丑寅おじさんの開業奮闘記
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今日の社労士自主研究会のテーマは「日立メディコ事件」です。 有期契約の更新拒否の事件です。 というと、東芝柳町工場事件を思い浮かべる方が多いでしょうが、 それと対比して論じられる有名な事件です。 この最高裁判決の中で、 「5回にわたる契約の更新によって、 本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、 あるいはX(原告=労働者)とY(被告=会社)との間に 期間の定めのない労働契約が存在する場合と 実質的に異ならない関係が生じたということもできない」 「所論引用の判例(東芝柳町工場事件)は、事案を異にし、 本件に適切でない」 このような法理で労働者側の上告を棄却しました。 東芝柳町工場事件でも、1審では「当該有期契約は更新により 無期契約に『転移』したと」の判示がありましたが、 最高裁は「あたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない 状態で存在していた」として当該契約の有期から無期への転化 および解雇法理の適用を否定しながらも 雇止めの意思表示は「実質において解雇の意思表示」であるから 「解雇における法理を類推すべきである」としました。 つまり、どちらの最高裁判もは、有期契約が更新を繰り返したからといって 無期契約に転化するということを否定しています。 ただし、契約期間を経過しても労働を継続し、使用者がこれに異議を述べないと契約が同一条件で更新されたと推定され(民629条1項)、学説では「期間の定めのないものに転化する」という見解があります(我妻説)。この学説に沿う判例が、東京高裁、札幌高裁、東京地裁でだされたことはあります。しかし、黙示の更新でない限りは、このようなことはありません。
2007.05.09
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