だった。

あの綺麗な祖母が、まさか「辻斬り」だなどという物騒な二つ名を戴いていた頃があったとは。

どれだけ切れ味のいい言葉を繰り出していたのだろうか。 



祖母が亡くなって、もう大分経つ。

遠い所で、子供の私には判らない嫁姑問題による葛藤もあったようだし、

晩年は、必ずしも全てが上手くいっていた訳ではなかったようだ。

だが、関東大震災と大戦を潜り抜け、

家を建てて四人の子供を育てた。

当時では当たり前かもしれないが、昔の人の強さは、現代では計り知れない。

私にとって、祖母は近い人にはなり得なかったが、

ひょんな事で『辻斬り』などという呼び名を聞いてしまったことで、

「昔の人」で括られていた故人である祖母が、少し身近に寄ってくれたような気がした。







それにしても、・・・だ・・・。

どうして、その、『辻斬り』な気性が私に遺伝してくれなかったんだろうか。

・・・かえすがえすも、惜しい。

・・・そして、心底羨ましい。










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最終更新日  2015.12.01 01:44:29
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