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私 :今週は、 2冊 に興味を持った。
1.(書評)『帝国と立憲 日中戦争はなぜ防げなかったのか』 坂野潤治〈著〉:評者・ 評・齋藤純一(早大教授・政治学)
本書 は、 1874年の台湾出兵から1937年の日中全面戦争に至る歴史 を、「 帝国」対「立憲」という構図 のもとに簡明に描き直しているという。
「 立憲 」が強いときには「 帝国 」抑制され、「 帝国 」が伸長するときには「 立憲 」は息を潜め、「 立憲」と「帝国」は交互に現れた のであり、 両者の併存はむしろ例外 。
A 氏 :この場合の「 帝国」は、中国(満蒙)への膨張をはかる軍拡の政策・行動を指し 、対して、 「立憲」は、狭義の「立憲主義」(憲法による公権力の制限)には還元されない 。
明治憲法は「統帥権」の独立を保障しており、「帝国」化に抗する ためには、 「違憲」ではなく「非立憲」の論理立てが必要 だった。
司馬遼太郎は軍部の独裁を「統帥権」の存在 を理由にあげているね。
私:「 立憲」は、国会開設、政党内閣 、男子普通選挙を順次実現した政治制度の民主化に加え、軍拡を抑えようとする財政指針もカバーする 。
本書は、「 帝国」化を阻もうとする努力 が、 昭和に入ってからも消え去りはしなかった事実に注目を喚起する。
昭和15年2月 には、 民政党の斉藤隆夫 が、有名な「 反軍演説 」を行っているね
「 立憲」は「帝国」化に繰り返し、執拗に立ちはだかったが、日中戦争 はなぜ防げなかったのか。
「 立憲」と「帝国」の抗争から著者が引きだす歴史の教え は、「デ モクラシーが戦争を抑え込み、それゆえにさらに発展するという好循環は、リベラルな政党内閣 の下でしか生じない 」というものだという。
A 氏 ; 本書 が問いかけるのは、 「立憲」主義を擁護するに加えて、いまデモクラシーに何が求められるか、 である。
政府および人民の権力濫用を抑えながら、単なる受け皿ではない、リベラルな議会多数派をどう安定的に組織していくことができるかが求められている ということか。
「立憲」という課題への再度の取り組みを本書は促す という。
私 : 今の自民党はリベラルな議会多数派 だろうか。
「立憲」は守られていくのだろうか 。
2.東谷暁氏〈著〉『山本七平の思想 日本教と天皇制の70年』 10日朝日新聞「読書ビジネス」欄・評者:ジャーナリスト・小林雅一氏
A 氏 : 山本七平氏は、昭和を代表する評論家の一人 で、君はファンでもあるね。
私:ほとんどの 氏の本 は読んだね。
講演依頼で、 山本氏の書斎を訪れ面談 したこともあるが、ゆっくりと 落ち着いた話し方をする人 だった記憶がある。
本書 は優に 200冊以上に及ぶ山本氏の作品群 の中から、 代表作を選び出して解説 。
そこに 七平氏 の歩んだ苦難の人生も絡めつつ、 氏が捉えた戦後70年 余りにわたる日本社会を総括している という。
A 氏 :評者が特にとりあげた 79年に刊行された「日本資本主義の精神」は、日本企業の原型は江戸幕府配下にあった数百の「藩」にある とした。
私 :そこには「 主君が立派でなくとも家臣は忠誠心をもらねばならない」という独特のイデオロギーが存在 し、 これが日本企業の経営体質に受け継がれた 。
その類似点が戦後の高度成長のように長所として働く一方、破綻をもたらす短所にもなると氏は見ていた。
こうした分析 は近年、 経営危機に陥った東芝のように一部の大手企業などを見ると確かに評者の言うように予言的 だね。