放浪の達人ブログ

宝くじ



俺の母は生前、予知夢を見ることが幾度かあった。
タンスに囲まれた部屋に入って行くと白髪の老人がいて
「このタンスの引き出しを1つ開けてみろ」と言われるそうで
開けてみるとメモのようなものが入っていたという。
そのメモを老人に渡すと書かれている内容を読み上げられ
「最近新しく親戚になった者が亡くなる」だとかを告げられる。
朝になるとその夢の内容を俺達子供に話すこともあったのだが、
数日経つと実際にそれが現実となるのであった。

夜更けに黒電話が鳴る。そのベルの音で俺も目が覚める。
だいたい夜更けの電話なんて悪い知らせしか来ない。
目が覚めた俺も子供ながらにそんなことは分かっていたのだが
数日前に母が言っていたことを思い出し電話の内容も予測できた。
母と俺は「やっぱり夢の通り...」と少々不気味に感じたものだ。

俺も先日示唆深い夢を見た。宝くじを買ったのである。
販売所の女性が俺にくれた宝くじの番号は「100000」だ。
全く当たりそうにないゾロ目の番号だから俺は文句を言った。
「こんな番号じゃ当たるわけがないじゃないか」
すると販売所の女性は俺を黙らせる返事をした。
「207584などのランダム数字でもゾロ目数字でも当たる確率は同じです」

言われてみれば確かにそうだ。
下1桁は10分の1の確率、下2桁目も10分の1の確率、下3桁目も4桁目も同じ。
それに数桁の組番号が加わるから当選確率は数千万分の1となる。
ゾロ目だから当たらないというのは確率的には根拠がないのだ。

1憶円以上の宝くじ当選者の10年後はどうなっているかを調べると
実に9割以上の人が借金に追われているという報告もある。
突然の当選により生活レベルを上げるのは至って簡単なことだが、
1度上げてしまった生活レベルは下げることが出来ないらしいのだ。

「宝くじは買わなきゃ当たらない」確かにその通りだ。
しかし俺なんかの場合、もし3千円分を買って当選換金が3枚の900円だったら
2100円の赤字だな、と夢も希望もないセコい現実を考えてしまうのである。
それに「もし1億当たったらヤフオクで中古CDまとめ買いじゃ」だとか
「車のタイヤが減ってるので新品タイヤに交換するぞ」だとか
「どど~んと海外旅行じゃ。格安航空券のエコノミーでスリランカ行くぞ」と
哀しくなるほどの庶民的発想しか出て来ない。
そもそも「1枚だけ買ってももし外れたら300円がパ~か、キツいな」などと
もはや宝くじというタイトルでこのエッセイを書くことすら資格がないというか、
この先も俺は宝くじとは無縁の人生を送るのだろうなあ。
ああ、母が生きていて宝くじを買うという予知夢を見てくれてたら・・・。


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