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October 28, 2005

「血の痕跡」 by スティーヴン・グリーンリーフ（黒原敏行訳）

カテゴリ：読書

＜ あらすじ ＞

「私立探偵ジョン･タナーの友人、救急車の運転手をしているトム・クランドールが、歓楽街で死体となって発見された。同じバーでたまに会って話すだけではあったが、タナーの大切な友人だった。警察では自殺の可能性が高いと見ているらしい。確かに、トムは死ぬ前にタナーに悩みを打ち明けていた。最愛の妻でトーチング歌手のクラリッサが富豪のリチャード・サンズに奪われようとしていたのである。だが、トムは死ぬ前にタナーへ謎のメッセージを留守電に残している。『おれはいま、自分の弟のものも含めた、血の痕跡をたどっているんだ。』果たして、このメッセージの意味するものは何なのか？タナーは、トムの死の謎を解くべく調査を開始する。トムの死に隠された陰謀をタナーは突き止めることができるのか？！」

このストーリーでは、血液事業が抱える巨大なマーケットと、それにまつわる利権が大きな影を落としている。バーでのタナーとトムは、たいてい政治の話をしてるのだけれど、「 ....最近の話題でいえば、カリフォルニアの五年越しの旱魃に対する水利行政当局の無策や、街のホームレスのあいだに広がりつつあるエイズ感染のこと、.... 」と書かれているように、HIV感染が大きな問題となった1991年のカリフォルニアが舞台となっている。キーワードは、「汚染されていない血液」。血液銀行と、赤十字の献血と、血漿センターの違いって、わかります？主に血液供給システムの違いなのだけれど、読めば読むほど血液事業の問題点が明らかになってくる。

さて、トムには精神を病んでいる弟のニッキーがいる。どうやら、ニッキーの身に起こった「何か」を調べていたトムが、知ってはいけないことを知ったがために殺されたらしいことが判明する。ニッキーは、物語の終盤まで読者の前には姿を見せない。そして、姿を一瞬だけ見せるのだけど、その見せ方というか場面が秀逸！ニッキーとガールフレンドのジャンには、（たぶん）つらい運命が待っているのだけれど、それに負けずにがんばってほしい！！と思う終わり方だった。

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