知的漫遊紀行

知的漫遊紀行

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

Ryu-chan6708

Ryu-chan6708

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Freepage List

2018.10.20
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

今週の「土曜書評」 で、7冊の本をとりあげていたが、以下、 2冊の本に知的興味が湧いた。

1.ユヴァル・ノア・ハラリ氏〈著〉『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』(上・下)・評者・ 長谷川眞理子氏(総合研究大学院大学学長・人類学

著者はイスラエルの歴史学者

人類全体として見れば、私たちは大雑把に言って、「戦争」と「飢饉」と「疫病」を克服し、これまでの長い歴史において、この三つがどれほど普通の人々の日常を不幸にしてきたことか

21世紀の現在、数万年にわたる人類の懸案の問題が、一応解決された。

さて、 それでは、これから私たちはどこに向かうのか?というのが、本書の論点。

これまでの人類史の総まとめ と、 これからどうするかの未来予測をするための材料の提供 で、上下2冊に詰まった情報と考察のまばゆく華麗な提示、 それを消化するには、いささかの体力と知力を要する と、 評者 は言う。

A 「戦争」と「飢饉」と「疫病」をなくすことに成功したのは、科学と技術のおかげだが、この科学と技術で人類は次に何をめざすか? 

おそらく、死という運命を克服することをめざすのではないか、それは、人間自らが神になることで、本書の題名の「ホモ・デウス(デウスはラテン語で神)」である。

本書は、同じ著者による有名な前作『サピエンス全史』の続編で、人間が何を信じ、何に価値を求めてきたか、人類の 精神史 を描いてみせる技はさすがだ 評者は言う。

宗教は、神の存在を想定し、神が教えてくれる世界の秩序に従っていることを善としたが、近代科学はそれをくつがえし、人間自身こそが世界を知る力を持っているとした。

そうして人間は、人間自身の尊重と個人の自由を至高のものとするヒューマニズムを打ち立て、それが、今の私たちの価値観。

ところが、AI(人工知能)や生命工学などの現代の科学技術がこのまま進展していくと、ヒューマニズムの価値観そのものが壊されていく。

 意識とは何か、「私」とは何かという問題は、生きていく上で非常に重要なはずだが、それらは、まだまだ明らかになっていないが、どんな生命も社会システムも、「意思決定のための情報処理アルゴリズム」だと考えると、意識や「私」の問題は無視して、ヒトのやり方を上回る「アルゴリズム」を作ることができる。

いや、もうすでに、 そんなものが人々を魅了しつつあり、不完全な人間が考えるより、「アルゴリズム」にまかせた方がよいのではないか。

「アルゴリズム」を評価するのは誰?、意思決定を機械にまかせたら、人間の意識や「私」の感覚はどうなる?、結局、人間は人間をやめることになるのだろう

そんな世界で人々は、永遠に生きたいと願うのだろうか? 

しかし、欲望自体も操作でき、現在はそんな時代の入り口。

私たちは本当に何をしたいのか、立ち止まって議論する材料がいっぱいである 評者は言う。

2.ジェイムズ・Q・ウィットマン氏〈著〉『ヒトラーのモデルはアメリカだった』・評者・ ・西崎文子氏(東大教授・アメリカ政治外交史)

本書は、ナチス・ドイツが1935年に悪名高いニュルンベルク法を制定した際、モデルとしたのが米国だ という。

ナチス・ドイツは、ユダヤ人から公民権を奪い、ユダヤ人とドイツ人との婚姻を禁止し、やがて絶滅政策へと突き進んでいくという、このおぞましい政権が米国を模範とした という。

1790年の米国初の帰化法は、対象を「自由な白人」に限定し、その後、非白人も市民と認められるようになるが、19世紀後半にはアジア系移民の排斥法が制定され、黒人、先住民、フィリピン人やプエルトリコ人も二級市民に貶められていく。

A 人種間混交の排除でも米国は際立ち、優生学が流行した20世紀初頭には各州で異人種混交禁止法が導入され、人種主義的社会秩序の構築も進み「血の一滴の掟(ワンドロップルール)」により黒人を分類する慣行が広まった。

このような人種法の数々を、ドイツ法曹は意欲的に吸収したが、反対がなかった訳ではなく、法理を重視する守旧派は、人種の定義すら曖昧なまま米国法を真似ることに反発したが、急進派は、米国では法律が「人種の政治的構築」を達成したとして、社会の変化に柔軟に対応する法文化を称賛。

気の滅入る話だが、救いは人種主義を国家事業としたナチスとは異なり、米国ではこれ以後、公民権が拡大したこと

その理由は、米国に人種法と対立する立憲主義や平等主義の伝統が併存したからだと著者はいう。

ただし、これも両刃の剣かもしれず、多くの米国人は、自国が自由や民主主義のモデルだと信じるあまり、同時に人種主義政策のモデルだった可能性に気づかない。

「自由の国」というイデオロギー が、人種差別の現実を隠してしまう。

今日の世界にも潜む危険を冷徹にえぐり出す読み応えのある書物であると評者は言う


 著者の問題意識はすでにトランプ現象に現れているかもしれない
ね。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2018.10.20 23:08:42
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: