りゅうちゃんミストラル

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報道

2005-11-09 14:52:072005-11-09 14:51:57ネコ宙返り 報道~クロンカイトと筑紫哲也~ ネコ宙返り2005-11-09 14:52:072005-11-09 14:51:57

*ここでは報道のあるべき姿を素人の視点から語ります*

報道を語る上でアメリカでは忘れられない人がいます。 ウォルタークロンカイト(注1) です。
彼はCBSイブニングニュースのアンカーマン、そして、「大統領よりも信頼できる男」でした。
顔を出してニュースを伝える人です。
日本で言うなら後で比較する「ニュース23」の 筑紫哲也(注2) でしょうか。

クロンカイトは「アメリカの良心」と呼ばれました。
大統領さえも彼の言動に左右され、報道の側から政治を変えた偉大な男です。
クロンカイトがその存在を示したのはベトナム戦争の時でした。
ベトナムに共産政権ができることを怖れたアメリカは、
「自由を守るため」という大義名分の下、ディエンビエンフー(1954年)で敗れたフランスの後ベトナムに力の関与をしたのでした。

それまで客観的な報道がクロンカイトの信条でしたが、
彼はベトナム戦争ではこの原則を破ります。1968年2月のことでした。
「私はベトナム戦争に反対だ。アメリカ軍に名誉ある撤退を求める」
この一言は世論を大きく動かしました。
クロンカイトを失ったということはアメリカを失うということ
( If we've lost Cronkite, we've lost America. )

ジョンソン大統領の補佐官、トムジョンソンはこういったのでした。

上記英語の部分は 話すべきこと(大事なモン) から引用。

その後、ジョンソン大統領は再選出馬を断念しました。
これほど報道が政治の影響を与えたことは、歴史上あまり見られないことです。
その後、1973年3月にニクソンが戦争終結宣言をし、
1975年4月、サイゴン(現ホーチミンシティ)は「開放」されます。
アメリカはアジアのベトナムに負けたのです。
最初からアメリカには無理があった。誰が敵かわからない。
戦争後に二重胎児などが問題となる枯葉剤を使っても、
ナパーム弾で森林を焼き払っても、ゲリラ戦術のベトナムにはかなわなかった。
しかもサイゴンが陥落してアメリカ人が逃げるときにはヘリコプターに掴まったベトナム人をアメリカ人は思い切り殴っていました。そんな写真見たことありませんか?
アメリカ人にとてベトナムは「二流市民」でしかなかったのです。
多くの若者を送ったアメリカは、戦争後も帰還兵の肉体だけでなく心の問題に悩むことになります。



どうして偉大なクロンカイトを日本の筑紫哲也と比べるのか?
クロンカイトに失礼ではないか?そう考える人はかなりの知識人です。
「ニュース23」を観ている人ならわかると思いますが、
筑紫哲也はこう言って番組を締めくくることが多いようです。

「今日はこんなところです」

何気なく聞こえますが、この言葉はクロンカイトから来ているものなのです。
クロンカイトはこう言って番組を終わりました。

and that's the way it is・・・

この英語の部分も 話すべきこと(大事なモン) から引用。

これは日本語にすると筑紫の言葉になります。
筑紫にしてみれば、尊敬(オマージュ)のつもりなのでしょう。
話がそれましたね。本題に戻ります。クロンカイトと筑紫の違いは何か?
そしてその差はどこから来るのでしょうか?
これはいろいろな見方ができます。私が考えるに、次のような理由があります。

1、時代が違う。現代は多様化の社会にあって「**の良心」などといわれる人が出にくくなっています。
一人が政治を変えることは、現代では夢のまた夢でしょう。

2、いつも意見を言うか?それとも例外で一回のみか?筑紫はいつも「多事争論」で意見をいっています。
クロンカイトは決断の上で例外的にベトナム戦争について語りました。この差は歴然としています。

ここにきてやっとこのページのテーマが出てきました。
それは、 「ニュースは伝える側の意見を表明すべきか?
それとも客観的な報道に徹するべきか」
ということです。

久米宏(注3) によってニュースは「伝える側の意見を見るもの」ということになったようです。
ただこれは「勇気ある行動」であるともいえます。
なぜなら、もし自分の意見が間違った時には、 「世論をミスリードする」 ことになるからです。
いつでも批判されることを気にしながら自分の意見を表明することが、果たして報道の姿なのか?
それでいいのか?そんな疑問も出てくることでしょう。

これは非常に微妙な問題です。
それでは逆に「客観的な伝え方」のみに報道が徹したらどうでしょうか?
よく、 「国民的議論」 という言葉が私の耳に届きますが、
そんなものが今まであったでしょうか?必要なときに必要な議論はされたでしょうか?
私は断言します。日本では大事なことについても議論がされにくいのです。
その点では筑紫や久米の手法はある程度の理解ができます。
ただいつも意見を表明していたのでは、その効力も弱くなることでしょう。

では受け取る側の我々はどうしたらいいのでしょうか?
筑紫などの意見を「議論の叩き台」として利用するのが賢明であると、私は判断します。
決して彼ら「伝える側の人間」は完全ではありません。
時には間違えもします。毎日多くの報道をする中で、多くの意見発言する彼らの意見を聞いて、
「それは違う!」 といってもいいのです。
また反論が出てこない世界というものが、いかに危険かということを、
見る側は感じるべきであると、私は日頃から思っています。

「視聴者に鍛えられるニュース、報道」こそがより「健全」であるといえるでしょう。
筑紫はイラクへの自衛隊派遣に反対の立場をとっています。番組内でもそう発言してきました。
ところが政府は彼の意見で政策を変換することはありません。
筑紫が政策に発言して、政策に何の影響もなかった時、
ニュースを伝える側は次に何かとる手段があるでしょうか?
クロンカイトはこのことをとても気にしていたのではないか?
私は今もそう考えます。

私の意見に対して 「それは違う!」
という人がいたら、どうか掲示板にあなたの意見を書いてください。

今日はこんなところです。




(注1)ウォルタークロンカイト
彼は1981年までCBSイブニングニュースのアンカーマンだったが、
ダンラザーにその地位を継承した。ラザーは9月11日後のブッシュ大統領に対して、
「彼についていく」とテレビで泣きながらブッシュ支持を表明した。
クロンカイトなら何と言っただろうか?

クロンカイトは2009年7月に92歳で亡くなった。

クロンカイトの死と報道

追記 

クロンカイトの後を継いだダンラザーが2005年3月9日に降板することが決まった。
2004年11月23日に番組でCBSイブニングニュースを降板すると発表した。
ブッシュ大統領の軍歴疑惑報道が引き金となったとの憶測あり。
米CBSダン・ラザー氏、3月で降板(TBS NEWS-i から 11月24日 9:37 )
アメリカのテレビで24年にわたって夕方ニュースのキャスターをつとめたCBSのダン・ラザー氏が、来年3月で降板することになりました。
 「毎晩、皆さんの家に迎えてもらいありがとうございます。私に与えてくれた信頼に感謝します」(CBSイブニングニュース・キャスター、ダン・ラザー氏)

NBCテレビのトム・ブロコーも番組降板が決まっており、
3大ネットワークのメインキャスターは、ABCのジェニングスだけとなる。
(追記 ジェニングスはその後肺ガンが見つかり、
治療を受けながら報道に関わるとのこと。)

米ABC看板キャスター・ジェニングズ氏が肺がん

追記
ジェニングスは2005年8月7日に亡くなった。
彼が活躍したABCでは特集番組を持った。
日本ではジェニングスについての扱いは小さかった。
しかしアメリカではその影響力は大きかったようだ。
ライバルであったブロコー、ラザーが衛星回線を使ってジェニングスについて語った。
ジェニングスが肺がんで亡くなったことから、がんについての話も出ていた。
その中で「トムソーヤの冒険」で有名な作家、マーク・トウェインの言葉も紹介された。
「禁煙なんて簡単だ。その証拠に私はもう1000回も禁煙している」


(注2)筑紫哲也
元朝日新聞社の記者。テレビ界の人間ではない。その後母校の早稲田大学教授になる。「ニュース23」ではオウム関係者にTBSが放送前のビデオを見せたことで筑紫の降板さえ囁かれた(彼自身「やめようと思った」と心情を番組内で吐露している)が、この事件では降板はしなかった。
 私としては「どうして人を殺してはいけないか?」という1997年夏、終戦記念特別番組内での若者の発言に対し、筑紫をはじめとした「大人」たちがまともに回答できなかったことが残念だ。
クロンカイトならどう答えただろうか?このことについてはまた語りたい。
「**ならどう表明したか?」ということが気になることが「良心」という所以なのだろう。

筑紫は2004年5月、年金未納問題で「ニュース23」の出演を見合わせたが、
その後番組に復帰した。

その後、筑紫はガンが見つかり番組を降板。
2008年11月7日に亡くなった。
彼の死については以下の記事に書いた。

筑紫哲也がいない世界

(注3)久米宏
彼が持論を述べる「ニュースステーション」は2004年に終了した。
彼の影響は大きく、「ニュースはニュースショーになった」という批判もあるが、
彼とこの番組の意味は大きかったのではないか?



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