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私 : ドイツ の哲学者マルクス・ガブリエル 氏の 著書「なぜ世界は存在しないのか」がベストセラー になっている。
その ガブリエル氏が来日 し、 東京・築地の朝日新聞東京本社読者ホールで12日、哲学者の國分功一郎氏と対談 。
政治や経済の「危機」の解決に、「民主主義」は役立つのかなど、「民主主義」の原理を見つめ直す議論が繰り広げられた。
この記事はそれをまとめたもの。
A 氏 :まず、 ガブリエル 氏は、 「民主主義」の誕生の歴史 をひもときながら 「人間が人間として存在するために譲れない諸権利(=人権)に対応し、その権利の実現を目指す政治システム 」だとして、 「民主主義」に内在する価値として「平等」を重視している ことを明らかにした。
例えば、 古代ギリシャの「民主主義」は「奴隷制」、フランス革命後のナポレオンによる「民主主義」の試みは「帝国主義」という矛盾 を抱えていたがゆえに、 失敗 。
「みんなのための」「民主主義」 のはずなのに、 その最も重要な価値の普遍性 を実現できなかったことが共通の原因 だと、 ガブリエル 氏は語った。
「危機」は現代にも通底し、「途上国の人が先進国の人のためにTシャツを作っていて、大勢の人たちが自分たちのために働いているのが(先進国側から)見えない状況」 は 不平等で、非常に深刻な問題だと指摘。
私 : 國分 氏はこれを受け、 「メンバーシップの平等」の問題を提起。
例えば、昨年のフランス 大統領選で、決選投票まで進出した右翼政党の候補マリーヌ・ルペン 氏の 「フランスのことはフランス人が決めよう」という発言 は、 「外国人は入れるべきではない」という排他的な主張 でもあり、 國分氏は「決定権における平等の問題が排除に結びつく場合がある」 と述べ、 グローバル社会 のなかで、 政治的な決定権をどこまで、どう与えるかが重要な問題だと指摘 。
これに対して、 ガブリエル 氏は、 「『民主主義』の本質は『国民国家』と相いれない」と断言 し、 「気候変動や経済的格差といったグローバルな性格を持つ問題に、私たちは国境で線引きして『ここからは関係ない』とは言えない」 という。
「国民国家」の「枠外」に放出された難民や移民 も、 本来は「民主主義」の下で自分たちの人権を求めることができ、「彼らはまさに『民主主義』者っで、人権を自分たちのものにしたいと言っている」 と ガブリエル 氏はいう。
そして、 「民主主義」の価値を重視する立場から、難民・移民の人権に繰り返し言及 した。
A 氏 : 「民主主義」の限界を指摘 したうえで 、ガブリエル氏が強調した のが 「(『国民国家』を超えた)シチズンシップを与える『民主主義』の形式」 への 転換 。
ガブリエル 氏は、 多様な含意を持つ「民主主義」 について、 「普遍的な価値システム」としての「民主主義」の重要性を強調 し、 「『主権』という概念はいりません。主権なしに新しく「民主主義」について考える必要があります」 と述べた。
私 : 最後の論点が、「立憲主義」と「民主主義」の関係 。
「立憲主義」とは、簡単に言えば「民主的に決めれば何をやってもよいわけではない」(國分氏)ということで、「民主主義」体制下で権力は、 憲法 によって制約を受ける。
ガブリエル 氏が住む ドイツは、こうした発想が特に強く、ナチスドイツス への反省 から、 戦後のドイツの憲法 (基本法)は、手続きとしてではなく、価値としての「民主主義」を重視 しており、 「国家は単なる形式的なシステムではなく、倫理的な基礎が必要です」とガブリエル 氏はいう。
國分氏は「下からの『民主主義』」と「上からの『立憲主義』」の衝突の問題に言及。
下から民主的に決めた事項に、「立憲主義」が「それはダメだ」と突きつける。
これに対する民衆の反発をどう考えればよいのか と問う。
これに対し、 ガブリエル 氏は、 「だれかを拷問するかどうかを民主的な投票で決めてはいけない」 と 例示 し、 「民主主義」の価値の重要性を、「民主主義」によって否定することはできない、 とする。
そのうえで、立憲的な価値を前提として共有することの重要性と、その具体的手段として子どもたちへの倫理教育をあげた。
A 氏 : 質疑応答 では 「多数決は平等なのか」という視点が話題になり、「少数意見の切り捨て」になり、「『民主主義』の理念から隔絶している」との声 があった。
國分氏は、日本で「民主主義」=多数決となる傾向は「変なこと」と指摘。
私 : ガブリエル 氏は、 ドイツでは多数決ではなく、合意を形成していくことが重視されている と話し 、少数意見を重視する一つの提案 として、 議会の 公聴会 の委員の3分の2を野党推薦にし、議論を通じて同意を生み出す仕組みを制度化したらどうか 、と語った。
我々は、日常「民主主義」と簡単に言っている が、 政治や経済の「危機」の解決に、「民主主義」は役立つのか、現実の限界にぶつかって、大いに疑問に思うことが多い ね。
そうかと言って、それを否定はできないし ね。