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タバコを吸う習慣がある。
吸うと言ってもたいした量じゃなく、思い出したように一箱買って、
吸い終わるとまたしばらく手に取らない日々が続く。その程度だ。
そのとき考えていることが煮え詰まって、
駄目だもう一歩も進めないって思ったとき。
数人で楽しく談笑している時に突然、
その距離感が息苦しくなって目が眩みそうになったとき。
一時的に席を立つ口実として、タバコはとても使い勝手がいい。
タバコを持って吸える場所に行き、箱から1本取り出して、
フィルタのところを軽く吹いてから咥え、
心もち首をかしげるようにして火を点ける。
その一連の動作をこなすことが、わたしにとっての喫煙の意義なのかもしれない。
実際、1本吸い終わる前に気が散って、半分ぐらいで捨ててしまう。
そして次の1本に火を点ける。またすぐに捨ててしまう。
その繰り返し。
だから結構速いペースで一箱なくなるときもある。
その昔、恋人がライターをくれた。
旅行先で買ったという、かわいらしいキティちゃんか何か。
全然わたしの趣味でもないし、実際、
わたしの持ち物の中でそれは明らかに浮いていた。
わたしの普段の様子を見ていれば、
キティちゃんを持つ趣味がないことに気づいてくれてもよさそうなのに。
でも嬉しかった。肌身離さず持ち歩いた。
使い捨てだったけど、オイルがなくなっても大切に持っていた。
・・・あの時まで。
あの時、あの人がくれたものをまとめて窓から放り投げた時まで。
衝動に駆られて起こした行動だったけど、
放り投げたものたちを拾い集めて燃えないゴミとして捨てるという
現実的な後始末をしているうちに悲しくなった。
タバコに火を点けるとき、そのことも思い出す。
あの頃はそれもいちいち辛かったけど、今はもうそれもこれも昔の話だ。
あの人と会わなくなってもう何年も経つし、この先二度と会うこともないのだし。
そんな思い出に、わたしはもう煩わされたりしない。
そう決めたんだ。