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この作品、氏の最新作?だと思われるのだけれど、評判はかなり悪い。
何がそんなに悪いのか??
そこが興味の対象だった。
アフターダークはある一夜の物語だ。
話は夜中に始まって、朝に終わる。
各章には時計のイラストが入っていて、時刻がわかる。
ラブホテルで起こったちょっとした事件と
それに関わる人々の流れが描かれていく。
わかりやすく、ストーリーは追いやすい。
しかし読見続けていくと、なにか「あれ?」という違和感を感じる。
期待されたものが与えられていないのを感じるのだ。
この作品はいわゆる「村上ワールド」を期待して、お金を払った読者をほぼ完璧に裏切っている。
つまり「村上ワールド」と全然違う世界が構成されているのだ。
まず。
語り口が独特だ。
小説というよりも、台本のト書きを思わせる部分が多い。
「部屋の中は暗い。
しかし私たちの目はじょじょにその暗さになれていく・・・・」のように。
まるでカメラか、テレビを通して覗いているような表現が多用されている。
そして場面設定がいつもと全然ちがう。
いつも登場するピンボールやらビーチボーイズやら、スバルレオーネのような
ノスタルジックなものはほとんどない。
もっと新しいのだ。
携帯電話やら、パソコンやら、防犯カメラ、スカイラーク等、
我々が日常使っているものが、次々登場してしまう。
このため、読者はノスタルジックな「村上ワールド」にトリップすることができないのだ。
長年同じスタイルを保ってきた村上氏がなぜ、こういう作品を発表したのか?
これは新しい挑戦なのか?
それとも一時的なきまぐれなのか??
芸術家は新しいものに挑戦することが常に必要だ。
そういう意味では、こういう作品も歓迎したい。
でも、厳しく言うと、あまり出来のよさは感じない。
せっかくのカメラ目線でも、生き生きとした映像は伝わってこない。
なんとなくぼやけているんだ。
もともと村上春樹氏はそれほど、文章に鋭いものがない。
どちらかというと構成でヒットしている作家だと思う。
同じ村上でも、村上龍氏がこの場面を描けば、はるかに鮮明なイメージが浮かんできただろう。
新しい春樹ワールドにはもう少し時間がかかるのかな?
そんなふうに感じた作品だった。