りゅうちゃんミストラル

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2009.11.17
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カテゴリ: 読書
東野圭吾「赤い指」を読んだ。
(一部ネタばれあり)



この作品は直木賞受賞後第一作。
流行作家、東野圭吾のデビューから60冊目だそうだ。

私は東野の作品を、それなりに読んでいる。

「容疑者Xの献身」 「ガリレオの苦悩」 「聖女の救済」

「さまよう刃」 「宿命」 「白夜行」 、  

「むかし僕が死んだ家」 「変身」 「分身」

「天空の蜂」 「レイクサイド」 「探偵ガリレオ」「予知夢」

だが本作品は私にとって加賀恭一郎初登場。
別に狙ったわけではない。たまたまこうなっただけだ。

本作品の主なテーマは「親と子」。
「父親と子」と言ってもいい。
社会問題として介護や痴呆も絡んでくる。

少年法のあり方にもできたこの作品。
だがその部分は薄い。
少年法については映画化された「さまよう刃」に込めたと解釈しよう。

捜査一課に抜擢された松宮。
練馬署の加賀は伯父に当たる。
その松宮は殺人事件の捜査で加賀と組むことになる。
だがその松宮は加賀にいい印象を持っていない。
父を亡くした松宮母子に対し、加賀の父親は何かと援助してきた。
その父親が癌で余命わずかというのに、加賀は見舞いにも行こうとしない。
理解に苦しむ松宮。

事件は死体遺棄で始まった。
幼女の遺体が公園で見つかった。
首を絞めて殺されていた。

その遺体をどうやって運んだか。
加賀の推理は「普通の家庭」前原家から真実を導き出す。
ここで重要なのは「真実は何か」ではない。
それはすでに読者が知っていること。
加賀が「どうやって真実にたどり着くか」。
これを作者の東野がどう描くか。
そこに作家としての力量が試される。

繰り返しになるが、読者は知っている。
誰がどうやって幼女を殺したか。
その犯罪を犯人の家族がどう隠そうとしているか。
ここにも道を誤った親と子が出てくる。

この一家には救いがない。
人を殺しておいてなお身勝手な息子。
「息子を守る」という意味を勘違いしている母親。
そして結局はくだらない計画を立てる父親。
息子が人を殺したなら、両親のどちらかは警察へ連絡するだろう。
前原家はこの親にしてこの子ありだ。

だが、この親子を批判していられるのはこれが小説だから。
もし実際に自分の息子が人を殺したら。
この家族を批判できないかもしれない。
その状況になって初めて、自分の判断力は試される。

当たり前だが被害者の家族にもまた家族がいる。
被害者の幼女は何の罪もなく殺された。
被害者の両親にも非はまったくない。
時間の経過とともに、世間から忘れ去れられる事件。
それがいかに多いか、ここで語らなくても理解できるだろう。

この作品を読むのに長い時間を必要とはしなかった。
これなら加賀が出てくるシリーズを読むのに苦労はしない。

ひとつ苦言を。
認知症を家族に装うのは、かなりの演技力が必要。
この点で本作品はリアリティーに欠けている。

もし日本国内で認知症を演技している老人が多く存在していたなら。
この国は何と救われない暗い国か。
そうでなくてもため息の出る事件が起きているというのに。
イジメや介護だけでなく社会問題は山積しているというのに。

救いがあるとすれば、それはエンディングにある。
なぜ加賀は父親の見舞いに行こうとしなかったのか?
それでも警察官親子の間にはつながりがあった。
もし終わり方がこうなっていなかったら。
救われない気分が読者に残っただろう。

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最終更新日  2009.11.18 18:05:37


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