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February 18, 2006
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カテゴリ: 読書




「ロンドン警視庁のダルグリッシュ警視は、サフォーク州モンクスミア岬にある叔母の家での休暇を楽しんでいた。ここは、作家や演劇評論家たちが住んでいる、風光明媚な別荘地。しかし、彼が到着した夜に、数日前にロンドンへ取材に行って消息を絶っていた推理作家モーリス・シートンが、両手首を切断された無残な死体となって発見された知らせが届く。小船に乗って浜に流れ着いた死体の状況は、彼の新作の冒頭のシーンと全く同じであった。解剖の結果、死因は心臓麻痺による自然死で、手首は死後に切断されたものだと判明する。では、何故、誰が何のために死者の両手首を切断したのだろうか?いやおうなく、事件に巻き込まれたダルグリッシュが、この難事件の解明に着手する!!」


今回のダルグリッシュの立場は微妙。もちろん、部外者ということもあるが、叔母のジェインも容疑者の一人としてみなされているのである。どうやら、手首切断に使われたと思われる鉈は、彼女の持ち物であった可能性が高いらしい。また、捜査の指揮を執っている郡警察のレックス警部とは、馬が合いそうにない。なかなか、大変な事件に巻き込まれたものである。

さて、舞台となっているモンクスミア岬には、いわゆる物書き連中が多く住んでおり、このメンバーが一癖も二癖もある者ばかりなのである。被害者の弟ディグビーも、性格に難がありそうな人物だ。願わくは、こんな人たちとはご近所づきあいをしたくないって感じ。容疑者の総数は9人。故に、P・D・ジェイムズ流のちょっと意地の悪い人物描写が楽しめるはずなのだが、一部キャラが被る人物(演劇評論家のオリヴァー&雑誌編集者のジャスティン)がいたりするのが、イマイチ。だって、最初のうちは読んでいる途中で、「この人は.....。あっ、演劇評論家の方ね。」とか、「あぁ~、雑誌編集者の方か!」なんて、登場人物のページを何回も確認しましたから......。

ストーリーの途中で、モーリスの直接の死因は心臓麻痺による自然死だったということが判明するのだが、これにはちょっとしたトリックが使われている。そのトリックを読者が推理するのは、ちょっと難しいかな。そして、事件のクライマックスに、嵐の中での手に汗を握るスペクタクル・シーンがあります。ここが最大の見せ場でしょうか。ダルグリッシュ危うし!映像でこのシーンを見てみたい気がします。

この作品も前作と同様に、「人間の愚かしさ」・「邪悪さ」が描かれています。物語の最後の方で、犯人の動機等が明らかになるのだが、きっかけは些細なこと。しかし、積もりに積もった恨みがあればこそ、犯人に殺害を決意させてしまったのだろう。ただ、この告白シーン、ちょっと冗長的じゃないかな。確かに、歪んでしまった犯人像がよく書けているのだが、長すぎて途中で飽きてしまうっていうか、まだ続くの?なんて感じてしまった。

ラスト・シーンは、ちょっとやるせない感じの終わりになっています。でも、こういう屈折した人たちが出てくるストーリーだからこそ、すっきりとした終わり方であってほしいと思うのは、私だけかな。

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Last updated  February 28, 2006 01:01:54 PM
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