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Tyees HiStory高校時代
私が高校生の頃~ラヴェルとショパンとの出会い~(その1)
***********私が高校生の頃~ラヴェルとショパンとの出会い~(その1)***********
私は、3年間4Kmを歩いて往復した中学を無事に卒業し、都立の某高校にはいった。
今のJRでいえば、少々都心から西に位置する某T駅から歩いて10分くらいの距離にある高校であった。
その当時は、学校群制度とやらで、私は、某T駅あるいはより一駅新宿よりのK駅最寄りの高校のどちらかに行くはずであったのだが、振り分けにより、T駅最寄りの高校となったのだった。同じ中学からは、2、3人ずつということで、合計数名が二つの高校に寂しくも別れて入学した形である。
通学時間は、1時間30分近くかかったので、きつかったが、次第に、新しい友人もでき、結構面白かった。
クラブは、相変わらず練習のきびしい軟式テニス部にはいった。
--Ravelとの出会い 左手の為のコンチェルト、夜のガスパール、水の戯れ・・・--
さて、高校生になってしばらくたった夏休みのある日のこと、私は、自宅近くの歯医者に通っていた。
そこに、少々格好いいすらっとした同年代らしき男子がやはり通っていて、ときどき、診察待合室で一緒になることがあった。どこかで、見たようなやつだなと思っていた。
何回目かに、どちらからともなく、だれだっけお前は??と話をし始めた。
すると、クラスは違ったが、同じ小学校に通っていたO君だと判明した。
歯医者帰り等に、時々お互いの家をいききするようになった。
彼は音楽系の高校に通っているとのことだった。私がピアノ音楽好きなことを知ると、色々な曲をレコードで聴かせてくれた。
また、彼はうちにきたとき、グラナダの夕べ(ドビュッシー版画2曲目)を、アップライトで演奏してくれたが、非常に立体感・構築感のある演奏であった。大柄な彼が、フォルテをならすと、アップライトピアノが大きく揺れるのが分かった。彼のフォルテとピアノの幅は大変広かったのが印象的である。
彼の聞かせてくれたレコードの中で一際心に残っているのが、ラヴェルの左手の為のピアノコンチェルトだった。
初めてその曲を聴いた時、私は大変に鮮烈なショックを受けた。
左手だけで弾いているなんて信じられない。左手しか持たない人の為に書かれたという、その曲は、しかし、極めて美しい、出だしをもっていた。
そして、中間にでてくる、さざ波のような、アルペッジョの中にメロディーが続いていく部分。極めて美しい・・・。
これがラヴェルの曲か・・・・と。
ボレロくらいしか知らなかった私にとって、ラヴェルの印象は大きく変化した。
私は、左手のコンチェルトは本当に大変に気に入ってしまって、これをきっかけに、ラヴェルの曲を幅広く、聴くようになった。私は、ショパンよりもドビュッシーよりも先にラヴェルファンになってしまったのだった。
そして、ピアノ曲はといえば、水の戯れとか、クープランの墓、そして、なんといっても、夜のガスパールを知ることになったのである。また、ピアノ曲以外では、ダフニスとクロエ等からも感動を受け好きになっていった。
海外ものの楽譜で初めて買ったのは、夜のガスパールで、今も手元にある。デュラン版である。
その当時、海外ものの楽譜は特に高く、小遣いは少なかったので、沢山買いたかったのだが、その中で、第一に、選んだのが、夜のガスパールであったというのは、少々変わっていたのかもしれない。
(私は受験勉強対策で、某会の通信教育をやっていたが、そのときのハンドルネームのようなものがScarboであった。夜のガスパール内の一曲、Scarboの名前が会の優秀者リストに乗ると、私はこれで大学いけるかもしれんなどと自己満足していたのであった。)
しかし、夜のガスパールの楽譜は、ところどころ、弾けそうなところはあるものの、超難しく、譜面を見るだけの生活であった。
次に買った洋ものの楽譜が、やはりラヴェルの水の戯れや鏡のはいった楽譜。ソナチネもはいっている。
これは、結構安い版で、Durand版ではなかった。正規に売っていたので買ったわけであるが、友人に聞くと海賊版じゃないの?とからかわれたものだった。今も手元にあり、他の楽譜によりチェックをし、一部訂正を加えつつも愛用し続けている。(Edwin F.Kalmus N.Y.版)
同時に、他の曲にも興味を持ちはじめた。
ようやく、ショパンとかドビュッシーとかにである。
(バッハとか、モーツァルト、ベートーベンが含まれていないことは特筆????に値する!!!!!)
(続く)
--
かくして、Tyeesの高校時代のクラシックピアノ音楽への傾倒は始まったのであったが、なんといっても、あの歯医者での偶然のO君との出会いがなかったら、私の音楽の趣味は今頃どのようになっていたのであろうか?!
とにかく、人生の大部分は偶然により支配されているのではないかと思われる今日この頃である。
***********私が高校生の頃~ラヴェルとショパンとの出会い~(続く)
***********私が高校生の頃~ラヴェルとショパンとの出会い~(その2)
ある歯医者での偶然のO君との出会いから、Tyeesのラヴェル好きが始まったのだが、その後、順調に色々なクラシックピアノ音楽への傾倒を深めていくことになる。
今日は、そんな高校時代のTyees小トピック?!を徒然なるままに書いてみたい・・・。
--何もクラシック曲を知らなかった無知な私--
高校当時の自身の笑い話としては、チャイコフスキーのピアノコンチェルトを知らなかった等の恥ずかしい話が結構ある。一部紹介すると・・・
高校一年のとある日の夜、自宅で観ていた何かのTVアニメの中で、チャイコピアコンの出だし(4ページ分くらいであろうか)の部分がバックグランド音楽として使われていたのを聞いて大変印象に残ったが曲名がわからなかったので、次の日、高校に行くなり、音楽好きなクラスの友達に、「出だしが和音で、旋律がこんなかんじで・・・」これはなんていう協奏曲かとそれは熱心に訊いたことがあった。
友達は、「なーんだ、チャイコフスキーじゃないか」と、私を馬鹿にしたように答えたが、私は曲名を知ることができたので、大喜びだった。聞くは一時の恥・・・。
結局、私は、同コンチェルトについて、高校2年?の音楽の授業で、冒頭部分と、ほぼピアノ主で美しいメロディアスな中間部分を一部抜粋して、なぜか同クラスのトランペッター(KIさん)と、披露することになった。
また、その時にショパンの幻想即興曲をいっしょにクラスメイトに披露したが、最後の終わる部分の和音を間違って覚えていたようだった。終わってから、流石に音楽の先生がやってきて、あそこの音は、間違って覚えていない??といわれ大恥をかいたことがあった。
これだから、自己流・自己満演奏は怖い!!
この時から、私は、音楽をちゃんと聴くこと、楽譜はちゃんと見ること???に気を遣うようになったのだった。弾くは一時の恥・・・。(泣;
また、バッハのインヴェンションとシンフォニアも知らなかった。
友人が、「この前の高校二年X組の合唱祭の曲を作ったM君だけれども、インベンションとシンフォニア全部弾けるらしいよ。だから、あんなにすごい合唱曲がつくれるんだよ。」という。
私は、「フーン、そうなんだ」くらいで、興味が全くなかったが、普通の都立高校のレベルとしては、なかなかのものであったようだ。
今考えると、本当に恥ずかしい。
(この時に、興味を覚え、やっていれば、私のバッハ音痴は少しでも直っていたかもしれないのに・・・・。後悔先に立たず・・・)
高校では、各クラス対抗で、合唱祭というのをやるのだが、クラスによっては、上記のM君のような逸材がいると、合唱曲を新作曲してから皆で練習に取り組むのであった。これも懐かしい話である。
また、私は、厳しいテニス部にはいっていたが、その中に、エレクトーンが素晴らしいもうひとりのM君がいた。彼はなんでもテーマさえはっきりすれば、それをもとに 1時間以上続けてアドリブができるということだった。
学園祭で、ロック系あるいはフュージョン系だったかのバンド演奏があり、その中で、M君が、キーポードバッキングとアドリブをやり大変素晴らしかったというので話題になり、後から知ったのだった。
M君は、小さい時に、エレクトーンの全国大会にでたとかなんとかで、とにかく、ポピュラーの曲を聴けば、そのまま、コード進行などがわかってしまい、そのままアドリブをすることもできるという。・・・テニス部では、ともにあまりめだたない仲間だったが、彼は、独自の専門分野をもっていたのだった。
カーペンターズのイエスタディワンスモアがはやった時には、曲の一部を彼には教えてもらったものだ。
要は、休み時間に音楽室のピアノで彼が弾いてくれたものを、私が採譜いや、譜面書きしたというのが本当のところだった。彼には譜面は不要だったのだ。
また、彼は小さい頃はクラシックもきちんと勉強していたようだったが、高校当時は、あまりやっていなかったようだ。
--Chopin Etude Op10-1 そしてChopin Etudeの世界との出会い
ある日、音楽室にいくと、たからかに、しっかりとした音量で、ピアノのアルペジオ、ハ長調だが素晴らしい曲を弾いている女子がいた。私は、何の曲かわからなかったので、音楽好きな友人にまたたずねた。あれは何?
ショパンエチュードの一番じゃないの??
わたしは、当時ショパンエチュードの全音の楽譜はもっていたが、名前のついている曲くらいしか知らなかったので、新鮮だった。ラジオで全曲録音せねば。・・・・
(当時は、あまりお小遣いがなかったので、レコードとかはあまりかえなかったのですべてラジオからカセット録音であった。FMのエアチェックはかかさずしていた。その後、学生時代以後、ショパンエチュードはCDがでる度に買い集めるようになった。一番のお気に入りは今でもポリー二盤。)
また、手元の譜面に沿って、Op10-1を少々さらいはじめたわけであるが、すぐに投げ出した。
10度スパンのアルペジオは、やわらかでしなやかな手首の動きを要求するなど、わからなかったのだが、とにかく、私の知るアルペジオ奏法とは全く異なるものだった。
今でも、ショパンエチュードOp10-1は、私にとって超難曲の部類であり、うまく弾けない。これが弾けるアマチュアは尊敬することにしている。
また、私は、これをきっかけに、3から4か月かけて、ショパンのエチュードの有名なもの、あるいはどうにかなりそうなものから、一曲ずつ結構真剣に練習をはじめたのであった。
また、その他のショパンの曲も少しずつ、有名ものからつま弾くようになった。とりわけバラード一番とスケルツォ二番には憧れ、結構練習したものだった。・・・
--
その他高校時代のピアノ系の話といえば、以下の話くらいでしょうか。
・ブラームスのふたつのラプソディとか、ショパンのノクターンとか、水の戯れを弾く人もいた。いずれも男子。
水の戯れを弾ける人は、これまた、テニス部所属であったので、私もおおいに刺激を受け、無理を承知で、発奮して受験勉強の合間に必至に練習することになった。
・女子は、弾ける人は沢山いたのだろうが、会話をしたこともないので、知らなかった。
知っているのは、せいぜい、さきほどのショパンエチュードを弾いていた人くらでしょうか。
・ふたりのM君は、バッハの知らない曲とか、ベートーベンの有名ソナタも弾けたようでしたが、私は、あまり聞いたことがないので、確かではない。
--
ふたりほど、ギターが得意な人もいたな。
・レパートリーはクラシック各種。結構難しい曲をやっていた。アルハンブラとかアストリアス?だったかが、上手であった。フラメンコ的な曲も弾けたようだった。
・軽音楽やロック、フュージョン系については、沢山ギターのできる奴はいたが、あまり、興味が無かったのでよく覚えてはいない。
--
私は何も知らないクラシック音楽の世界だったが、狭い範囲で知っている好きな曲のみ、私は練習できたのだった。
その当時は何も知らないことが幸せだった。(バッハもモーツァルトもベートーベンも練習せずにラヴェルとショパンを練習したのであるから・・・・。今考えれば向こう見ずというか、常識外れであったとしかいいようがない。)
そして、何も知らないが故に、新しい曲を知るとどんどん聞きだめしていった。
深夜の受験勉強中は、いつもFMラジオなどで、色々なクラシックの曲を聴いていた。
好きな曲は必ずカセットテープ録音。自分のテープライブラリーはどんどん増え続け、大学に入る頃には、何百巻にもなっていた。
変わったところとしては、「ジェットストリーム」という放送で、色々とクラシック以外の曲も覚えたことである。
また、キースジャレットの「ケルンコンサート」という曲の出だしが使われている放送があり、その曲の冒頭のコピーにチャレンジしたものである。(今は楽譜も発売されている) 最初は曲名もわからなかったが、本当に好きな曲であった。
--高校卒業前にひとりで音楽室で弾いた別れの曲--
さて、私は、長い受験勉強生活が終わり、どうにか大学合格が決まり、高校を去るにあたって、誰もいない、T高校の一番てっぺんにあった音楽室にはいり、グランドピアノでひとり別れの曲を弾いた。
誰も知らない事であるが、本当の話である。
今までで一番うまく弾けた別れの曲であった(と思う)。
--友人達のその後
さて、歯医者でであった音高のO君は、その後、上野の有名な大学(作曲科?)にはいったらしかった。
その後、上野の学園祭で再会し、フルーティストの美人のガールフレンド?も紹介してもらった。
学園祭では、彼はラフマの二台ピアノの組曲だったと思うが、ピアノ科の人と競演していた。
既に、プロの域であると感じた。フルーティストの方は、モーツァルトのフルートとハープの為の協奏曲を演奏されていた。これまた、既に私にとってはプロの演奏であった。・・・・
--
チャイコのピアコンの競演者?であるトランベッターKIさんは某W大卒業後、教授業等をして大活躍しているようである。・・・
ふたりのM君は、それぞれ総合大学にはいって音楽以外の学問を続けたと記憶している。その後、ほとんど会ったことはない。
テニス部の面々もそれぞれ有名?大学にいったが、今は、数年に一回のOBOG会で、会うくらいである。
皆、それなりに部長さんとか偉くなっていたりする。年をとったものだ。教授業をしている人も結構いたりする。・・・
--
--
私にとっての高校生活は、何か多感かつ不安定・不規則な生活ではあったが、何も知らなかった私は、本当に色々な音楽、特にピアノ曲を聴いて覚えたし、ラヴェルの水の戯れとショパンのエチュード等有名曲何曲かが弾ける(弾けるというより暗譜というのが近いでしょうか)ようになったことは、大変有意義であった。
ピアノ音楽人生のかなり偏りはあるものの骨格が形成された高校時代、今思えば、何か気恥ずかしいような気もするが、本当に懐かしい、想い出に満ちた良き時代であった。
***********私が高校生の頃~ラヴェルとショパンとの出会い~(了)
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