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2017年01月18日
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カテゴリ: 読書のこと
講談社校閲局が出している『日本語の正しい表記と用語の辞典』。
現在出ているのは2013年に改訂された第3版です。

主に文芸書を出版する出版社の校閲の目的は「読みやすさ」なので、表記と用語の不正解についてははっきり提示しているけれど、正解は一つではない、というようなものになっています。
テープ起こし者が使用する用字辞書は表記の正解を一つ強制するものなので、タイプの違う用字辞典ですね。

考え方が顕著に違うのは漢字含有率です。
対象読者の問題もあるけれども(児童書だったら難しい漢字は使用しないとか)、一般書でも「漢字の含有率は多すぎないほうが読みやすい」という考え方。明確に「何%がよい」という指定はないけれども、漢字含有率25.7%と37.9%の例示が出ています。「あまりにも漢字が多かったら、少し平仮名を増やそうね」ということですね。

『日本語の正しい表記と用語の辞典』の用字用例集は、こんなふうに見ます。

・ABどっちでもいいよ →  A B (例 たんけん 探検 探険)
・できればAにしてね  → A/B (例 だいたい だいたい/大体)

テープ起こし業界の表記辞書には、「ABどっちでもいいよ」というのはありません。どちらかに指定されている。(しかも、表記辞書ごとに微妙に指定が違うという……。だから、詳しい人が見れば、どの表記辞書基準で書かれた文章かということがわかるわけです。ああ恐ろしや)

でも、一種類の表記が決まっていると漢字が続きすぎたり、平仮名が続きすぎたりということが起こります。読みにくいことこの上ない。そういうときテープ起こしは、せいぜい「、」を入れて区切るくらいしかできません。だけど、そもそも「漢字含有率」という校閲項目自体がないのです。

ちなみに、私は表記の指定をされている仕事がないので、主に副詞で「漢字/平仮名」を変更してしまいます。これは一つの文書の中で表記の統一をしないということなので、テープ起こし業界では本当は御法度です。

そんな感じでちょこちょこ違うところもあるけれど、全体的な印象としては『記者ハンドブック』や『用字用例辞典』とだいたい一緒ですね。読みやすい日本語というのは、誰が作ろうと、何の目的だろうと、そう大幅に違うものにはならないのだなあと思います。

面白かったのは(←「面白い」は平仮名推奨でした)「カ/ケ」問題で、「数詞の場合は、原則として「ヵ」を小さく使います」となっていました。(例 数ヵ月 一ヵ所)
新聞・速記では、外来語以外ではまず仮名の小文字(ぁぃぅぇぅぉ等)を使わないので、オーマイガッな気分です。

その外来語については「書き表し方」はあるけれども、個別な語例集はありませんでした。第2版まであったものを第3版で削除したとのこと。「新たに生まれてはすぐに消えたり形を変えたりといった変化が激しいため」というのが理由だそうです。
まあ、新聞は「メード喫茶」なんて表記で叩かれていますからね。(『記者ハンドブック』は第13版でとうとう「メイド喫茶」に改訂されました)



英語の語末が-dy, -ty, -py などは、普通は長音と見なして「-」をつけて書きます。ただし、特にしゃれた感じを出したいとき(あるいは原音に近く書き表したいとき)などには、「-」を省いて書くこともあります。
   アイデンティティー → アイデンティティ
   トレンディー → トレンディ



しゃれた感じ……。
この「しゃれた感じを出したいとき」という発想はテープ起こし者にはないですね。

あと、豊富な「間違いやすい言葉・慣用句・表現」はとっても勉強になるので、一通り読むのをお勧めします。でも、ここに出てくる表現は主に書き言葉で、話し言葉としてはあまり見掛けない。辞書としてカバーしている基本単語の選定基準が違うなあというのも思いました




日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版 [ 講談社校閲局 ]





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最終更新日  2017年01月18日 19時24分03秒
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