○・。Mooncalfの絵本。・○

○・。Mooncalfの絵本。・○

21-25



21■■特攻隊■■

雨の日
雨は特攻隊になる

落下して
ぶつかって
飛び跳ねて
名もない水へ還る

その度に私はせつなくなる
そんな小さな雨でさえ
自分を投げ出して戦っている
なのに私は戦わない
引き裂かれることに恐れをなして

立派に形をとどめていることが
こんなにせつなくなる
恥ずかしくなる
戦わない者の烙印を押されたみたいで

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22■■Melodious People■■

音って不思議
ひとつの音符をならしても
別になんとも思わないのに
そのちっぽけな小人が繋がって
よせてはかえす
波のような調べになると
揺りかごの中の
赤ん坊のような
穏やかな気持ちになってしまう

人間も、おなじこと。
ひとりはちっぽけな小人だけれど
そのちっぽけな存在が繋がれば
きっと、何かができるはず
だから
ねえ

手を、つなごうよ。

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23■■たったの一言が■■

いつか、私は
口が開かなくなって
話せなくなってしまうのかな
恨みの言葉を言わない分
感謝の言葉すら言えない
たった一言が言えないのはきっとつらい
言うタイミングを逃して
結局言えなくて
そんな苦しい思いを
自由に話せる今でさえ
何度してきたことだろう
だから後悔しないよう
思ったことは全て言ってしまいたい
そんな私でありたい
心を強く持ちたい

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24■■I am a Prayer■■

もしも あの時
貴方が私を裏切っていなかったら
声を押し殺して泣くことがなかったら
私も貴方を裏切らなかっただろうか
そんなことわからない
誰にもわからない
心の歯車が逆回転し始める時なんて
だから私は願ってた
どうか もう一度 あの時へ連れてって
だけど私はもう願わない
だけど私は祈り続ける
どうか もう一度 あの時へ連れてって
そう願わぬ自分であれるように

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25■■境界線■■

あの頃
退屈な授業をさぼって
屋上で 二人で
何か話すわけでもなく
ただぼおっとしてた

その時ふいに現れた飛行機を見て
私は彼女にたずねた
「宇宙と地球の境界線ってどこなんだろうね」
彼女はこんくらいじゃないって言いながら
まるでパズルのピースのように
手で簡単に
小さく小さく空を区切った
「世界ってそんなにすごいもんでもないでしょ」

今じゃあの頃の屋上はないけれど
私は覚えてる
あなたが区切った、世界の境界線を
その小さな空間がとても蒼かったことを
ねえ あなたが言ったように
この世界はそんなにすごいもんじゃないけれど
まだ捨てたもんでもないよ
だって ほら
空はいまだ あんなに蒼い

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