竜胆輪道　（りんどうりんどう）

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March 18, 2008

「ヴェネツィアに死す」トーマス・マン

テーマ：お勧めの本(7418)

カテゴリ：本

ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「ベニスに死す」でも有名

映画は以前に観て、少年に恋する老音楽家（本では老作家）の姿が、ちょっと笑ってしまうような感想を持ちましたが、原作も同じ

というか、映画は原作の持つ特徴をものすごくよく表現しているのではないかなと。

映画が名作とされていることには、いまいちピンとこなかったのですが、かなり以前に観たのに、読んでいて各シーンが浮かんできました。

『船頭たちはあいかわらず喧嘩していた。粗暴で、何をまくし立てているのかわからない。脅しつける身振り。しかし水上都市の独特な静けさが、彼らの声を柔らかく吸収し、中身を抜き、満々たる水の上にまき散らしてしまうようだたった。』

『たがいにただ目で知っているというだけの関係ほど、奇妙でややこしいものはない、――毎日、いや毎時間出会い、相手を見る、そのさい礼儀に縛られてか、自身の思い込みによるのか、挨拶もせず、言葉も交わさず、よそよそしい無関心な態度をとるよう強いられている。彼らの間には落ち着かない敏感な好奇心が生まれる。相手を知り、言葉でも交わしたいと思いながら満たされず、不自然に抑圧されることから一種のヒステリー状態が生じる。そしてとくにまた相手の存在を重く見る一種の緊張関係が生まれる。なぜなら、人が人を愛し敬うのは、相手を評価できないでいる間だけなのだから。憧れは認識不足の産物である。』

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