■この「Let It Bleed」の回のゲストはライダーズの鈴木慶一君だったのでよく覚えている。近田春夫とピーター・バラカンが準レギュラーで彼らがそれぞれの思い入れの強い曲を聞きながら、その色々な側面を語っていったわけだ。その中で毎回ピーターバラカンが英詞を解説してくれるコーナーがあったのだが、この回でどの曲がとりあげられたかは覚えていない。
■おそらく、テキストとしてふさわしいのはM9の「You Can't Always Get What You Want」ではないだろうか。「無情の世界」と訳されたこの邦題がふさわしいかどうかはともかく、不良趣味とでもいう言い方がふさわしいこのグループの1曲として、これほどマッチするものはないのではないだろうか。まだ10代20代だった頃、オトナのどんな美辞麗句よりも、長髪で、Gパンで、悪しがむんむんしてるこの人たちが歌う、情けなどにすがる事なかれ、という刹那的な表現はとても魅力に満ちていたんだ。
■先の番組で誰かがピーター・バラカンに「Let It Bleed」ってどういう意味か、って質問していたのだが、そこでは腑に落ちる解説は聞けなかった記憶がある。Beatles のあれとは一字違いのこのタイトルであるが、一方が「なすがまま」と解釈されるのであれば、「血が出るまま」とでも訳せばいいのだろうか。止血なし、そのまま流しとけよ、かつてコンサートで自分たちの目の前で観客が刺されるのを目にした彼らが吐く言葉とすれば、ちょっとどうかと思うくらい物騒なタイトルには思えないか。
■先日取りあげた雑誌Beat Sound でもこの「Let It Bleed」の音の良さに言及していて、このアルバムをストーンズ、そしてロック史上最も音のよい録音のひとつと評している。伝説のエンジニア、グリン・ジョンズの仕事だ。特に3年前に出たSACDでこの音源を聞くと、まるでそこに彼らがいるようにひとつひとつの音が届いてくる。ちなみにストーンズの音質のよいレコードベスト3は順に「Let It Bleed」「Aftermass」「Beggar's Banquet」だそうだ。