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「探偵はBARにいる」とい映画が、2011年9月に公開され、本書の存在を知った。しかし、私は見ていない。ソープ・ランドがまだ「トルコ」といわれている頃の話だ。
主人公の俺が、バー『ケラー』でいつものように飲んでいると、「先輩」と声をかけられた。原田と名乗る北大の学生だった。彼女の諏訪麗子が4日間も部屋に帰ってこないので、探して
ほしいと言った。大学の研究室で、俺が探偵をやっているという噂を聞きつけてやってきたという。
彼女の部屋を調べて、最近起こった殺人事件『ジョイ・シャトー事件』とかかわっていることが分かってきた。ジョイ・シャトーというラブホテルで男が殺害されたのだ。
また、殺害された工藤は、デート・クラブを経営しており、そこのデート嬢の一人が麗子だということが分かった。
本書『探偵はバーにいる』の面白さのひとつは、東直己さんも主人公の俺も、アル中ということだ。朝から、お茶代わりに酒を飲んでいる。一日中アルコールが体内にあるということだ。それでいて、文章を読んでいても、酔っぱらっているという表現がない。
また、俺は、ススキノに住んでいる。28歳という年齢にもかかわらず、とんでもなく顔が広い。ススキノは、いわずと知れた札幌の大歓楽街だ。東京でいえば歌舞伎町にあたる。風俗店の呼びこみから、風俗嬢、ヤクザ、はてはマスコミ関係まで知り合いがいる。
だから、そういう人脈を駆使して捜索ができるのだ。実際、ヤクザと情報を交換したり、北大の教授がチンピラに脅されて、それを救ってやるというエピソードも挿入されている。
ストーリーは、込み入っている。ラブホテルで殺人事件が起きる。最初、男が入って、後からコールガールが呼ばれた。少しすると、別の男が入って行った。しばらくして女が飛び出して来て、男も出てきた。殺された男が、最初に入った客だと警察は考えた。しかし、そうではなかったことを俺は見抜いた。
初版が、1992年と古いが、古さを感じさせない面白さがある。
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