よんきゅ部屋

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Dec 30, 2005
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第3楽章
「天上的な」などと評されることもあるこの楽章だが、本当にその気分でいられるのは1stVn。2ndVnの譜面と並べてみると、黒い部分の多さがまるで違う。冒頭の旋律が変奏されていくと1stは相当忙しくなる。ベーレンライター版(というと訳が分からなくなりそうだがこれは楽譜出版社の名前で、ベートーヴェンを取り上げようとするオケで弾く人なら最近よく聞くだろう)だと、この楽章のテンポ設定はかなり速く感じるはずだ。これを心地よいテンポと取るか、従来の方がいいと思うかで賛否が分かれてくる。2nd的に言えば、速いほうが疲れにくいとは思うが...。

というのも、2ndは伴奏がほとんどでしかもピチカートだらけなのだ。譜面を一見しただけではほとんどあの旋律は浮かんでこないし、低い音のピチカートが多いので、だんだん右腕が疲れてくるのだ。

2ndがオケの中で存在をはっきりさせられるのは、この楽章で言うとほぼ2箇所だけ。冒頭の旋律が終わった後に出てくる4分の3拍子(ニ長調)の場所と、最後の方で変奏が盛り上がり、トランペットのファンファーレが2回出てきたすぐ後(変ニ長調)だ。

前者は、冒頭の旋律がおさまってきったところからいきなり拍子が変わって出てくるので、かなり緊張してしまう。最初にタイミングがつかめないでいると、指揮者に必ずにらまれる場所である。ベートーヴェンはこの曲では特に2ndに対して意地悪だと思ってしまう(被害妄想か?)。もちろん、うまくいけば気持ちのいい場所であることも間違いない。冒頭の変ロ長調が雲の上にある天国だとすれば、このニ長調はそのさらに上に広がるどこまでも青い空のようだ。

後者は、非常に単純な音型で、旋律とはほとんど言えず、むしろ断片だろう。しかも指定はppなのだが、ほとんどの指揮者はここをもっと弾いて欲しいと言う。それでも勇気がないような音だったりすると、「じゃ、mfにしましょう。mfですよ、いいですね。」などと言われてしまうのだ。確かに、これをやっているのは2ndだけで、あとは低弦が旋律、背景を木管楽器がやっているので、下手をすると埋もれてきこえないのだ。

と書いてしまうと、「2ndってやっぱり面白くないんじゃないの?」などと言われそうだが、そんなことはない。いい曲は伴奏もやっぱりいいのだ。面白い音が書いてあるし、伴奏もいい流れで音が動いていくのだ。そして、たまに旋律が出てくるだけに、それを大事に弾こうと思えるところもよい。アクセルをいっぱいに踏んでいなくても、安心していられるエンジンでなければいけないのは、ゆっくりした楽章でも変わらないと思う。

あと、さらにマニアックな難しい場所は、後半の方にあるクラリネットが冒頭の旋律を穏やかに吹き始める場所(変ホ長調→変ホ短調→変ハ長調→変ロ長調という流れ)。ここでは、ピチカートの伴奏は2連符と3連符の間を弦楽器のいろいろなパート間で行ったり来たりする。切り替わる場所を担当する楽器は「げっ!」と思う場所だ。おまけに拍の頭が休符だったりするのでなおさらやりにくい。まあ、慣れてくるとうまくいったら快感になるのだが。その後3連符で最初の調(変ロ長調)に戻すのも、2ndVnがやっている。この部分は視界がぱーっと開ける感じで実にうまくできている。ちなみに、変ハ長調(譜面上はb3つだが、実質はb7つ!)の場所で旋律を担当しているのはホルンなのだが、当時の楽器の性能だときっと演奏するのはつらかったのではないだろうかと思う。今でも難しそうに思えるが...。最後はやっぱりこれもあっけなく終わる。そして...

第4楽章
嵐が吹くような冒頭。いきなり音がぶつかる和音でスタート。そして、最初の旋律はいきなりチェロとコントラバスに出てくる。コントラバスがここまで表に出てくるケースは珍しい方なので、弾いているのを見ているとやはりやりにくそうだ。ふだん人前でしゃべらない人がいきなりスピーチをさせられているような気まずさが、特に初めの頃の合奏でよく見られる(もちろん、そういう人ばかりではないが)。

その後、各楽章の回想シーンが短くあると、2ndVnは延々と休み。ここは冬眠状態にならないようにしなければならないところだ。むしろ、他の楽器の演奏を楽しむつもりでいないといけないだろう。

独唱が出る前に、コントラバスとチェロから歓喜の歌がリレーされてくる場所は弾いていても快感のある場所だ。ヴィオラがいい音で入ってくるともう鳥肌が立つのだが、そんなことは言っていられない。旋律は1stがやるのだが、2ndは1拍目からではなくその前(アウフタクト)から伴奏を始めなければならない。ここもびびっていると指揮者ににらまれるポイントだ。おまけにここの伴奏はかなりこっているために非常に難しい。それだけにできると気持ちいいのだが、一度は1stを経験しておきたい場所である。あのさわやかな音楽の気持ちよさにはさすがに負けてしまう。

その後はしばらく伴奏が続く。この伴奏をしながら、歌付きはいいなと思うのがこのあたりを演奏しているときだ。そして、最初のクライマックスがやってきた後のトルコ風マーチ、ここが曲者である。この部分自体は好きだし、ベートーヴェンの映画(不滅の恋)の中でベートーヴェンが森の中を走るシーンがまさにぴったりな感じの場所。ところが、伴奏の始まりはすべて1拍目にないので、弾いているうちにだんだん混乱してくる。むしろ曲をきっちり体に入れて弾かないとうまく行かない場所である。

それを抜けると最も有名な場所。合唱による歓喜の歌が全開の場所である。このあたりから合唱もエンジンが全開になる。人間の声を集めることのすごさを感じる場所だ。ここから先は合唱や独唱においしいところを持って行かれようが、伴奏がいかに難しかろうが、私は許せてしまう。「運命」のようにがっちりした曲もいいが、第九のようなハチャメチャぶりも素晴らしい。とはいえ、コントラバスにあの音型はちょっとひどいが...(4分の6拍子の場所、CDを聴いても難しいことがわかる)。

最後の方で3回ゆっくりになる場所があるが、私は1回目が大好きである。合唱があたたかく(熱を帯びてではない)包んでくれるように歌われるこの場所は弾くたびに幸せな気分になる(とはいえ、本当に一瞬だが)。最後の1ページ(Vnが沈黙の中から出てきてスピードを増して盛り上がるところから)は呼吸していることを忘れるほどテンションが上がってしまう。最後の一音を弾くときは短い音だがホール中に響けと思って出している。

やっぱりこの曲は何度弾いてもいい曲。日頃はあまりない合唱とのコラボレーションがたまらない。楽器の音も素晴らしいが、やはり歌は声から始まったものだと実感するのがこの曲。合唱を聴きに来ている人にとっては「第3楽章まではいらんから(確かに45分ぐらいあるし)早く第4楽章をやって」などという声も聞かれるが、やはりこの曲は全部やってはじめて完結する曲だと思う。「これも違う!あれも違う!やっぱり違う!」と言ってから「そう、それ!」ということなのだ。

と、かなり違った面から第九に光を当ててみました。ライブで見るか、DVDで見るかするとちょっと違った見方になるかもしれませんね。





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Last updated  Dec 30, 2005 07:06:33 AM
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