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November 8, 2015
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カテゴリ: ヒーロー映画

 「ワハハハハハ・・・」高笑いとともに現れ、高笑いとともに消える、どくろ面のスーパーヒーロー、それが「黄金バット」だ。

 「黄金バット」は、昭和初期に紙芝居のスーパーヒーローとして登場し大変人気を博したと、昭和史の一風物として紹介されることがある。

 そのアナログヒーローが、昭和も40年代になって、実写映画とアニメ、マンガ雑誌で大々的に復活した。もともとテレビがない時代の国民的ヒーローだったわけだからね、新しいメディアにのせてヒットを目論んだのだろうね。

 映画版は、東映作品として1966年(昭和41年)12月21日に公開された。この当時の映画興行は二本立てだった。『黄金バット』の併映は『怪竜大決戦』。冬休みの子供向け(ジュブナイル)ラインナップやね。当方は、封切り当日にこの二本立てを見てます。そんな体験によって、当方の人格が決まっていったところもある。

 テレビアニメは、1967年(昭和42年)〜68年(昭和43年)まで全52話が放送された。
 マンガ雑誌も、1966年〜68年にかけて連載された。

 このメディアミックス展開は、アニメを中心としていた。そういう点では、トップバッターを切った映画版は、メインのテレビアニメを景気づける役目だったのだね。

 アニメも見たし、マンガも読んだけれど、なんといっても印象深いのは映画版だ(これは趣味のちがいであるところが大きいのだが)。

 まず、配役が凄い。
 映画『黄金バット』の主演は、千葉真一なのだぁ。世界のアクションスター、サニー・チバだよ。
 じつは千葉さん、若い頃にテレビのモノクロスーパーヒーロー番組(東映作品)『新七色仮面(1960)』で七色仮面/蘭光太郎を演じたキャリアがある。続いて『アラーの使者(1960)』でも変身ヒーロー(鳴海五郎/アラーの使者)をやっている。

 なんと映画においても『宇宙快速船(1961)』で立花真一/アイアンシャープに扮している。また、スーパーヒーローではないが、日米合作特撮映画『海底大戦争(1966)』にも主演している。
 この頃は、変身後のスーパーヒーローを演じるスーツアクターはいなかった。素顔だけでなく、仮面をつけてのスーパーヒーローも千葉さんご本人が演じていらっしゃるんですよ。元オリンピックを目指す体操選手だっただけあって、スーパーヒーローとしての動きは軽快そのもの。スーツアクターいらずで、バック転とかやっちゃうんだから。
 当方にとって千葉真一は、日本を代表する映画スターというより、やっぱり七色仮面であり、アイアンシャープであるわけですよ。だから、映画版『黄金バット』に出ていただいているのも、とてもありがたい。
 いってみれば、戦隊・特撮ものからスターになっていった人々の元祖をたどれば千葉真一なわけだ。
 なお、千葉真一が黄金バットを演じているのではない。国連秘密機関パールのヤマトネ博士役である。
 黄金バットは、変身ヒーローではなく、最初から黄金バット、正体も黄金バットだ。

 つぎが山川ワタルだ。山川ワタルは、冒険テレビドラマ『少年ケニア(1961〜62)で主役のワタル少年を演じている。この『少年ケニア』以来久しく顔を見なかった山川ワタルが映画版『黄金バット』でスクリーンに登場したときは「あ!」と驚き、喜んだものだ。その後また見なくなったけど。

 さらに、高見エミリー。高見エミリーは、このあと『仮面ライダー(1971〜1973)』にライダーガールズとして出演する。映画版『黄金バット』の時期は、雑誌少女フレンドの表紙を飾っていた。なんと彼女は、リカちゃん人形のモデルなのだ。『黄金バット』に出演しているときは小学校高学年くらいだが、ほんとに生きたリカちゃん人形に見えます。

 もう一人、中田博久も出ている。この人は、テレビ番組の『怪人四十面相(1966)』で明智小五郎、『キャプテン・ウルトラ(1967)』で本郷武彦/キャプテン・ウルトラなど主役のヒーローを演じている。かと思えば『仮面ライダーアマゾン』のゼロ大帝、『超電子バイオマン』のメイスンといった悪役でも印象に残っている。

 山川、高見、中田は、国連秘密機関パールの隊員役である。

 このように、特撮ファンにとっては役者を見ているだけでもなんだか嬉しくなる映画だ。

 映画版『黄金バット』のストーリーはこうだ。
 宇宙怪人ナゾーが惑星イカルスの軌道を変えて、地球にぶつけようとしている。
 イカルスを避けるには、パールが開発した超破壊光線砲で粉砕するしかない。
 しかし、超破壊光線砲がナゾーに奪われてしまう。
 地球の危機に蘇った黄金バットは、パールとともにナゾーに挑み、イカルスから地球を守るべく大活躍する。

 上映時間が73分ということで、展開は早い。
 天体望遠鏡を覘いていてイカルスの異変に気づいたアキラ少年(山川ワタル)は、黒衣の男達に拉致される。彼ら日本版MIBは、清水隊員(中田博久)他のパール隊員だったのだ。じつはアキラ少年は、天文学などに詳しいので、パールに隊員として招かれたのだった。
 てなわけで、訓練等は軽く免除され、そのとき、その瞬間からアキラ少年はパール隊員として力を発揮するのだった。
 当時小学生だった当方は、自分も正義の秘密機関がスカウトしてくれないかなあと思ったものだ。何の取り柄があるって?いつでもどこでも、授業中でも妄想空想にふけることができるのだが、そんな能力は評価されないか。

 私服姿のアキラ少年が履いている靴がバッシュ(バスケットシューズ)なんだよ。あの当時、マンガに登場する学園ヒーローとかはみんな例外なくバッシュを履いていた。履き口がくるぶしの上までくる深いやつ。当方も履いていた。あきらかにヒーローになりきっていた。

 このパール隊員がもっている光線銃が、シルバーのルガーP08もどき、サイレンサー付きなのだ。これは、たまたま当方ももっていた。多分、おもちゃ屋さんで売っていたものを小道具として使ったのだろう。
 余談だが、テレビ番組『高速エスパー(1967〜1968)』のエスパー銃は、ニューナンブというおもちゃのピストルを装飾したもので、こっちも原型をもってた。自慢。

 さてさて、件の超破壊光線砲は、特殊なレンズがなければ威力を発揮できない。そのレンズを黄金バットがもっているのだった。
 そんなエピソードがあったものだから、当方は理科の授業で以下のようなやりとりをした。
 先生が「レンズは、どんなところに使われていますか」と質問した。それに対して友達は「カメラです」「望遠鏡です」「虫眼鏡です」などと答えた。そして答が出尽くしたところで、すかさず手を挙げて「超破壊光線砲です。超破壊光線砲は特殊レンズがなければ使えません」と声高に発言したのだ。教室中に「?」が漂ったが、先生は黒板に超破壊光線砲と書き加えてくれた。

 映画会社東映の歴史を見たとき、「冒険(連続)活劇映画」とよばれるジャンルがあった。『新諸国物語 笛吹童子(1954)』などの時代活劇、そして『少年探偵団シリーズ(1956〜1959)』などの現代活劇の探偵ものや空想ものなどが、週替わりで上映されていたのだ。
 当方も、『七色仮面』を劇場で見た記憶がある。当時は、テレビの普及台数が少なかったので、本来テレビ番組である『七色仮面』が、再編集版として映画館でも上映されていたのだ。(『七色仮面』はテレビ番組だが映画館で上映できるように、映画用の撮影をしていた)
 この中の一本に『黄金バット 摩天楼の怪人(1950)』がある。これは見たい。なんと、美空ひばりが出演している。

 『黄金バット』『怪竜大決戦』には、そうした東映冒険活劇映画の匂いが残っている。それは、子供向き(ジュブナイル)の映画の楽しさだ。テレビ番組と映画では、やっぱり手触りがちがう。そして、アニメではなく実写であるところが大変よろしい。

 また、『黄金バット』は、東映ヒーロー作品の流れも汲んでいる。
 東映には、テレビ番組の『七色仮面(1959〜1960)』、『ナショナルキッド(1960〜1961)』から現在の仮面ライダーやスーパー戦隊まで、スーパーヒーローものの歴史と実績がある。その間には梅宮辰夫がヒーローを演じた、劇場版『遊星王子(1959)』もある。スーパーヒーロー部門で東映は、マーベルなどのアメコミを凌駕していると思うぞ。
 ちなみに映画『黄金バット』には、ショッカーの戦闘員、怪人、幹部、首領を思わせるキャラクターが出てくるのだ。

 そうした東映の冒険活劇とヒーローものの夢を追い求めて、今でも仮面ライダーとスーパー戦隊の映画を見に、劇場に足を運ぶのさ。

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Last updated  November 8, 2015 09:34:27 PM
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