イタリア


何が最高かって、当時フランスにいたT原課長(現部長)に現地ガイドを頼んだわけだよ。
T原さんは当時フランスに勤務してたんだけど、週に一度はイタリアの工場にも顔を出してたそうで、
T原さんのイタリア出張スケジュールに(無理矢理)合わせさせられ、イタリアに向けて飛び立ったのさ。

T原さんはヴェネチアだけガイドしてくれる約束だったので、私らはミラノで羽を伸ばした後、
なんとも素敵な列車でヴェネチア入り。
列車の中では「アンドレ」というイタリア人に「荷物を持つからホテルを教えて」と言われ、アホな私らは簡単にホテルを教えたのさ。
教えて我に返って「アンドレ、やばいんじゃなかろか・・・」と不安になってきた。

ヴェネチア到着したらアンドレは私と友人の荷物を抱え、ホテルの前で立ち止まり、
「ここだよ」と荷物を置くと、手を振って去っていった。

ただのいい人だったよ・・・アンドレ。グラッチェ、グラッチェ、グラッチェ~!

そこのホテルでT原さんの迎えを待つ。
誰よりも小さい東洋人・T原さんはホテルに登場すると、サングラスを小粋にはずし、
「ようこそ!イタリアへ!」

ぶはっ。似合わねー。おもしれー。この人、噂には聞いてたけど、マジで自分に酔いしれてるわ。

そんなT原さんは自称「ヴェネチアに100回来た男」なのだが、簡単に道に迷う。
一人でワイン飲んだのに、きっちりワイン代までワリカンになってる。
ヴェネチア名物のゴンドラに乗りたいって言ったら「高いからダメだよ」と言う。
バカの一つ覚えみたいに「ウイ」を連呼する。(フランスかぶれ)


そして何故か同じホテルに予約入れてる~!!


散々楽しい目に遭わせてくれたT原さんに感謝し別れ、次なる町フィレンツェに向かうが、
結局その後の話題の9割以上はT原さんが占めてしまった。

T原さんに二度と会うことは無いと思い、この貴重な旅を後世に残すべく書き記し、
九州のみならず川崎の社員にまで配布。

その数ヵ月後、信じられない人事異動で、T原さんは私の上司になったのだ・・・。
私の上司になったことより、この人が部長になったことに驚いた。うちの会社って甘いな~と思った。

恐らく二度と行かないであろうイタリアではあるが、T原さんがいないヴェネチアなんて行く楽しみが無いと言っても過言ではない。

「ウイ。あ~またウイって言っちゃったよ~。やべーなー。ここイタリアだったな。知ってる?ウイってフランス語で「イエス」なんだよ」(by T原)

友人はそんな彼をこう言った。
「やべーなーってさ・・・誰もあんたをフランス人と間違えんけん安心せんねてね」

ジャッキーチェンに似てるとのことで、最近では夜の街で「ジャッキー」と呼ばれているそうだ。
誰よりも欧米人になりたかった男・T原さん。
香港人になれてよかったね。


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