猫旅に出る ~ある生物系学芸員の日記~
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今日は輪読の発表の予定だったが、フィールドに出かけてしまった人が多いので延期になった。まだ、半分くらいしか準備できてなかったのでラッキーだった。でも、決まった期日までに準備が出来なかったのが情けない…今日やる予定だったのは‘VARIATION'の8章。内容はカナリゼーション(Canalization)。そのままカタカナで「カナリゼーション」または「運河化」と訳す。「カナリゼーション」と言うのは、生物の変異を生み出すメカニズムの一つ。環境が変化しても遺伝子の発現パターンが変わらないために、「表現型」が変化するのが妨げられるというもの(僕の理解する限りでは)。これと逆のメカニズムが表現型の可塑性。つまり、環境が変わると表現型が変化するということ(元の環境に戻れば表現型がもとにもどる)。トノサマバッタの群生相と孤独相は表現型の可塑性の例に当たるかもしれない。ふつうトノサマバッタは、胸が緑色、前翅と腹は褐色で単独生活をしている。これを孤独相という。ところが、密度が高くなってそれが2~3世代続くと、黒色で相対的に翅が長く脚が短い群生相のバッタが生ずる。これが表現型の可塑性というものだとすると、バッタの密度が高くなっても緑色のまま変化しないことを「カナリゼーション」が起きたということになる。生物学をやっている人でも、この概念は分かりづらいと思う。(僕の理解が不十分で説明が悪いかもしれないが…)僕が担当する予定の8章は「カナリゼーション」について長々と20ページほど書かれている。だいぶ前から準備を始めたはずなのに、なかなか内容が頭に入らず苦戦している。果たして、来週までに残りの半分を終わらせられるだろうか?先週輪読の担当だったH先輩がドタキャンしたから、僕の発表は再来週かもしれない。とは言っても、早く片づけてしまいたい仕事である。
2007.06.28
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