語りと筆しごと~書家香玉のうずまき帖

語りと筆しごと~書家香玉のうずまき帖

2005年05月18日
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子供の頃、玄関先から「小包でーす」という声が
聞こえると、我先にと飛び出した。
100%自分宛ではないとは知りつつ
それでも、何か予想もつかない楽しみが
詰まっているような気がして
かすかな期待と共に茶色の包みを受け取りにいった。

たいていが、父の購読していた書道の専門誌であったり
母が注文した化粧品であったり「なーんだ」
ということが多いのだが、ごくまれに
知人から贈られてきた珍しいお菓子やフルーツだったり
してわくわくした。
たった一度だけだったが、ある日
私あてに東京から大きな茶封筒が届いたことがある。
送り主は小学館。中をあけると、オリジナルの
ドラえもん手帳が入っていた。
毎月、購読していた学習雑誌の懸賞に当たったのである。
とはいえ、それはお目当てのおもちゃではなく
抽選に漏れた人を再抽選しての残念賞で、たしか千名様に
とかそういう賞品だったのだが、それでも
部屋中を跳ね回って喜んだ。
東京から不意に送られてきた自分宛の包みというだけで
なんだかロマンを感じ、ひとり満ち足りた気分で
ますます小包への期待度が高まっていった。

大人になった今は、ネットショッピングなども普及し
自分や家族が必要なものを自ら注文する機会が増えたので
だいたい我が家にいつどんなものが届くようになっているかの
予想もつく。だから、宅配の人が来ても
あんまりわくわくすることはなくなった。

でも昨日、不意にやってきた郵便配達員が
昔ながらの茶色の紙にくるまれた小さな箱を持って現れた。
手元に渡されるまで、誰が何を送ってくれたのか
まったく予想がつかない。急いで送り状を見ると
見慣れた丸い文字。鞍手という山あいの里に住む
とっても親しみ深いUさんからだった。
Uさんとは、縁あってもう7年くらい親しくして頂いている。
うちから電車で小一時間の町に小さな古本屋さんを営んで
いらっしゃる方。あたたかくてユーモアがあって
それでいて鋭い視点でものごとの本質を見抜く力を備え
お話しているととても勉強になる。
普段はニコニコして、いつも私を笑わせようと策を練って
下さるのだ。包みの送り状にある内容の欄は「びん詰め」とだけ
書かれていた。Uさんらしい。
さて何のびん詰めでしょう?と言わんばかりだ。
私も誰かに小包で贈り物をする時、いつも内容の欄で
手を止めてしまう。開ける前から中身がわかってしまっては
なんだかつまらない。包みを開ける時の楽しみを奪ってしまう
ような気がして。勝手な思いこみかもしれないけれど
できるだけ、はっきりとわからないような書き方をしてしまう。
うふふ。多分Uさんもそう思われたに違いないと微笑む。

開けてびっくり。中身は、Uさん手作りのさくらんぼジャムだった。
Uさんの自宅のお庭には1本だけ立派な枝ぶりの桜の木がある。
古くからの思い出深い桜であり、私もその歴史を少しだけ
教えて頂いたことがある。あの桜からとれたさくらんぼ!
感激だった。しかもビンにはUさん手書きのラベルまで
貼ってあった。なんとかわいらしい嬉しい贈り物♪
こんな粋なプレゼントをさらっと思いつくUさんは
現在48歳、ふたりの大学生のお父さん。
その著書は何度読んでも面白くて心に残る名作です。
jam

jamu

Uさんの著書 「蕨の家」海鳥社





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最終更新日  2020年10月22日 12時28分49秒
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