よんきゅ部屋

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Mar 22, 2007
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この曲が初演されたのは1908年(マーラーなら交響曲第7番まで初演されている)、もう完全に20世紀に足を突っ込んでいる状態なのに、そういった雰囲気をあまり感じない。もちろん、それがいいのだが。ラフマニノフは交響曲第1番で酷評され健康を害するほどだったが、ピアノ協奏曲第2番で復活し、満を持して書かれたのがこの曲である。ピアノ協奏曲よりもさらにスケールの大きな音楽になっている。

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第1楽章:
いきなり低弦から暗い雰囲気でスタート。木管楽器の和音が寒い張り詰めた感じを醸し出している。しばらくはラルゴのテンポでゆっくり進んでいく。ゆっくりのホ短調で始まる曲と言えばチャイコフスキーの交響曲第5番やシベリウスの交響曲第1番があるが、いずれも雰囲気はちょっと似ているような気がする(クラリネットがうまく使われているのも同じで、そういう方法論があるのだろうか)。その中で息の長いクレッシェンドをしながら、だんだんと景色が広がっていく感じはとてもよい。それが静まるとアレグロの主部へ。

この楽章の中で特に好きなのは長調の第2主題。1回目はト長調、昼間、霧が晴れて太陽の光(ちょっと白く見えるような)が少し差してくるような感じ。その後ヴィオラがトレモロで最低音のくすんだ音を鳴らして合いの手を入れるのが特徴的。展開部では転調を繰り返したり、音符の単位が細かくなったりで激しい音楽が展開される。

そして冒頭の旋律が弱くユニゾンで演奏されると、フルートを中心とした木管楽器で急に光が差すような合図があり、2回目の第2主題。ホ長調の2回目は夕焼けをバックにした太陽の光のようだ。1回目よりももっと遠くを見据えたような感じがする。この部分のクライマックスが第3楽章と並んで全曲中一番好きな場所だ。

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第2楽章:
急速なロシア民謡といった感じで始まる。主部と再現部に当たる部分は基本的に最初の部分を展開したものである。主部に当たる部分が静まると、いきなり太鼓一発で急速な中間部がスタート。この部分で細かく動く音型は弦楽器泣かせなのだが、最初に弾くのは2ndVnであり、しかもほとんど裸同然で、緊張するところだ(しかも運指が不規則なので弾きにくいことこの上ない)。ベートーヴェン以来ずっとなぜか難しい音型は2ndスタートであることが少なからずある。いつも「なんでやねん!」と思ってしまうところだ。

中間部の真ん中あたりでは少し落ち着いた感じの踊りがあるのだが、それが咳き込むように速くなって再現部に入っていくあたりはテンションが高くなる。最後は意外なほどに静かに終わる。

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第3楽章:
他の楽章を知らなくても、これを知っている人は多いと思う。ドラマなどのBGMで時々耳にすることがあるが、これをやたらと使っていたドラマもあったな...。あまりにも露出させすぎると気恥ずかしいという向きもあるが、やっぱりこの楽章は素晴らしいと思う。私はこの楽章を聴くとケーキの姿がなぜか浮かんでしまう。いい演奏なら甘くて美味しいケーキ、よくない演奏ならわざとらしい甘さで油っぽく胃がもたれそうなケーキだと思ってしまう。まさに料理する人の腕次第という感じだ。

ラフマニノフはクラリネットの音色が好きだったのだろうか、ピアノ協奏曲第2番の緩徐楽章も旋律はクラリネット、この楽章もそうだ。しかも少し高い音で、張りはあるがほんわか感を失わない音を求めているように思う。この主題そのものもいいが、私は何と言っても和音の進行にぐっときてしまう。本当に「なぜこのような音がかけるのか」と思えてしまう。

この主題の価値を高めているものの一つに、中間部の存在があるように思う。主題の要素をうまく使いながら、スケールの大きな流れをつくっていく、そういった展開があるからこそ、戻ってきたときの安心感が大きいのだと思う。とにかく文句なしに大好きな楽章である。

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第4楽章:
しっとりした感じの第3楽章とは打って変わって、跳ねるような音型が特徴的な快活な楽章。金管楽器のしっかりした和音のフレームの中で木管楽器や弦楽器がいかにうまく軽い表情を出せるかがポイントであるように思う。伸びやかな流れになる場所は息の長い旋律、最初の部分とのコントラストがとてもいい。

この楽章の中には第3楽章の要素が随所に埋め込まれていて、楽章の間での統合が図られている。交響曲の様式感がうまくバランスされているところも、歴史に名を残すのに一役買っているのだろうなと思う。伸びやかな旋律の2回目(ホ長調になっているところ)から、ラストまでなだれ込んでいくところはついつい体が動いてしまう高揚感がある。

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この曲は1回だけ演奏したことがある。仕事の都合で練習になかなか参加できなかった時期に演奏したので、そのときにできることは精一杯やったが、どっぷりつかって、落ち着いて演奏できたという満腹感がなかったような気がする(腹8分目感はあったとは思うが)。もし機会があれば、もう一度しっかりとトライしてみたい曲だ。





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Last updated  Mar 22, 2007 07:44:57 AM
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