Tapestry

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THE WORLD ACCORDING TO GARP



心身ともに調子が悪い時、何も気力が湧いてこない時など、
ついつい映画の世界に逃げ込んでしまうのだが、
映画によっては、逃避どころか更に気分が悪化するものもたまにあったりする。
反対に、それまでのどよ~んとした気持ちが晴れ、あ~観てよかった!
と思える後味のいい映画にも出会ったりする。
そういう時は映画っていいなぁ、と思える瞬間である。

本作品は、ワタシにとって間違いなく後者である。
こないだ観た「ホテル・ニューハンプシャー」と同じく、
ジョン・アーヴィングのベストセラーを映画化したものだが、
映画としては、こちらの方が数倍面白く仕上がっている。

子供だけが欲しくて、今にも死に絶えそうな傷病兵をレイプ(と言えるかは微妙だが)し、
男の子を授かり、シングル・マザーとなったジェニー(グレン・クローズ)。
ガープ(ロビン・ウィリアムズ)と名づけたその男の子は、
存在しない父を慕い、空に憧れる少年に成長する。
やがて本が大好きなヘレン(メアリー・ベス・ハート)と出会い意気投合、
自身も作家を志すようになる。

その生い立ちからして奇想天外、常識はずれの変わり者親子だが、
家族を愛する気持ちだけは誰にも負けなかった。
やがて、ガープに触発されて自分の半生を本にした母ジェニーだが、
その本が爆発的に売れ、当時もてはやされていた、
ウーマン・リブのカリスマにまでなってしまう。

周囲の目や常識に縛られることなく、自分の人生を好きなように歩んでいくジェニーが、
とてつもなく素敵だ。人間は皆いつかは死んでしまう、
だからこそ、自分の人生を生きるのだと言う強い意志がカッコイイ。
だからこそ、人が集まってくるのだ。グレン・クローズはまさにハマリ役。
結構好きな女優さんだが、若かりし頃のナース姿がとても凛々しくて素敵だった。

ガープもまた、自分の人生を歩んでいる。
ヘレンとの間に授かった2人の子供を愛し「FAMILY MAN」として生きる事に
生きがいを感じるという、素直でまっすぐな青年を、ロビン・ウィリアムズが好演していた。

もう一人忘れられないのが、性転換をした、元フットボールプレイヤー、
ロバータを演じたジョン・リスゴー。
彼の女装は、最初は気持ち悪いと思ったが、その人の良さと優しさに、
段々可愛らしく見えてくるから不思議。
ジョン・リスゴーと言えば、演技派だが、どちらかといえば骨太な感じの役者なのに、
ああいう役がハマルと言うのも、一風変わった世界だからだろうか。

とにかく、次々とハプニングが起こると言うストーリーも面白いし、
全体に流れる可笑しくて馬鹿馬鹿しい雰囲気と、
その裏に隠れた死に対する恐怖と哀しみがとても上手く表れていた。

普通ってなんだろう?常識ってなんだろう?普通に生きるのではなく、
「自分の人生を生きる」のが大切なんだ、と言う事をさりげなく教えてくれる。
映画としても上出来。哀しいのに可笑しい。
どうしようもなく愚かなのに素晴らしいんだな、人間って。


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