2003年10月16日
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テーマ: 中国旅行(113)
カテゴリ: カテゴリ未分類
湖面は相変わらず穏やかだった。島の方向から眺めて初めてわかったのだが、【さんずいに耳】海の西側は平野が広がっているのに東側はすぐ山が迫っている。従って農地と言えば狭いトウモロコシ畑くらいで水田は殆どない。たくさんの船が湖に浮かんでいるところから推測すると、ここに住む人々は半農半漁の生活をしているのだろう。

先のとがった麦藁帽子を被り、船の艫(とも)に片膝を立てて長い釣竿を操っている漁師がシルエットのように湖面に浮き上がって見える。その姿はまるでムーミン谷のスナフキンのようで思わずシャッターを切ってしまう。


【さんずいに耳】海のスナフキン


陸に近いところでは若い夫婦が仕掛けてあった網を上げている。瀬戸内海でカニやタコを獲るのと同じ網なので、ひょっとしたらカニ漁をしているのかもしれない。夫が網を引き上げ、妻が中をチェックして網をたたんで積み重ねている。それほどたくさん獲れているようにも見えないが、それでも幸せそうな光景だ。今の日本で、夫婦一緒に同じ仕事が出来る家庭は一体何パーセントあるのだろう?


【さんずいに耳】海の漁師夫婦


今回の旅行中にtetywestはいろいろな田舎の生活を見た。稲の収穫はコンバインではなく、鎌を使って手で刈っている。稲刈りをするときは、家族総出で働いている。ひょっとしたら家族だけではなく親戚も手伝っているのかもしれない。一枚の水田に10人以上の人が働いているのだ。稲を刈る人、運ぶ人、人力の機械で脱穀する人、稲藁は水田に鋤き込むのではなく、乾燥させるために束ねている。まるで戦後間もない頃の日本の農村風景だ。トウモロコシの茎も家畜の餌にするために運んでいる。それも軽トラックではなく、手押し車や馬車だった。

農民はその服装から判断しても、生活は決して豊かではないだろう。しかし、どの顔もどの顔も表情は明るい。若い兄ちゃんが、
「俺はこれを引かせたら村一番なんだ」
と言わんばかりの表情で荷車を引いている。中国の農村には「未来に対する夢」が溢れていた。

そしてもう一つ中国の農村に溢れているものがある。それは人だ。村々の辻では必ず数人がたむろしている。何かの農作業をするときも決して一人ではない。

将来、中国の発展が成功するか否かの鍵は、おそらく農村の過剰人口問題だろう。現在のように過剰に単位面積あたりに労働力を投入していては、労働生産性が上がらない。日本の農産物との価格競争で優位に立っている中国農産物なのだが、その優位性は安い労働力の存在に頼っているに過ぎない。USAの大規模農業とは根本的に違っているのだ。

中国の農業は、かつての日本そのものなのだ。やがて中国が発展して労働賃金が上昇すれば、同時に農産物価格の優位は保てなくなってしまう。そのとき中国の農村は今の日本の農村と同じ問題に直面することになるのだろう。・・・ただ、それはもう一世代先の事なのだが・・・

雲南省の農村に溢れる人を見ているうちに、tetywestにはふと、
「ひょっとしたら日本や中国のような水田のある農村風景を保つためには、たくさんの人手が不可欠なのではないか?」
という疑問が沸いてきた。たとえば水田の水管理にしても、上の田で使った水を下の田が再利用するシステムなのだ。また、水源地からの水路は毎年定期的なメンテナンスが必須なのだが、このような作業は一人では出来ない。日本の農村に人がいなくなり、そのうえ米の減反政策が30年以上続けられた結果、今や水田は虫食い状態になっている。

どんなにハイテク産業が発展して日本の国が豊かになったとしても、tetywestには青々と風に靡く稲田が無くなった風景に「豊かさ」を感じることは出来ない。

ところが、同じ農村を見ても家内は全く別の思考回路だった。
「雲南省の農民と比べたら、我が家の収入が少ないと文句を言うのは間違っているのかもしれないね。あの人たちは日本へ旅行することなんか夢にも考えていないだろうし・・・」
ううっ・・・果たしてこれはtetywestに対する慰めの言葉なのだろうか?






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最終更新日  2003年10月16日 12時02分56秒
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